シボレー・コルベットZ06 Z07パッケージ装着車(FR/7MT)
サーキットが呼んでいる 2015.10.07 試乗記 アメリカを代表する高性能スポーツカー「シボレー・コルベット」に、さらなるハイパフォーマンモデルの「Z06」が登場。最高出力659ps、最大トルク89.8kgmを発生する“史上最強のコルベット”の実力を試す。にじみ出る異形のオーラ
それはもう、凄(すさ)まじいばかりの注目度の高さに驚いた。
渋滞の中、対向車線に並ぶドライバーの目線は一様にこちらを向いている(ように見えた……)し、高速道路では一度こちらを抜きかけたのに、わざわざもう一度後方へと回り込み、斜め後方に陣取ってしばし並走を続け、後にやおら抜き去られる場面に出くわすことも少なくなかった。
そもそもそんな高速道路上では、特にこちらが急いでいるわけではなく、ましてや車間を詰めているわけでもないのに、前を行くクルマがまるで弾かれたように左車線へと避け、仕方なく(?)先を急がされるはめに陥るというシーンも度々。とはいえ、自身が乗って来たクルマを降り、あらためてその姿“矯めつ眇(すが)めつ”と眺めてみれば、恐らくは自分もこれらと同じような行動をとったに違いないだろうナ、とは納得ができる。
それほどまでに数あるスポーツカーの中にあっても“異形”であり、それゆえに凄まじいオーラと注目度を発散していたのが、ここでの題材であるシボレー・コルベットの、Z06なるモデルのアピアランスであるのだ。
前から見ても後ろから見ても
もっとも、かくも高い注目を集めるに至ったのは、今回のテスト車がまとっていた「ベロシティイエローティントコート」なる派手なカラーと、「サーキット走行のためのオプションパッケージ」と紹介をされる、「Z07パフォーマンスパッケージ」の、数々の派手なボディーパーツを身に付けていたことも大きな理由であるはずだ。
有機的に盛り上がるフロントフード上の大型ベントや、カーボンファイバー製のさまざまなエアロパーツ、フロントエンドプレートのスプリッターやエンジンルーム内の熱を排出するサイドエアベントなど、このモデル特有のアイテムの多くは、アルミニウム製フレームに着せられたイエローのボディーパネルとは対極を成すブラック基調。
すなわち、オリジナル・ボディー比で90mm拡幅され、全幅が2mへと迫る一方で、そんなイエロー/ブラックという“警戒色”によるツートン仕上げがなされた全高わずかに1.2m強にすぎないモデルが、目を引かないはずがないのだ。
さらにこのモデルは、後続車に対しても凄まじいインパクトを与えることに。
ほとんど絞り込まれないまま、ほぼ全幅のままにスパンと垂直に切り落とされた、ボリューム感たっぷりのボディーのテールエンドは、それだけでも十二分に迫力の造形。
加えて、中央下部からはまさに“集合管”という体で金管楽器の“朝顔”部分のごとく4本のテールパイプが顔をのぞかせ、上部ではいかにもコンペティティブな3ピース構造のスポイラーが立ち上がるのだから、これもまた、比べる相手がないほどの強烈ルックスだ。
ことほどさように圧巻のエクステリアが目がなじんでしまうと、実はこちらも十分個性的なインテリアのデザインすら、「意外におとなしい」と錯覚しそうになってしまうから恐ろしい。
そもそも、左ハンドル仕様のみという点はいかんともしがたいが、ドライビングポジションは問題なし。6.2リッターもあるのに”スモールブロック”を自称するV8ユニットへと火を入れ、いよいよスタートだ。
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1速ギアで100km/hまで引っ張れる
自社製の8段ATも設定されるものの、今回のテスト車は7段MT仕様。0-60mph(≒96.6km/h)加速タイムは、MT仕様が3.2秒でAT仕様が2.95秒という発表値。このモデルもATの方が速い……というより、昨今のスポーツモデルはほとんどがこうした傾向で、「わざわざ面倒で、遅い方を選ぶのか」と言われるのでは、MT派はますます肩身が狭くなってしまいそうだ。
しかも、実はそうしたタイム差は、変速ロスが影響しているわけではない。このモデルのMTは、1速ギアが100km/hまでをカバーするハイレシオの持ち主であるためだ。
ポジションによっては手首の動きのみで操作が可能な、思いのほかに優れたフィーリングのシフトを操りつつ、100km/h走行時のエンジン回転数を読み取ると7速が1200rpm、6速が1800rpm、5速が2100rpm、4速が2600rpm……と、ここまでが3000rpm以下でクリアできてしまう。
さすがに、“クルージングギア”の7速ではさしたる加速は利かないものの、それより下のギア位置ではこうした回転数でも、それなりに実用的な加速力が得られることも確認できた。
1速ギアで100km/hが出るならば、2速は一体どうなのかとチャレンジ! これをレッドラインまで引っ張ると日本では許されない“大変なことになってしまう”ので、半分の3250rpmで計測したところ、そこではおよそ75km/hという表示。
ということは、理屈の上ではこのギアで150km/hまで引っ張れるわけで、こちらもまた、このモデルのギアリングがいかに“常識外れ”であるのかを、図らずも再度証明する結果となった。
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見どころはパワーだけにあらず
2m幅に迫るボディーに左ハンドル。さらには、ストロークが長くて重いクラッチ……と、さすがに混雑した街乗りのシーンでは辟易(へきえき)とさせられてしまう要素も少なくないものの、一方で“案ずるより産むがやすし”と思えたのは、ドアミラー周囲の抜けがよく斜め前方が見やすい上に、抑揚に富んだ両側のフェンダーの峰が視界に入って、覚悟していたよりは取り回し性に優れていたことだった。さらに、スケールの大きなワインディングロードへと乗り入れると、そこでは実際よりもコンパクトに、時に“クルマを着る感触”すら得られたのは収穫。
後方から耳に届く、まさに管楽器が奏でるかのごとき派手な排気サウンドは、実は中央ディスプレイ内からアイコンスイッチを操作することで、「ステルス」という静粛性優先モードに切り替えることも可能。ただし、「なるほど、これならば住宅街でも問題ないナ」と気を許していると、3800rpm付近から再び“爆音”が復活して驚かされる。
さらに、意を決して高回転域にまでチャレンジすると、怒涛(どとう)のパワフルさもさることながら、2バルブのOHVという思わず“旧態依然”という言葉を使いたくなるこの心臓が、とてもシャープなレスポンスを味わわせてくれることも驚きだった。
このように、排気量にしてもバルブの駆動システムにしても、アメリカ車特有の強い記号性を備えたエンジンだけに、走りの話題がまずそこに集中してしまうのはやむを得ない。一方で、そんなこのモデルが意外なまでにコーナリング時のバランス感覚に優れているのも発見だった。
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“走り”を高めることに誠実に取り組んだクルマ
アルミニウム製フレーム構造がもたらすボディーの高い剛性や、トランスアクスル・レイアウトの採用で前後の重量配分がほぼ完璧なまでに等分化されていることも、このあたりの好印象には大きく貢献をしているはず。ブレンボ製セラミック・コンポジットブレーキは常に強じんな利きを味わわせてくれるし、多少ハードな連続ブレーキングでも、全くペダルタッチが変わらないタフネスぶりを備えていることも確認できた。
ステアリング・ホイールに目をやると「MTなのにパドルがあるのか?」と突っ込まれそうなものが付いているが、これはダウンシフト時のエンジン回転合わせ機構「アクティブ・レブ・マッチング」を有効化するスイッチ。これをオンにしておけば次回のダウンシフト時には、アクセルペダルをあおるまでもなく、下のギアへのクラッチミート時に見事な回転合わせを実行してくれる、なかなか有用なアイテムだ。
単に派手なアピアランスを追い求めただけでなく、単に過去からのアイコン的テクノロジーを継承するというだけでもなく、“真摯(しんし)に走りのレベルアップへと取り組んだ最新のモデル”であるということに納得できるのが、実はこのモデルの走りのテイスト。なるほど、自身にとっては「実際にサーキットへと持ち込んで、その実力を味わってみたいナ」と、そんな気持ちを駆り立ててくれた唯一のアメリカ車が、このモデルであったと報告をしたい。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
シボレー・コルベットZ06 Z07パフォーマンスパッケージ装着車
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4515×1970×1230mm
ホイールベース:2710mm
車重:1610kg
駆動方式:FR
エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:7段MT
最高出力:659ps(485kW)/6400rpm
最大トルク:89.8kgm(881Nm)/3600rpm
タイヤ:(前)285/30ZR19 94Y/(後)335/25ZR20 99Y(ミシュラン・パイロットスポーツPS2 ZP)
燃費:シティー=15mpg(約6.4km/リッター)、ハイウェイ=22mpg(約9.4km/リッター)(米国EPA値)
価格:1380万円/テスト車=---※
オプション装備:シボレー・コルベット専用MyLink統合制御ナビゲーションシステム(35万円)/フロアマット(4万1000円)
※車両は先行輸入車に付き日本仕様とは一部異なる点があるため。
テスト車の年式:2015年型
テスト車の走行距離:1万3486km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:314.9km
使用燃料:50.3リッター
参考燃費:6.2km/リッター(満タン法)/6.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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