ホンダS660 α モデューロパーツ装着車(MR/6MT)
プレミアムな味わいがある 2015.09.19 試乗記 ホンダの純正アクセサリーブランド「モデューロ」のカスタマイズパーツを装着した「ホンダS660」に試乗。その出来栄えを一言で表すと?ベース車を知り尽くしていればこそ
ホンダとしては久々のミドシップスポーツカーであるS660。これを早速ホンダ純正のアクセサリーブランドであるモデューロが料理し、カスタマイズパーツを開発した。
その内容は前後バンパーおよびアクティブスポイラー、アルミホイール、ドリルドタイプのブレーキローターとブレーキパッド、そしてサスペンションシステムという、いわばライトチューンな内容であったが、純正を知り尽くしたモデューロならではの、濃厚な味付けとなっていた。
モデューロS660の特徴をひとことで表すならば、“プレミアムS660”だろうか。基準車と同等の乗り心地ながらも、ハッキリと違う味付けを実現しているところに、筆者は好感を持った。もっともモデューロの味付けはこのS660に限らず、全てにおいてプレミアム・ホンダな味わいを持っているのであるが。
具体的にはサスペンションの伸縮が非常に自然である。量産のベース車の足まわりは、伸び側の初期減衰力を強めて安定性を出す味付け。こうすることで縮み側の減衰力を弱め、突き上げに対する乗り心地を確保したままスポーティーさを演出できる。しかしこれをやり過ぎると段差通過時にアシが伸びにくくなるばかりか、ステアリングの切り返しでは操舵(そうだ)に対する車両の追従性が悪くなる。だからストローク中期以降の減衰力は強めることができず、一見スポーティーな割に、攻め込むと意外とロールが大きくなってしまう。普通に走らせているだけなら、車重の軽さとパワーのなさと電子制御の組み合わせで、そのアラは目立たないのであるが。
対してモデューロのサスペンションは縮み側も減衰力を高め、伸び/縮みの両方で車両安定性を高めている。だからスポーティーに走ったときのロール感が最後まで自然で、ロール量が大きくなっても挙動が穏やかなのだ。
これはモデューロがベースの量産車よりも多くのコストをかけたからこその結果だろう。もちろん純正アクセサリーとしてS660の開発チームからの情報も得ているだろうから、ホンダとしてもモデューロが純正を上回る乗り味を示すのは、不本意な結果ではない(はず)。ホンダのセミワークス的存在である無限ともまた違う、純正の乗り味を大切にしたプレミアム性がそこにはある。
ちなみに筆者はこれにサーキットでも試乗した。絶対的なコーナリングスピードを上げるような試乗内容ではなかったが、その旋回時における穏やかな過渡特性は、小型ミドシップ車の運転を学ぶにはお世辞抜きに最適だと感じた。
軽自動車として考えると確かにS660は高額な車両だが、これを手に入れるユーザーはS660を軽ではなく、小さなスポーツカーと見なしている。そんなオーナーにモデューロ仕様はお薦めだ。せっかくなら、もうちょっと贅沢(ぜいたく)してみてはいかがだろうか。
(文=山田弘樹/写真=郡大二郎)
【スペック】
全長×全幅×全高=3395×1475×1180mm/ホイールベース=2285mm/車重=830kg/駆動方式=MR/エンジン=0.66リッター 直3 DOHC 12バルブ ターボ(64ps/6000rpm、10.6kgm/2600rpm)/トランスミッション=6MT/燃費=21.2km/リッター(JC08モード)/価格=218万円
※数値はいずれもベース車「S660 α」のもの。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。
































