メルセデス・ベンツG500(4WD/7AT)/メルセデスAMG G63(4WD/7AT)
“Gストーリー”が新章へ 2015.10.21 試乗記 「メルセデス・ベンツGクラス」にもダウンサイジングの波。マイナーチェンジを受けてエンジンを5.5リッターV8自然吸気から4リッターV8ツインターボに換装した「G500」などに、ドイツ・フランクフルト郊外で試乗した。排気量はダウン、出力はアップ
もう何度目になるのかわからないが、メルセデス・ベンツGクラスがマイナーチェンジした。何度目かは重要じゃない。プレスリリースの冒頭には「メルセデス・ベンツが誇るクラシックオフローダーの、35年以上におよぶサクセスストーリーの新章が始まった」と書いてある。登場は1979年。以来、ほとんど姿を変えず、中身だけが進化し続け、現在でも世界中で大人気。ずっと同じ車名のまま進化し続けてきたブランドは他にもあるが、同じ骨格が用いられ、ここまで見た目が変わらないクルマは、少なくとも乗用車にはない。はたして新章にはどのような内容が書かれているのか、ドイツ・フランクフルト郊外で試乗して確かめた。
とは書いたものの、自動車専門メディアなので細かい話をすると、Gクラスは一度モデルチェンジをしている。現行型はW463型。79年の登場時はW460型だった。W461型とW462型は軍用車なのでスルーするとして、民生版は89年にW460型からW463型へとモデルチェンジした。この際、パートタイム4WDからフルタイム4WDに変わり、いわゆるオーバーフェンダーが付き、インテリアがモダンになった。エンジンは時代に合わせて何度もアップデートされているが、型式が変わったのはこの一度のみ。
今回のマイナーチェンジの最大のポイントは新エンジン搭載だ。従来G500(日本仕様は「G550」だが中身は同じ)が搭載していたのは、5.5リッターV8自然吸気エンジンだが、これに代えて4リッターV8ツインターボエンジンが採用された。AMGが開発し、すでに「AMG GT」や「AMG C63」に搭載されているものと同じで、G500に最適化されて搭載される。
最高出力422ps/5250-5500rpm、最大トルク62.2kgm/2250-4750rpmというパワースペックは、従来型に比べ、35ps、8.2kgmの向上。欧州複合モードの燃費は従来の6.7km/リッターから8.1km/リッターに向上した。いわゆるダウンサイジングコンセプトの採用によって、パワー、燃費の両方が向上した。
静かでパワフル
ジュメイラホテルの部屋を出て、エントランスに整然と並べられたG500や「AMG G63」の中から1台を選ぶという、アラブの富豪ごっこで始まった試乗。大きく変わることはないとわかっていたものの、外観上の変化を探すと、すぐに見つかった。フロントバンパーが、大きく3つ穴が開いたデザインとなった。見つかったのはその1カ所のみで、クルマをぐるり回って確かめたが、それ以外の変更点は見つからなかった。
まずG500を選ぶ。運転席に乗り込んでドアを閉めたら、例の「ガチーン」という音。しっかりした感触が手に残る。かつてのメルセデス・ベンツやポルシェの各モデルで味わうことができた金庫の扉みたいなこの感触と音は、今や唯一Gクラスのみで味わうことができる。昔ながらのグリップタイプのドアノブで、開閉に力を要するので、オートクロージャーなどの“軟弱”装備に慣れた女性は爪が傷むと嫌うらしいが、乗り始めにまずこの感触を味わわせることで頑強さを乗員に感じさせ、クルマへの安心感、信頼感につなげているのがわからないやつはおととい来やがれ!
さて試乗開始。すぐにアウトバーンへ。新エンジンは静かだ。従来の5リッターV8も十分静かだったが、もっと静かに感じる。100km/h時のエンジン回転数は2000rpm未満。採用から年月がたち、機械的熟成が進んだ7Gトロニックはほとんど変速ショックを感じさせず、黒子に徹して適切なギアを選び続ける。100km/hからアクセルを踏み増して加速してみる。瞬時に7速から5速に下がってクォーンという上品なエキゾーストノートとともにスピードが増す。ドロドロというアメリカンV8のような音はしない。そっちが欲しい人はあと何百万円か足してAMGをどうぞ。
踏み続ければどこまでも速度が上がりそうな感じだ。相変わらず車重は約2.5トンあるのだが、最大トルク62.2kgmがそれを感じさせない。ターボ化によって最高出力、最大トルクのいずれもがより低い回転数で得られるようになったので、数値以上のパワーアップを体感できる。
ただし、クルージングしていて心地良いのは150~160km/h前後。道がどこまでも真っすぐで、他にクルマがいなければもっと飛ばしてもよいのだが、車線変更やジャンクションでの路線変更を伴うとなると、このシャシーでそれ以上出す気になれない。高速域での微妙なステアリング操作に対するレスポンスが少し曖昧なほか、操作に対する車体の反応(揺れ)に一瞬のタイムラグがあるのだ。今回手が加えられ、危機的状況でのお仕置き的作動だけでなく、細かく作動してスムーズな走りをアシストするようになった横滑り防止装置や、265/60R18というぶっといタイヤによって高速域でのスタビリティーを確保しているとはいえ、本籍はラダーフレームのオフローダーなのだ。絶対的スピードを求めるなら他の乗用車系SUVを当たるべきだろう。日本では関係ない速度域での話だが。
試乗車には新たに設定されたオプションのアダプティブ・ダンピング・システムが備わっていた。日本でいくらのエクストラとなるのか現時点では不明だが、これはおすすめしたい。コンフォートとスポーツがあって、単純に言えばコンフォートはソフト、スポーツはハードなダンパーセッティングになるのだが、2段階設定できるからこそコンフォートを思い切り乗り心地重視に振ることができるのだろう、タウンスピードでの乗り心地はこれまでよりもはっきりと快適になった。
立ち位置に揺るぎなし
日本でいうJAFに相当するADACが所有するオフロードコースで、G500の悪路走破性を試すことができた。ただし、はっきり言って、モーグルも斜面も急な坂道も、Gクラスにとっては走破が容易すぎるコース設定で、フロント、センター、リアと3つ備わるデフロックのうち、せいぜいセンターデフロックすれば走りきれる程度。うまくやればデフロックを使わずとも走破することができた。
こうした悪路をいとも簡単に走破してしまうのは、アプローチアングル30度、デパーチャーアングル30度、ランプブレークオーバーアングル24度、235mmのグランドクリアランス、渡河最深限界600mmといったオフローダーとして本来あるべき姿を失っていないからこそ。市場の要求によって豪華で高価なクルマにはなってしまったが、決して魂を売っていないところがカッコいい。
続いてAMG G63に乗り換える。こっちはエンジンは従来通りの5.5リッターV8ツインターボだが、最高出力が27psアップして571ps/5500rpmとなった。最大トルク77.5kgm/1750-5000rpmは変更なし。交互に乗り換えるわけではないので、500ps超のエンジンの27psアップを体感するのは難しかったが、ま、いずれにせよ速い。あまり上品な話ではないが、同じようにアウトバーンの追い越し車線で先行車に接近した場合でも、「AMG A45」で迫った時とは先行車の振る舞いがまるで異なり、即座によけてくれるという印象。
G500と異なるのは、AMG G63はよりオンロード向けということ。もちろん、3つのデフロックなどは備わり、並外れた悪路走破性は保持しているが、275/50R20というより太いタイヤが装着され、ボディー前後の下部の形状が異なるのか、アプローチアングルとデパーチャーアングルもG500ほど優秀ではない。また、G500で選べるアダプティブ・ダンピング・システムをAMGモデルでは選ぶことができない。その結果、サスペンションのセッティングは従来通りハードよりで、タウンスピードでは若干ゴツゴツとハーシュを拾う乗り心地となっている。
願わくば……
AMGのステータス性などを否定するつもりはまったくないが、Gクラスに限っては、G500のほうが総合的なバランスに優れていると思う。さらに独断と偏見をもって言うなら、Gクラスにより似合うエンジンはディーゼルだ。今回、試乗することができなかった3リッターV6ディーゼルターボエンジンを搭載する「G350d」(日本仕様の車名は「G350ブルーテック」だが、新型導入とともに「G350d」に変わるはず)こそ本命なのではないだろうか。
新しいG350dは、同じように尿素SCRを使ったクリーンディーゼルエンジンで、改良された結果、パワーが従来の最高出力211ps/3400rpm、最大トルク55.1kgm/1600-2400rpmから、同245ps/3600rpm、同61.2kgm/1600-2400rpmへと進化した。また、欧州複合モードの燃費はこれまでの8.9km/リッターから10.1km/リッターに向上。日本仕様のJC08モード燃費8.5km/リッターという値がどこまで向上するかはまだわからないが、上がることは間違いない。
GクラスにはほかにもV12エンジンを搭載した「AMG G65」というモデルもあるし、4輪の「G500 4×4²」もドイツなどで市販されることになった(本国での車両価格は22万6100ユーロ)。時々生産終了のうわさが流れてくるが、その度に市場が大反対して生産継続が決まるGクラス。それに仮にどんなに完璧なフルモデルチェンジを行ったとしても、ファンから認めてもらえるとは思えない。つまり、このカタチが終わる時はGクラスが終わる時なのだろうが、それはまだまだ先なんじゃないだろうか。
もし“その時”がくるとしたら、どこかの市場で歩行者保護の基準が今より厳格化され、このカタチでは基準を満たすのが難しくなるといった理由かもしれない。ともあれ、1日でも長く“Gストーリー”を続けるため、メルセデス・ベンツには、現状この車体には難しいとされるレーダーセーフティーパッケージの採用をなんとか実現してほしい。
(文=塩見 智/写真=ダイムラー)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツG500
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4764×1867×1954mm
ホイールベース:2850mm
車重:2595kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最大出力:422ps(310kW)/5250-5500rpm
最大トルク:62.2kgm(610Nm)/2250-4750rpm
タイヤ:(前)265/60R18/(後)265/60R18
燃費:12.3リッター/100km(約8.1km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
メルセデスAMG G63
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4763×1855×1938mm
ホイールベース:2850mm
車重:2550kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:5.5リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最大出力:571ps(420kW)/5500rpm
最大トルク:77.5kgm(760Nm)/1750-5000rpm
タイヤ:(前)275/50R20(後)275/50R20
燃費:13.8リッター/100km(約7.2km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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