フォード・エクスプローラーXLTエコブースト(FF/6AT)
アルヴェル乗りのみなさまへ 2015.10.16 試乗記 大規模な改良を受けた「フォード・エクスプローラー」に試乗。フロントグリルの存在感が強まった最新型は、こんな人にお薦めだ。2.3リッター化でさらに力強く
エクスプローラーの日本における競合車として、「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」の名があがって、少し驚いたと同時に、妙に納得させられた。実際、アルヴェルからの乗り換え需要は少なくないという。
新しいエクスプローラーは“大幅改良”と銘打つだけに、明らかに変わったフロント意匠だけでなく、静粛性やシャシー、装備類も入念にアップデートされている。ただ、オフローダー然とした鷹揚(おうよう)な乗り味が、まったく変わっていないのはうれしい。今回の取材日のような青空下だと、ただただ「いい天気だなあ」とゆっくり走りたくなる類いのクルマだ。
モノコック車体構造と横置きエンジン、そして四輪独立サスペンション……というエクスプローラーのパッケージも、乗用車化の一途をたどる最新SUVのトレンドに沿ってはいる。しかし、シートは相変わらず周囲を見下げるほど高く、少なくとも今回の2.3リッターターボ「XLTエコブースト」では、山道でスポーツカーを追いかけたい……なんて、無謀な衝動に駆られることもない。SUVをSUVらしく“寸止め”するセンスは、さすが見識あふれるフォード作品である。
エクスプローラーでモノコック構造の利点を直球で感じられるのが、サードシートである。3列シートのSUVは少なくない。しかし、トヨタの「ランクル」系や「キャデラック・エスカレード」などの独立フレーム車のそれは、どれもヒザを抱え込むような着座姿勢だし、昨今のクロスオーバー系のそれは、たいがい成人男性が常用できる広さをもたない。
その点、エクスプローラーのサードシートは成人男性にも必要十分な居住空間をもち、着座姿勢も健康的だ。乗降性では本格的なミニバンにはかなわないものの、シートにおさまってしまえば、長距離ドライブも苦ではない。
2.3リッター化されたエコブーストは2トン超の車重も軽々と走らせて、上り坂や加減速で、わずかなためらいも見せなくなった。2.3リッターなら日本の税制でもお得感があるから、総合的に素直に“改良”と捉えていい。
「次に買うクルマがない」とお嘆きのアルヴェル乗りのみなさま、エクスプローラーはいかがですか? XLTエコブーストなら、価格も税金も装備も、そして運転席からの見晴らしも、アルヴェル2.5リッター(の上級グレード)とほぼ同等。それでいて、乗り味や不整路での安心感、そしてデザインなどに、新しい発見とうれしさがあること請け合い。賢い人たちはもう気づいていますよ。
(文=佐野弘宗/写真=小河原認)
【スペック】
全長×全幅×全高=5050×2000×1820mm/ホイールベース=2860mm/車重=2040kg/駆動方式=FF/エンジン=2.3リッター 直4 DOHC 16バルブ ターボ(261ps/5500rpm、42.8kgm/3000rpm)/トランスミッション=6AT/燃費=8.6km/リッター(JC08モード)/価格=489万円
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。