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第106回:超大作のパロディーからソ連の旧作まで
夏の終わりに観たいクルマ映画DVD

2015.09.04 読んでますカー、観てますカー

ポールっぽい人やディーゼルらしき人が大活躍

『ワイルド・スピード SKY MISSION』は興行収入が15億ドルを超え、シリーズ最高のヒット作となった。初登場1位を獲得できなかったのは、『ドラゴンボールZ』と『名探偵コナン』というアニメ2作に完敗した日本ぐらいである。2017年に第8作が公開されることも決まったようで、今度はニューヨークが舞台になるとか、ヘレン・ミレンが出演するのではないかとか、さまざまな臆測が飛び交っている。

DVDも発売されたので、もう一度あの興奮を……ということではない。紹介するのは『ワイルドなスピード』なのだ。「AHO MISSION」というサブタイトルが付いていることでわかるように、パロディー映画である。スキンヘッドでガタイのいい男と細マッチョのイケメンのコンビが主人公だ。ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーの代わりなのだろうが、かなり残念なルックスだ。そっくりさんとしてもレベルが低い。演じているのはよく知らない人だ。

ポールっぽい人が「トヨタ・カローラ」に乗ってストリートレースのスタート地点に現れる。ボディーカラーはミントグリーンで、サイドにはファンシーな一角獣のペイント。彼は警察官で、潜入捜査のためにストリートレースを主宰するヴィン・ディーゼルらしき人に近づこうとしているのだ。

第1作と同じ展開だ。彼は組織の一員として迎えられ、一緒に悪いことをする。デカいヤマを前にメンバーを増やすことになり、黒人のラッパーとクールなアジア系男子、女優志望のモデルを仲間に入れる。「人種の融合がこのテの映画のお約束」だと説明し、彼らには役名すら与えられない。ラッパーとかアジア系とか、属性で呼ばれる。

ドウェイン・ジョンソン風の警官も出てくるから、第1作以外にもシリーズのいろいろな要素が混ぜこぜになっているようだ。「ダットサン240Z」や「ホンダ・シビック」「スバル・インプレッサ」なども登場して、日本車リスペクトも受け継がれている。ギャグを理解するためには、ホンモノを観ておく必要があるだろう。まあ、8割方スベっているのだが。

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『ワイルドなスピード! AHO MISSION』DVD
「トヨタ・カローラ」
日本を代表する大衆車。1966年に初代が誕生し、2012年に11代目となった。映画に登場するのは10代目モデル。
「トヨタ・カローラ」
    日本を代表する大衆車。1966年に初代が誕生し、2012年に11代目となった。映画に登場するのは10代目モデル。 拡大

黄色い「ビートル」は幸福をもたらすのか

『マルタのことづけ』はメキシコ映画である。クラウディア・サント=リュスという新人女性監督の作品で、『髪結いの亭主』のパトリス・ルコントが絶賛したというから才能は疑いない。

スーパーで実演販売の仕事をしているクラウディア(ヒメナ・アヤラ)は、孤独な生活を送っている。映画が始まって7分間以上、一言のセリフも発しない。恋人も友人もいないのだ。盲腸で入院するが、誰もお見舞いに来ない。隣のベッドにいたマルタ(リサ・オーウェン)に話しかけられても、無愛想なままだ。

盲腸の手術を終えて家に帰ろうとすると、通りかかったマルタから声をかけられる。送っていくというのだ。彼女が乗っていたのは、「フォルクスワーゲン・ビートル」だった。色は黄色である。クラウディアはためらったが誘いを受け、マルタの家に向かった。マルタには娘3人と息子1人がいて、家の中はにぎやかだ。クラウディアは家族に溶けこみ、たびたび訪れて一緒の時間を過ごすようになる。

しかし、マルタの病は治る見込みがなく、死期が迫っていた。最期の思い出を作りに、一家とクラウディアは海へ旅行に出掛ける。ビートルの後席に4人乗り込み、ぎゅうぎゅう詰めになってドライブするのだ。見るだけで幸せになれると言い伝えられてきたのが黄色いビートルである。病気を治す力があるわけではないが、このビートルは確かに孤独な女性とバラバラだった家族をつなぐきっかけになったのだ。

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『マルタのことづけ』DVD
「フォルクスワーゲン・ビートル」
フェルディナント・ポルシェ博士が設計した大衆車で、ビートルというのはカブトムシに似たフォルムから付けられた愛称。ドイツで生産終了してからも海外では根強い需要があり、2003年に最終車両がメキシコ工場で作られた。
「フォルクスワーゲン・ビートル」
    フェルディナント・ポルシェ博士が設計した大衆車で、ビートルというのはカブトムシに似たフォルムから付けられた愛称。ドイツで生産終了してからも海外では根強い需要があり、2003年に最終車両がメキシコ工場で作られた。 拡大

リマスター版でよみがえった伝説のソ連映画

最後に紹介するのは新作ではない。『モスクワは涙を信じない』は1979年の作品で長らく映像ソフトを入手できない状況が続いていたが、このほどリマスター版が発売された。大好きな作品のことを書けるようになって、とてもうれしい。

映画の舞台となるのは、1958年のモスクワである。スターリン批判の2年後だが、冷戦下で厳しい統制が敷かれていた時代だ。工場で働く赤江珠緒顔のカテリーナは、リュドミラ、アントニナと寮の同室で暮らしている。若い3人が男性との出会いを求めるのは自然なことだ。最初に伴侶を見つけたのはアントニナだ。夫となるニコライは郊外にダーチャ(別荘)を持ち、自家用車の「モスクビッチ400」も所有している。面白みのない男だが、そこそこ余裕のある暮らしをしている。

肉食系女子のリュドミラは、自分を大学教授の娘と偽ってパーティーを開き、アイスホッケーのスター選手セルゲイをゲットする。付き合わされたカテリーナはTV局に務めるルドルフと恋に落ち、妊娠。しかし、ただの工場労働者であることがわかると彼は去ってしまう。

ここで第1部が終わり、いきなり20年後に飛ぶ。すくすくと育った娘アレクサンドラを起こし、カテリーナはさっそうと出勤する。以前のようにバスに乗るのではなく、「VAZ-2103」に乗っていくのだ。「フィアット124」をベースにした乗用車で、社会的なステータスがなければ持つことはできない。優秀な労働者だった彼女は、3000人の部下を持つ工場長に出世していた。

彼女には不倫相手はいたが、心は満たされない。電車の中で出会ったカマキリ眉毛の男ゴーシャ(アレクセイ・バターロフ)は、交際0日で結婚を申し込むという山本耕史ばりのストーカー体質だった。得てしてそんな男が幸福を運んでくる。2人は行き違いから別離の危機を迎えるが、ニコライがいい働きをする。20年たってもモスクビッチに乗り続けている実直な男なのだ。

この映画は、ずばぬけた傑作とは言いがたい。話はありがちなメロドラマでご都合主義だし、カメラワークは雑だ。しかし、観た後で心に潤いが生まれる愛すべき作品である。ソ連という特殊な国の映画であっても全世界の女性の心をつかみ、アカデミー外国語映画賞を受賞している。ちなみに、監督のウラジーミル・メニショフとカテリーナ役のヴェーラ・アレントワは、映画製作後に結婚した。今も存命で、ロシア映画界きってのおしどり夫婦だ。

(文=鈴木真人)

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『モスクワは涙を信じない』DVD
「VAZ-2103」
ソ連の自動車会社アフトワズが1970年代から80年代にかけて生産していたコンパクトセダン。「フィアット124」のOEMで、ソ連と東欧で販売された。後に「ラーダ1500」の名で西欧諸国にも輸出されている。写真はベースとなった「フィアット124スペシャル」。
「VAZ-2103」
    ソ連の自動車会社アフトワズが1970年代から80年代にかけて生産していたコンパクトセダン。「フィアット124」のOEMで、ソ連と東欧で販売された。後に「ラーダ1500」の名で西欧諸国にも輸出されている。写真はベースとなった「フィアット124スペシャル」。
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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