トヨタ・ヴィッツRS G's(FF/5MT)【試乗記】
乗るほどにジンワリと 2011.11.22 試乗記 トヨタ・ヴィッツRS G's(FF/5MT)……236万2500円
スポーツコンバージョンシリーズ「G SPORTS(G's)」の第2弾となる「ヴィッツRS G's」。5MTモデルを駆って、その実力を確かめた。
ハンサムからノッペリへ
「今日はこのクルマで宮城まで行ってもらいますから」と『webCG』編集部のTさん。目の前にうずくまっているクルマは「トヨタ・ヴィッツRS G's」。ヴィッツのスポーティーグレード「RS」を、「GAZOO Racing」がチューンしたコンバージョンモデルである。「CONTROL AS YOU LIKE 〜 意のままに操る喜びを」と、どこかで聞いたようなフレーズが、G'sヴィッツのカタログには躍る。
今回のスペシャルなヴィッツは、専用サスペンションのため車高が約10mm落ち、その分、タイヤとホイールアーチの隙間が詰まってなかなかアグレッシブだ。ボディー側面下部の、赤と黒のストライプが勇ましい。「TOYOTA G SPORTS」と、説明付きの「G's」ロゴステッカーがほほ笑ましい。リアにまわると、ディフューザー調の専用大型バンパーが目をひく。センターにはF1っぽく(!?)ブレーキランプが装備され、マフラーエンドをシルバーの円筒が飾る。
2010年の末にフルモデルチェンジを果たし、すっかりハンサムになった3代目ヴィッツ。そのチューンドモデル、G'sの顔はというと……アララ、なんだかノッペリしている。ノーズから、見慣れたトヨタの楕円マークが外されている。丸みを帯びてツルツルした先端を見ながら、「オイオイ、鼻をドコに置いてきたんだい?」と、こっちはすっかりゴーゴリの気分である。シルクハットをかぶったトヨタマークがスタコラサッサと逃げて行く後ろから、G'sヴィッツがビューンと追いかけていく……とくだらない想像をしたところで、「意外とハナシのネタになるんじゃないですか」とTさんの声。それでは、と言ってそのまま運転席に乗り込んだので、まずは後席チェックからスタートである。
ハードな味わい
後席に座る。シート地には、G's専用スエード調ファブリックが使われるが、いっぽう、後ろを振り返ると、荷室を隠すパーセルシェルフ(仕切り)が省略されている。トランクに収められたカメラマンの機材がそのまま視界に入ってくる。コンバージョンモデルとして、割り切りがいいのか悪いのか判然としない仕様である。
リアシートの座面はやや低く、シートクッションの前後長は短め。膝前と頭上のスペースは十分確保されている。ノーマルヴィッツなら、「言うまでもなくロングツーリングより、街乗りでの家族や知人の送迎が主要用途だろう」と説明するところだが、G'sヴィッツの場合はどうだろう? サーキットでの走行会に参加する際は、きっと背もたれが倒されて、トランクのスペースとつなげてハイグリップタイヤが積まれることだろう。
ちなみに、カタログ上は5人乗りになっているが、センターにはヘッドレストがないので、実際に3人を後ろに座らせるのは、はばかられる。
いざ走り始めると、予想はしていたが、乗り心地は硬い。G's専用チューニングサスペンションが組まれたアシは、快適とは言いがたい。路面に段差があるとちょっと驚くような入力がある。そんな風にオシリからの苦情を頭のなかでメモしていたのだが、いつのまにかウトウトしていた。人間とは、順応するものである。
蓮田サービスエリアで、ハンドルを握らせてもらう。ドライバーズシートには、後席同様、専用スエード表皮が用いられる。こちらは赤いステッチ入りだ。「スポーツシート」な外観とはうらはらに当たりが柔らかい、静的には座り心地のいいシートである。座面の横にはG'sの刺しゅうが施されるから、ドアを開けて横から見たスペシャルヴィッツは、前後ホイールのセンター部、フェンダーのバッジ、後部ドア下のステッカー、シートクッション横、そしてフロアマットと、G'sマークの洪水である。
団塊か若者か?
軽いクラッチペダルを踏んで、走り始める。と、Gの字ヴィッツ、遅いよ……というのはGスポーツ・ヴィッツにとって酷なハナシで、「意のままに操る」ためか、TRDとのすみ分けか、はたまた開発予算の都合もあってか、ヴィッツRS G'sのエンジンは、ノーマルの1.5リッター直4のままである。最高出力109ps/6000rpm、最大トルク14.1kgm/4400rpm。いかな手こぎの5段MTが組み合わされているとはいえ、大人3人プラス撮影機材を積んでの加速としては、妥当なものだろう。
相対的に美点として際立ったのが、高速走行時の直進安定性。誤解を恐れずに述べると、G'sのコンパクトハッチは、あたかもジャーマンセダンのようにビシッと一直線に走ってゆく。後席では気になったアシの硬さも、ひとたびハンドルを握ってしまえばさほど気にならない……かと思ったが、やはり「硬すぎ」の感は否めない。感心したのが、ボディーの剛性感の高さで、唐突に入力される路面からの衝撃をミシリともいわずに跳ね返す。レースカーさながらに、底面に「溶接スポット増し」されているのが効いているに違いない。フロントには、ハンドリング向上のため、さらにパフォーマンスロッドが装着されている。
柿の木の下で撮影されるヴィッツRS G'sを眺めながら、「誰がためのチューンドモデルぞ?」と考えていた。若いころに腕を鳴らした団塊世代には、乗り心地がハードに過ぎるだろう。長く乗っていると、腰に来そうだ。トヨタがなんとか取り込みたい若者には、もっと質素に徹したほうがよかったかもしれない。2011年12月に販売が開始される予定のワンメイクレース用モデル「RS Racing」の、街乗りバージョン? それは、あり、かも。でも、ワンメイクレースやっている人たちは、お金、ないですからねぇ……。
撮影が終わって、再びクルマに乗り込む。ツルン! とした顔つきも、見慣れると愛嬌(あいきょう)があって憎めない。すこしなじんできたRS G'sを運転しながら、相変わらずオーナー像は見えてこないけれど、でも、「意外とハナシのネタになる」とは思っていた。
(文=青木禎之/写真=小河原認)
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.18 2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。
-
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.4.17 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
NEW
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
NEW
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ディフェンダー・オクタ編
2026.4.17webCG Moviesブーム真っ盛りのSUVのなかで、頂点に位置するモデルのひとつであろう「ディフェンダー・オクタ」。そのステアリングを握ったレーシングドライバー谷口信輝の評価は……? 動画でリポートします。





























