日産GT-R NISMO N Attack Package装着車(4WD/6AT)/エルグランドNISMOパフォーマンスパッケージ(FF/CVT)/ノートNISMO S ニスモパーツ装着車(FF/5MT)
ぶっ飛び のち しっとり 2015.07.28 試乗記 NISMO/無限/STI/TRDという自動車メーカー直系の4ブランドが、箱根で合同試乗会を開催。モータースポーツ活動で培ってきた各社の経験は、市販モデルの性能向上にどう生かされているのか? 今回はNISMOの3車種をリポートする。いきなりのボスキャラ登場
実に9年ぶりの開催となる「ワークスチューニンググループ合同試乗会」、いわゆる“ワークス試乗会”に参加した。さて久々に乗るメーカー公認のチューンドカーは、どれほどのクオリティーを実現しているのか? 箱根ターンパイクという絶好の舞台で、これをトコトン乗り倒してみよう!
……なんて大口をたたいたのはいいが、最初に相手をしたのは今回の試乗会でもボスキャラ中のボスキャラである「GT-R NISMO」。それもニュルブルクリンクで7分8秒679というタイムをたたき出したオプション「NISMO N Attack Package A kit」を丸ごと装着した一台だった。ちなみにその最高出力は600ps/6800rpm、最大トルクは66.5kgm/3600-5600rpm。足元には減衰力を4wayで調整できるオーリンズ製のダンパーが装着されており、調整幅はほぼ無限大。箱根に合わせたセッティングの模索は時間もコストもかかりすぎるという理由から、今回は“ニュルを走ったそのままの仕様”でNISMOがこれを持ち込んでいた。
実際に試乗してみると、もう「あきれた」というほかに言葉はなかった。普通に走っても感じるサスペンションの、初期ダンピングのスムーズさに「こうじゃないとニュルは走れないんだろうな……」などと感心はするものの、その乗り心地は常識的に考えればとってもハード。正確に言うと突き上げが鋭いのではなく、タイヤのグリップの立ち上がる速度が極めて速いから、軽くハンドルを切るだけでも体が持っていかれるのだ。
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“ゾーン”に入ると病みつきに
エンジン本体はノーマルで、これにカーボン製のインタークーラー用パイピングとチタンマフラーを装着。専用のECM(エンジン・コントロール・モジュール)と、これに協調するTCM(トランスミッション・コントロール・モジュール)をNISMO流にリセッティングしただけだというのだが、どこから踏んでもパワーが漲(みなぎ)り、いつまでたっても加速が途切れない。
このGT-R、意地悪く言うとフツーに走っていては不快なだけのクルマである。その機敏さとパワーにひたすら圧倒されて、中途半端に走っているとリズムが作れない。しかし右足に力を込めていくと、ある臨界点を超えた速度域から全てのテンポが合ってくる。強靱(きょうじん)な足腰に剛性感の高いブレーキで荷重をぶつけ(これはなんとノーマルである!)、ステアリングを切り込んでいったときに初めて、四肢の全てが極めて穏やかに、それこそ“ニュル”っと動きだす。ここにはフェンダーやバンパー、ディフューザーに施された空力処理(NISMOの空力エンジニアが開発)が効いているのかもしれない。今回はその片りんを見ただけにすぎないが、この“ゾーン”に入った感覚を一度でも味わってしまうと、アッチの世界への扉が開かれてしまうと感じた。この病みつき感はかなりヤバい。
クルマ本体が1501万5000円(発売当時価格)。これにNISMO N Attack Package A kitを施せば+885万6000円以上、チタンマフラー194万4000円も必須となる。この値段にどう折り合いを付けるのかは筆者には測りかねる。走る場所だって、日本にはどこにもない。真っ平らなサーキットでは、このクルマの魅力が半減してしまう気がするのだ。
だが考えようによってはFIA-GT3仕様のGT-Rを手に入れるよりもはるかにリーズナブルだし、ヨーロッパに住んでいればご当地ニュルまで自走で行って、大手を振って走ることができる。もはやこのGT-Rは日本のスケールを飛び出してしまったのだ。そして、そういうクルマだからこそ、ただ持っているだけでも価値があると思えるのかもしれない。
足まわりが大幅にレベルアップ
気力をそぎ取られるようなGT-Rの後に乗った「ノートNISMO S」は、ホッとするような、しかしホットな一台だった。日産のスポーツブランドに昇格したニスモシリーズだが、カタログモデルとしてはラインナップできない、コストのかかるマニアックなパーツたちをさらに細かく追加したのが、今回試乗したノートの見どころである。
エンジンはもともと基準車でもかなりソリッドな吹け上がりのノートNISMO Sだったが、軽量フライホイールとマフラーを追加することで、そのレスポンスに磨きがかかっていた。また強化トルクロッドや強化エンジンマウントを入れているという割には無粋な振動もないし、一昔前のチューニングと比べれば明らかに質感が上がっていた。
だが何といっても一番の主役はサスペンション。GT-Rと同じオーリンズ製ダンパー(1way)が装着されているのだが、これが標準車の穏やかなハンドリングを崩すことなく、さらに装着タイヤ(ポテンザS007)のグリップを数段うまく引き出していた。かなりレベルの高いダウンヒル性能である。NISMOはサーキットで楽しむための素材としてノートを見ているようだが、普通に走っても乗り心地は良好。むしろベース車では高速域で足りなかったダンピング剛性が上がっていて、価格は35万4240円とかなり高めだが、この車高調だけでも買う価値があると思えた。また少し低められた車高には、派手なエアロもマッチして見えるから面白い。
質感の高い大人っぽいチューニング
イメージカラーのホワイト×レッドラインだから目立たないけれど、コイツがブラックだったらかなり悪そうだ……。そう感じたのは「エルグランド」の「NISMOパフォーマンスパッケージ」。しかし悪そうなのは顔つきだけで、その乗り味は極めて大人びていた。
エンジンは「フェアレディZ」でも実績のある「スポーツリセッティングTYPE2」。これはVQ35DEエンジンの点火時期や空燃比調整、可変バルブタイミングの変更まで行うECUチューンで、ここにスポーツマフラーを組み合わせることで、2トンを超えるエルグランドが、ターンパイクの坂道をグイグイ登る。だから勾配がもっと緩い高速道路を走ったら、かなり快適なハイウェイスターになれると思う。
ノートNISMO Sと同様に素晴らしいのはフットワークだ。「S-Tuneサスペンションキット」は10万8000円とリーズナブルな純正形状のキットで、その巨体をキビキビ走らせるようなスプリングレートや減衰力を持たせているわけではない。だからコーナーを攻めるような走りをすればロール量も大きくアンダーステアが強まるのだが、ロールの仕方が穏やかなので、うまく走らせるとミニバンなのにきちんと走る。まるで徒競走もこなす象さんのようである。
車高がやや低められていることに加え、GT-Rと同じくNISMOの空力エンジニアがエアロキットを開発したためか、直進安定性に優れている。なおかつ乗り心地もエルグランドにふさわしい上質感があった。速くするというよりも、その質感を高めるという意味で、今回最も大人っぽいチューニングが施された一台だった。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥)
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テスト車のデータ
日産GT-R NISMO N Attack Package装着車
(ベース車:GT-R NISMO)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1895×1370mm
ホイールベース:2780mm
車重:1720kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.8リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:600ps(441kW)/6800rpm
最大トルク:66.5kgm(652Nm)/3600-5600rpm
タイヤ:(前)255/40ZRF20 97Y/(後)285/35ZRF20 100Y(ダンロップSP SPORT MAXX GT 600 DSST CTT)
燃費:--km/リッター
価格:1501万5000円(発売当時)/テスト車=2617万1400円
オプション装備:チタン合金製マフラー(194万4000円)/Boseサウンドシステム(35万6400円)
装着部品:NISMO N Attack Package A Kit[エンジン・パワートレイン(専用インタークーラーパイピング<カーボン製>+専用ECM&TCM+専用フロントL.S.D.+専用リアL.S.D.<カーボンプレート>)/足まわり・ブレーキ(専用ショック<オーリンズ製4way>&専用スプリング+専用スタビライザー<ロール剛性可変式>+専用フロントブレーキパッド)/エクステリア(専用カーボンフロントフェンダー<フリック付き>+専用フロントアドオンスポイラー+専用カーボンリアウイング<高さ調整機能付き:2段階、角度調整機能付き:12段階>)/インテリア(専用フルバケットシート<左右、レカロ製カーボンシェルタイプ>+キルティングクロスマット+専用カーボンリアバルクヘッド)](885万6000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3903km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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日産ノートNISMO S ニスモパーツ装着車
(ベース車:ノートNISMO S)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4190×1695×1515mm
ホイールベース:2600mm
車重:1080kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:5段MT
最高出力:140ps(103kW)/6400rpm
最大トルク:16.6kgm(163Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)205/45R17 84W/(後)205/45R17 84W(ブリヂストン・ポテンザS007)
燃費:--km/リッター
価格:224万4240円/テスト車=384万7068円
オプション装備:ボディーカラー<ブリリアントホワイトパール>(3万7800円)/NISMO専用チューニング レカロ製スポーツシート<前席>(27万円)
装着部品:スポーツリセッティングTYPE1(11万8800円、工賃込み)/車高調整式スポーツサスペンション(35万4240円、工賃込み)/NissanConnect Nismo用データトランスミッターキット(6万4800円)/スポーツチタンマフラー(19万2240円)/L.S.D.(18万9000円)/軽量フライホイール(試作品)/強化エンジンマウント(3万780円)/強化トルクロッド(1万2960円)/ブレーキホースセット(3万7260円)/S-tuneブレーキパッド(前)(1万5120円)/フロントストラットタワーバー(3万7800円)/カーボンドアミラーカバー(4万6440円)/カーボンピラーガーニッシュ(5万3460円)/カーボンナンバープレートリム(1万4580円)/マルチファンクションブルーミラー(2万520円)/ドアハンドルプロテクター(3024円)/クイックシフト(4万5360円)/シフトノブカバー(7344円)/ジュラコン製シフトノブ(5400円)/フロアマット(2万9700円)/カーボンルームミラーカバー(1万6200円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:7323km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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日産エルグランドNISMOパフォーマンスパッケージ
(ベース車:エルグランド 350ハイウェイスター<7人乗り>)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1850×1815mm
ホイールベース:3000mm
車重:2000kg
駆動方式:FF
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:280ps(206kW)/6400rpm
最大トルク:35.1kgm(344Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)245/45R19 98Y/(後)245/45R19 98Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:9.4km/リッター(JC08モード)
価格:412万5600円/テスト車=634万6023円
オプション装備:ルーフスポイラー、ナビゲーションほか(100万5099円)
装着部品:スポーツリセッティングTYPE2(14万400円、工賃込み)/S-tuneサスペンションキット(10万8000円)/スポーツマフラー(7万200円)/S-tuneブレーキパッド(前後)(3万4560円)/エアロキット<フロントアンダースポイラー+リアアンダースポイラー+サイドスカート+リアサイドスポイラー>(33万6960円、塗装済み)/ダーククロムグリル(10万2600円)/アルミロードホイールLMX6(5万760円/1本)/カーボンドアミラーカバー(4万1040円)/カーボンピラーガーニッシュ(5万4000円)/カーボンナンバープレートリム(1万4580円)/マルチファンクションブルーミラー(2万520円)/ドアハンドルプロテクター(3024円)/フロアマット(7万200円)/カーボンルームミラーカバー(1万6200円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:7979km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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