メルセデス・ベンツCLA250シューティングブレーク オレンジアート エディション(FF/7AT)
バランスのいいニッチモデル 2015.08.26 試乗記 コンパクトなFFモデルの健闘で、国内セールスの好調が伝えられるメルセデス。その最新型となる、スタイリッシュなワゴン「CLA250シューティングブレーク オレンジアート エディション」に試乗。走りや使い勝手、そして燃費を報告する。受注生産モデルの特別仕様車
『webCG』の編集部が移転した後、初めて訪れたのは「メルセデス・ベンツCLA250シューティングブレーク」を受け取りに行った時だった。新しい駐車場を案内するのに、編集部員3人が付き添ってくれる。1人でも十分なのに、ずいぶん丁重なおもてなしだ。ついにそういう身分になったのかと感慨にふけったが、違っていた。表通りに出るまでに難度の高いクランクが2カ所あり、大切な広報車を傷つけられては困るというので万全の監視体制を整えたのである。
全長4640mmのCLAシューティングブレークは、白線で描かれたスペースから鼻先がはみ出している。狭い道を無事に通り抜けられるか心配したのも無理はない。しかし、案ずるほどのことはなくスムーズにミッションは完了した。最小回転半径は5.1mであり、見た目よりも取り回しはいいのだ。FFとはいえ、このあたりはさすがメルセデスである。見て大きく乗って小さいのが、このブランドの取りえだ。
借りだしたモデルは「オレンジアート エディション」である。要するに特別仕様車だ。スペシャルな内外装や装備が与えられているわけだが、そもそもベース車のCLA250シューティングブレークがマイナーなモデルだ。CLAシューティングブレークは4ドアクーペ「CLA」のワゴン版で、この6月から販売されている。1.6リッターターボの「180」、2リッターターボの「250」があり、250のカタログモデルは「CLA250シュポルト 4MATICシューティングブレーク」のみ。FFのCLA250シューティングブレークは受注生産なのだ。この機会に試乗しないと、次にいつ乗れるかわからない。
オレンジアート エディションは、高性能版の「メルセデスAMG CLA45 4MATICシューティングブレーク」とともに、台数限定で販売される。250は合計200台で、試乗車のボディーカラー「マウンテングレー」が120台、ほかに「コスモスブラック」が80台用意されている。
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オレンジは流行色?
名前のとおり、特徴はオレンジの装飾である。外から見ても違いはわかりやすい。フロントスポイラーには鮮やかなオレンジラインが与えられていて、F1で同じチームのマシンを区別するためフロントにペイントしていたのと似た仕様だ。リアも同じようにオレンジラインがあり、サイドから見ると、外周がぐるりとオレンジに塗られた専用ホイールが目に飛び込む。ヘッドライトにもオレンジリングが仕込まれていた。
インテリアもオレンジアクセントだらけで、トリムにはオレンジ糸のステッチが施されている。シートの真ん中に幅広のストライプがあしらわれているのが、一番特徴的なところだろう。目の届くところに必ずオレンジ色があるので、自分がオレンジアート エディションに乗っているということを片時も忘れることはない。
先日発表された「トヨタ・シエンタ」も内装にオレンジを使っていたが、知らないうちに流行色になっていたのだろうか。スポーティーさを表現するのには赤を使う場合が多いが、オレンジも選ばれることがある。「ブガッティ・ヴェイロン ワールドレコードエディション」がそうだった。「レクサスRC F」もオレンジ&ブラックがあったし、古いところでは「いすゞ・ベレット」がオレンジボディーにマットブラックのボンネットを組み合わせていた。
レーダーセーフティーパッケージやフルパワーシートなどのオプションが組み込まれているので、ベース車から75万円高となっている。それ以外は、通常のCLAシューティングブレークである。「Aクラス」「Bクラス」「GLAクラス」とFFプラットフォームを共用するCLAから派生したワゴンということだ。別の面から見ると、形としては「CLSシューティングブレーク」の縮小版である。
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微低速からスムーズな7段DCT
値段が倍以上違うモデルと比べるのも気がひけるが、「CLS550シューティングブレーク」のサイズが4970×1880×1420mmで、CLA250シューティングブレークは4685×1780×1435mm。全長が285mm短くて全幅が100mm狭く、全高は15mm高い。伸びやかさには多少の差があるが、CLAも立派なプロポーションである。リアのルーフ以外はクーペとまったく同じデザインで、好みもあるだろうがシューティングブレークのほうが斜め後ろから見たフォルムの収まりがいいように感じた。
走りだしてまず気づくのは、7段DCTのしつけのよさだ。微低速でも何らギクシャクすることなく、思いのままに微妙なスピードコントロールができる。最新のトルコン式ATにもまったく引けをとらないスムーズさだ。加速を始めても好印象は変わらない。2リッターターボエンジンは1200rpmから35.7kgmの最大トルクに達するので、街なかで扱いやすい特性なのだ。
高速道路ではなめらかな乗り心地を堪能できる。少し硬めの設定とも感じていたのだが、巡航では美点ばかりが浮かび上がった。刺激的ではないが気楽に運転でき、揺るぎない安心感がある。ステアリングホイールやアクセルペダルに対する応答が正確で、振動や騒音にわずらわされないから、運転していて疲れを感じない。
そういうクルマではないことは承知しているが、箱根のワインディングロードにも持ち込んでみた。実用的なチューンのエンジンではあっても、パワーは十分で加速はエネルギッシュだ。コーナーではさすがに敏しょうな動きとはいかない。それでも、安心感はこういった道でもメリットとなり、結構なハイペースで走ることができる。
スタイル優先だが実用性も
後席に座っていても、乗り心地は穏やかである。空間は広いとはいえないが、クーペに比べて42mmヘッドクリアランスが拡大しているというから、わがままを言ってはいけないだろう。ルーフラインを伸ばしたことは、デザイン以外にもメリットをもたらしているのだ。
ハッチゲートを開けると、荷室は巨大とまではいえないが奥行きはある。容量は、CLAクーペが470リッターなのに対して495リッター。スタイル優先のワゴンであることが知れる。後席を倒せば1354リッターまで広がるので、その気になれば大量の荷物を載せることも可能だ。
参考までに他のモデルの荷室容量を記しておこう。Aクラスは341~1157リッター、「Cクラスワゴン」は470~1490リッター、CLSシューティングブレークは590~1550リッターだ。ちなみに、本気で積載量を追求した「フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント」は605~1620リッターという大空間を誇る。
CLAシューティングブレークは高い実用性を持つが、それだけのクルマではない。CLSのゴージャスさやエレガンスには届かなくても、それなりの雰囲気を味わえる。燃費も満タン法では2桁に届いた。とてもバランスのいいモデルなのである。そのバランス点を求める層が厚いとはいえないけれど、ニッチなジャンルにもしっかりタマを用意するのが今のメルセデス・ベンツのしたたかなところだ。あまつさえ、オレンジ色のオシャレバージョンまでラインナップする。2015年の上半期輸入車販売台数ナンバーワンになった勢いには、ちゃんと理由がある。
(文=鈴木真人/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLA250シューティングブレーク オレンジアート エディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1780×1435mm
ホイールベース:2700mm
車重:1520kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92W/(後)225/40R18 92W(グッドイヤー・イーグルF1)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:567万円/テスト車=567万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1579km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:260.9km
使用燃料:24.6リッター
参考燃費:10.6km/リッター(満タン法)/9.3km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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