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スズキ・ソリオ ハイブリッドMZ(FF/CVT)/ソリオ バンディット ハイブリッドMV(FF/CVT)

真面目でしたたか 2015.09.17 試乗記 下野 康史 スズキのコンパクトハイトワゴン「ソリオ」がフルモデルチェンジ。大幅な軽量化やマイルドハイブリッドシステムの搭載など、トピック満載の新型の実力を試す。

最大のトピックは“ハイブリッド”

白いナンバーを付けたスズキ車で、「スイフト」の次に売れているのがソリオである。
今年1~7月の販売台数は月平均約2700台。トータルではスイフトに及ばないが、月によっては僅差で勝つこともあった。ちなみに、黄色ナンバーの「ワゴンR」は月平均およそ9800台と圧倒的に強いが、そんな定番人気軽ワゴンの陰で、モデル終末期にこれだけ健闘していたのだから立派だ。

月販3500台を目標に掲げる新型ソリオは、クラスとしては先代と同じ1.2リッターのコンパクトハイトワゴンである。開発段階での合言葉は「ソリオを凌(しの)ぐソリオをつくる」。そりゃまあ、モデルチェンジって、そういうことでしょという気もするが、一番のニュースはグレード名にもボディーのエンブレムにも付く“ハイブリッド”である。

といってもこれは、すでに軽でおなじみの“S-エネチャージ”を言い換えたもの。白いナンバーをぶら下げるクラスではこう呼ぶことにしたという。ただし、モーターのみで走行できるハイブリッドとは区別して、カタログ上では“マイルドハイブリッド”と呼ぶ。
燃費と加速性能に効くマイルドハイブリッドは、最廉価グレードを除くすべてに搭載され、販売では新型ソリオの9割を占めると見込まれている。

標準車の最上級グレードである「ソリオ ハイブリッドMZ」。新型ソリオでは、標準車の「G」を除く全グレードにマイルドハイブリッドシステムが搭載されている。
標準車の最上級グレードである「ソリオ ハイブリッドMZ」。新型ソリオでは、標準車の「G」を除く全グレードにマイルドハイブリッドシステムが搭載されている。 拡大
「ソリオ ハイブリッドMZ」のインテリア。前席の居住性を高めるためにダッシュボードは圧迫感を抑えたデザインとされており、またメーターは運転席の前方からインパネの中央に移されている。
「ソリオ ハイブリッドMZ」のインテリア。前席の居住性を高めるためにダッシュボードは圧迫感を抑えたデザインとされており、またメーターは運転席の前方からインパネの中央に移されている。 拡大
新型「ソリオ」のハイブリッドシステムは、軽乗用車用の「S-エネチャージ」をベースにISG(モーター機能付き発電機)の出力とトルクを3.1ps/1000rpm、5.1kgm/100rpmに高めたものだ。
新型「ソリオ」のハイブリッドシステムは、軽乗用車用の「S-エネチャージ」をベースにISG(モーター機能付き発電機)の出力とトルクを3.1ps/1000rpm、5.1kgm/100rpmに高めたものだ。 拡大
「ソリオ バンディット」のボディーカラーは全7色。「ファーベントレッド」と「プレミアムシルバーメタリック」には、オプションで「ブラック2トーンルーフ」仕様も用意されている。
「ソリオ バンディット」のボディーカラーは全7色。「ファーベントレッド」と「プレミアムシルバーメタリック」には、オプションで「ブラック2トーンルーフ」仕様も用意されている。 拡大
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軽いのに、軽々しくない

「ワゴンRワイド」として始まった昔は知っているが、「ソリオ」として完全に独立してからのソリオに乗るのは初めてである。つまり、2011年発売の先代モデルとの比較ができないことをお許しいただきたいが、個人的初ソリオの印象はびっくりするほどよかった。

試乗したのはソリオのトップグレード、「ハイブリッドMZ」と、「ソリオ バンディット」の「ハイブリッドMV」。単一グレードのバンディットも外観が少し若向きになるだけで、中身は変わらない。
最初、ソリオMZで走り始めて、ちょっとしたサプライズだったのは、足まわりである。腰から下がしっとり落ち着いていて、乗り心地が実に快適だ。全高1745mmのハイトワゴンなのに、運転していてかなり低重心に感じさせるところも好印象である。電動パワーステアリングの操作感は軽いが、剛性感が高いので、爽やかに軽い。ひとくちに走行品質が高いのである。

今度のソリオは本邦初登場の新型プラットフォーム(車台)を採用している。スズキ得意のダイエット作戦で、車重は旧型より一気に100kg軽くなり、4WDを含めた全モデルで1トンを切る。おかげで、軽の次に安い重量税区分をゲットしている。
試乗したFFのソリオMZもバンディットもともに950kg。それを知らずに乗ったので、車検証を見てびっくりした。かつてのスズキは、車重が軽いと乗り味もカルくて品質感を欠いたが、例えば新型「アルト」も、軽いが、決してカルくない。軽量でも、安っぽいカルさを感じさせなくなった秘訣(ひけつ)はなんなのか。新型ソリオの設計者に聞くと、例えばプラットフォームの手当てでは、軽くしても肝心なところの剛性は十分に与えることだという。

新開発のプラットフォームや高張力鋼板、超高張力鋼板の採用などにより、新型「ソリオ」は従来モデルよりおよそ100kgの軽量化を実現。車重は全ての仕様で1トンを切る。
新開発のプラットフォームや高張力鋼板、超高張力鋼板の採用などにより、新型「ソリオ」は従来モデルよりおよそ100kgの軽量化を実現。車重は全ての仕様で1トンを切る。 拡大
「ソリオ ハイブリッドMZ」のフロントシート。新型ソリオでは、全グレードで運転席にシートヒーターを標準装備。4WD車では助手席にも備わる。
「ソリオ ハイブリッドMZ」のフロントシート。新型ソリオでは、全グレードで運転席にシートヒーターを標準装備。4WD車では助手席にも備わる。 拡大
後席には左右独立式のスライド/リクライニング調整機構が採用される。標準車の「G」を除く全車にアームレストやピクニックテーブル、ロールサンシェードが標準装備となる。
後席には左右独立式のスライド/リクライニング調整機構が採用される。標準車の「G」を除く全車にアームレストやピクニックテーブル、ロールサンシェードが標準装備となる。 拡大
足元の仕様は、標準車の「G」のみ165/70R14サイズのタイヤにスチールホイールの組み合わせで、そのほかのグレードはいずれも165/65R15サイズのタイヤとアルミホイールの組み合わせとなる。
足元の仕様は、標準車の「G」のみ165/70R14サイズのタイヤにスチールホイールの組み合わせで、そのほかのグレードはいずれも165/65R15サイズのタイヤとアルミホイールの組み合わせとなる。 拡大

多岐にわたるモーターアシストの恩恵

ISG(モーター機能付き発電機)を備え、減速時にはエネルギー回生してリチウムイオン電池に電気を蓄え、加速時にはベルト駆動でクランクシャフトをモーターアシストする。ISGユニットの出力とトルクが軽自動車用より大きくなることを除けば、ソリオのマイルドハイブリッド機構はS-エネチャージと同じである。一回のモーターアシストが最長で30秒間という点も変わらない。

CVTと組み合わされるエンジンはスイフト用1.2リッター4気筒をブラッシュアップしたもの。加速はなかなか力強い。こう見えて、快速ワゴンである。
スイフトより速いと感じたのは、理の当然だ。91ps(67kW)の最高出力をはじめ、アウトプットはスイフトと同じだが、ソリオのマイルドハイブリッドは3.1ps(2.3kW)のモーターが加勢する。おまけに全車1トン切りということは、車重もスイフトより軽いのである。
ISG付きだから、アイドリングストップからの再始動はモーターによるクランキングで音もなくスルンとかかる。スターターモーターでいちいちクシュンとかかるうっとうしさから解放されるのもマイルドハイブリッドのいいところである。

ひとコマ1時間のミニ試乗会だったので、クラストップの低燃費(JC08モード27.8km/リッター)を実走して確認することはできなかった。試乗中のトリップコンピューターは10~15km/リッター台の平均燃費を示していた。

新型「ソリオ」に搭載される、新開発の「K12C」型1.2リッター直4 DOHCエンジン。最高出力や最大トルクは既存の「K12B」と同じだが、小型化と軽量化、燃費性能の向上を果たしている。
新型「ソリオ」に搭載される、新開発の「K12C」型1.2リッター直4 DOHCエンジン。最高出力や最大トルクは既存の「K12B」と同じだが、小型化と軽量化、燃費性能の向上を果たしている。 拡大
「K12C」のカット模型。冷却効果の向上や混合気の最適化といった改良によってノッキングが抑制されており、圧縮比を従来の12.0から12.5に高めることで、燃焼効率が改善された。
「K12C」のカット模型。冷却効果の向上や混合気の最適化といった改良によってノッキングが抑制されており、圧縮比を従来の12.0から12.5に高めることで、燃焼効率が改善された。 拡大
空調のコントローラーやシフトセレクターが配置されたセンタークラスター。色は標準車ではシルバーとなるのに対し、「バンディット」ではピアノブラックとなっている。
空調のコントローラーやシフトセレクターが配置されたセンタークラスター。色は標準車ではシルバーとなるのに対し、「バンディット」ではピアノブラックとなっている。 拡大
ブラックのフロントグリルと切れ長のヘッドランプが特徴的な「バンディット」のフロントマスク。LED式のポジションランプやフォグランプが標準装備される。
ブラックのフロントグリルと切れ長のヘッドランプが特徴的な「バンディット」のフロントマスク。LED式のポジションランプやフォグランプが標準装備される。 拡大

キモはボディーサイズにあり

プラットフォーム(車台)を刷新し、それに合わせてリアサスペンションも新調したフルモデルチェンジとはいえ、外観の変更は“フェイスリフト”程度である。全高が20mm低くなったことを除けば、ボディー外寸もほとんど変わっていない。
3710mmの全長は、ワゴンRよりも30cm余り長く、1625mmの全幅は15cm広い。軽より大きいのは明らかだが、スイフトほど場所を取らない。特に幅は小型車枠いっぱいのスイフトより7cm小さい。

抑制の利いたこのサイズがソリオの武器なのだと開発者は言った。軽には乗りたくないが、かといって大きなボディーはムリ、というギリギリのサイズがここ。しかし、「小さく見える」のは困る。ヤンチャな顔の「バンディット」は、そのへんの対策だ。

一番のライバルは? と聞いたら、トヨタの「ポルテ/スペイド」を挙げた。だが、あちらは全幅1695mmで、エンジンも1.5リッターと大きい。そう考えると、今度のソリオは、ライバルに対してダウンサイジング・ターボならぬ、ダウンサイジング・マイルドハイブリッドで勝負するわけかと納得がいった。

一番おもしろかったのは、スズキの人たちがソリオを「ニッチ」と呼んでいたこと。ニッチカーなんていう、うじゃじゃけた表現をスズキは嫌うのかと思ったら、「これがウチのニッチカー」だと。
でも、そのニッチ(隙間)はライフスパンの最後まで完全に売り切ることができる確実なニッチだ。スズキは本当にしたたかである。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸)

運転支援システムには軽乗用車の「スペーシア」に続き、センサーにステレオカメラを用いた「デュアルカメラブレーキサポート」が採用された。
運転支援システムには軽乗用車の「スペーシア」に続き、センサーにステレオカメラを用いた「デュアルカメラブレーキサポート」が採用された。 拡大
メーター内に表示される車線逸脱警報機能の警告。「デュアルカメラブレーキサポート」には、自動緊急ブレーキ機能に加え、誤発進抑制機能やふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能などが用意されている。
メーター内に表示される車線逸脱警報機能の警告。「デュアルカメラブレーキサポート」には、自動緊急ブレーキ機能に加え、誤発進抑制機能やふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能などが用意されている。 拡大
新型「ソリオ」のラゲッジルーム。床下に深底の収納スペースを設けたり、テールゲート側から後席のスライド調整を可能にしたりと、各所に実用性を高める改善が施されている。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)
新型「ソリオ」のラゲッジルーム。床下に深底の収納スペースを設けたり、テールゲート側から後席のスライド調整を可能にしたりと、各所に実用性を高める改善が施されている。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます) 拡大
 
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スズキ・ソリオ ハイブリッドMZ デュアルカメラブレーキサポート装着車
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テスト車のデータ

スズキ・ソリオ ハイブリッドMZ デュアルカメラブレーキサポート装着車

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3710×1625×1745mm
ホイールベース:2480mm
車重:950kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:91ps(67kW)/6000rpm
最大トルク:12.0kgm(118Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81S/(後)165/65R15 81S(ヨコハマ・ブルーアースAE-01)
燃費:27.8km/リッター(JC08モード)
価格:190万800円/テスト車=208万426円
オプション装備:全方位モニター付きメモリーナビゲーション(12万7440円) ※以下、販売店装着オプション フロアマット(2万8782円)/ETC車載器(2万3404円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:705km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

スズキ・ソリオ バンディット ハイブリッドMV デュアルカメラブレーキサポート装着車
スズキ・ソリオ バンディット ハイブリッドMV デュアルカメラブレーキサポート装着車 拡大

スズキ・ソリオ バンディット ハイブリッドMV デュアルカメラブレーキサポート装着車

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3710×1625×1745mm
ホイールベース:2480mm
車重:950kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:91ps(67kW)/6000rpm
最大トルク:12.0kgm(118Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81S/(後)165/65R15 81S(ヨコハマ・ブルーアースAE-01)
燃費:27.8km/リッター(JC08モード)
価格:188万4600円/テスト車=215万3866円
オプション装備:全方位モニター付きメモリーナビゲーション(12万7440円)/後席右側ワンアクションパワースライドドア(4万6440円)/ファーベントレッド ブラック2トーンルーフ(4万3200円) ※以下、販売店装着オプション フロアマット(2万8782円)/ETC車載器(2万3404円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:935km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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