アウディA6アバント 2.0 TFSIクワトロ(4WD/7AT)
ますます「魔法のじゅうたん」 2015.09.25 試乗記 マイナーチェンジでフロントまわりのデザインやエンジン、快適装備がリファインされた、アウディのミドルクラスワゴン「A6アバント」。2リッターの4WDモデル「2.0 TFSIクワトロ」の実力を確かめた。軽やかなのにブレない走り
2011年に発表された現行型のアウディA6がマイナーチェンジを受けた。トピックは大きくふたつあって、まずひとつは「マトリクスLEDヘッドライト」が採用されたこと。このヘッドライトは、カメラが前方を監視することで、先行車両や対向車両を検知すると自動的にハイビームを部分的にマスキングする仕組みになっている。したがって先行車や対向車がいなければハイビームのまま走り続けることができ、夜間の視認性が向上する。ただし試乗会は日中に行われたため、残念ながらハイライトのひとつであるこのテクノロジーを試すことはかなわなかった。
もうひとつのトピックは、クワトロ(四駆)モデルのベーシック仕様に搭載されるエンジンが、従来の2.8リッターV6自然吸気エンジンから2リッター直噴ターボエンジンに変更されたこと。このターボエンジンは、2.8リッターV6と比較して48ps増しの最高出力252psを発生する。
新グレード「アウディA6 2.0 TFSIクワトロ」にはセダンとアバント(ステーションワゴン)という2種類のボディーがあるなかで、今回はアバントに試乗した。
マイナーチェンジ前のアウディA6というモデルに対する印象は、「ふんわり軽い」というものだった。ビシッとソリッドなわけではないけれど、軽やかに走る。魔法のじゅうたんというとホメ過ぎだけど、イメージとしてはそういう雰囲気のクルマだ。
アウディA6アバント 2.0 TFSIクワトロのエンジンを始動、駐車場でタイヤが数回転したところで、「軽さが増した」ことに気付いた。軽さが増したというのもわかりにくいけれど、さらに軽くなった印象だった。0km/hから5km/h、15km/hと速度を上げていく過程が、よりスムーズになったのだ。
スペックを見ると、2リッター直噴ターボの最大トルクは37.7kgm/1600-4500rpm。対して従来の2.8リッター自然吸気エンジンは28.6kgm/3000-5000rpm。明らかに低回転域で力持ちになっている。乗り味がより魔法のカーペットに近づいていることが、スペックからもよくわかる。
V6から直4になることで、エンジンのマナーがラフになるかもしれないという懸念があったけれど、杞憂(きゆう)だった。静かに、滑らかに、優秀な執事のように、出しゃばらずに良い仕事をしている。
試乗当日は台風が接近するさなかで、時折突風とともに大粒の雨が路面をたたいたけれど、さすがのクワトロ、真実一路だ。軌跡がブレない。
実は1.8リッター直噴ターボエンジンを積むFFのグレード、アウディA6 1.8 TFSIもちょっと魅力的かと思っていたけれど、これくらいタフなコンディションを経験すると、アウディはやっぱりクワトロだと思えてくる。
ふんわり軽くて雨風に強いクワトロは、やわらかくて軽いのに寒さから守ってくれる、カシミヤのようである。
(文=サトータケシ/写真=三浦孝明)
【スペック】
全長×全幅×全高=4955×1875×1495mm/ホイールベース=2910mm/車重=1860kg/駆動方式=4WD/エンジン=2リッター 直4 DOHC 16バルブ ターボ(252ps/5000-6000rpm、37.7kgm/1600-4500rpm)/トランスミッション=7AT/燃費=13.6km/リッター(JC08モード)/価格=718万円
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。