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ボルボV60クロスカントリーD4 SE(FF/8AT)

これからのオールラウンダー 2015.10.27 試乗記 佐野 弘宗 ボルボから、新たなクロスオーバーモデル「V60クロスカントリー」が登場。ベースとなった「V60」とは異なる、このクルマならではの味わいや、走りの印象を報告する。

懐かしのスタイル

ボルボがV60にクロスカントリーを用意するとは、個人的にはちょっと意外に思えた。もっとも、ステーションワゴンなどの乗用車の車高をリフトアップして、オフローダー風の加飾を施したナンチャッテ・クロスオーバーSUVは今やけっこう定番的な企画商品であるし、ボルボはたしかにパイオニアメーカーのひとつではあった。でも、歴史の流れを考えると、やはり予想外だった。

こうした手法が最初にプチ流行したのは1990年代半ばのことだ。日本では94年に出た「三菱ギャランスポーツ」が最初だったと記憶する(5ドアハッチバックがベースで、たしか車高は上がっていない)。
翌年になると、今度は富士重工がステーションワゴンの車高をきちんと(?)カサ上げした「スバル・インプレッサスポーツワゴン グラベルEX」を、さらに翌年には、それをひとつ上の兄貴分に適応した「レガシィ グランドワゴン」を発売する。

そして、その手法は日本にちょっと遅れて欧州にも伝わる。欧州メーカーで初めてその流れに乗ったのがボルボで、最初の「V70 XC」がデビューしたのは97年だ。続いてアウディが99年に初代「オールロードクワトロ」を世に送り出す。
……と、ここまで読んでいただいてお気づきのかたも多いと思う。こうしたナンチャッテSUVは、そもそも本格的なクロスカントリー車(=今でいうSUV)を持たないメーカーが、カタチだけでもRVブームに乗るための苦肉の策でもあった。三菱を例外とすれば、これらを発売した当時のスバル、ボルボ、アウディには、今でいうSUVのラインナップはなかったのだ。

ボルボのクロスオーバーモデル「V60クロスカントリー」。日本では2015年10月6日に発売された。
ボルボのクロスオーバーモデル「V60クロスカントリー」。日本では2015年10月6日に発売された。 拡大
運転席まわりの様子。テスト車は、「アンスラサイト(グレー)」のインテリアカラーにベージュの本革シートが組み合わされていた。
運転席まわりの様子。テスト車は、「アンスラサイト(グレー)」のインテリアカラーにベージュの本革シートが組み合わされていた。 拡大
つやのあるブラックのドアミラーカバーは、「V60クロスカントリー」の専用装備のひとつ。
つやのあるブラックのドアミラーカバーは、「V60クロスカントリー」の専用装備のひとつ。 拡大
「V60クロスカントリー」のラインナップは、ディーゼル車とガソリン車、各1車種ずつ。今回は前者に試乗した。
「V60クロスカントリー」のラインナップは、ディーゼル車とガソリン車、各1車種ずつ。今回は前者に試乗した。 拡大
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予想外のニューモデル

この種のステーションワゴンベースSUVは、市場で一定の支持を得た。レガシィ グランドワゴン(現在は「アウトバック」)、V70 XC(現在は「XC70」)、そしてオールロードクワトロの3台はすでに複数回の世代交代を経て、現在も定番モデルとして存在している。ただ、いっぽうでは3社ともその後に専用デザインの本格SUVを開発して、以降はこの種のモデルを大々的に増殖させることもなかった。

ボルボのXC70は今も健在だ。そして60シリーズには、すでに専用デザインの「XC60」もある。これまでの歴史に沿うなら、V60のクロスカントリーはない……と予想するのが自然である。でも発売された。だから予想外である。

まあ、昨今の「クロスオーバーならなんでもアリ」の風潮を考えると、このV60クロスカントリーも十分に勝機がある商品企画だろう。90年代と現在を対比すると「ボルボが早すぎた」というべきか、あるいは「流行は繰り返す」というべきか……。

V60クロスカントリーの登場で、既存乗用車ベースのボルボ・クロスオーバーSUVもそれなりの規模のシリーズとなった。いっぽうで専用デザインのSUVも健在なので、ここでボルボは車名を整理した。
今後は乗用車ベースのクロスオーバーSUVの車名を「○○クロスカントリー」に統一、そして「XC」という記号は本格的なSUVモデル専用名になるという。ちなみにボルボのウェブサイトには現時点でも「XC70」が残っているが、これも近いうちに名称変更、もしくは生産終了となるのだろう。

サイドビュー。ホイールハウスを取り囲む、グラファイトカラーのフェンダーエクステンションが、個性を主張する。
サイドビュー。ホイールハウスを取り囲む、グラファイトカラーのフェンダーエクステンションが、個性を主張する。 拡大
オプション「レザーパッケージ」装着車の本革シート。写真はガソリン車のものだが、ディーゼル車でも違いはない。
オプション「レザーパッケージ」装着車の本革シート。写真はガソリン車のものだが、ディーゼル車でも違いはない。 拡大
「V60クロスカントリー」には、グロッシーブラックのサイドウィンドウトリムが採用されている。
「V60クロスカントリー」には、グロッシーブラックのサイドウィンドウトリムが採用されている。 拡大
荷室の様子。2分割式のラゲッジネットや、ラゲッジカバーが標準で備わる。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)
荷室の様子。2分割式のラゲッジネットや、ラゲッジカバーが標準で備わる。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます) 拡大

車高の違いは味に出る

やけに前置きが長くなってしまった。さて、日本導入されるV60クロスカントリー(以下CC)は、2機種ある。エンジンはディーゼルとガソリンが各1種ずつ。今回試乗したのはディーゼルの「D4」で、駆動方式はFFだ。

ちなみにもうひとつのガソリン「T5」は駆動方式が4WD……なのだが、この場合のT5エンジンは、昔ながらの2.5リッター5気筒ターボである。
そこに特別の意味や問題があるわけではなく、日本法人の広報担当氏によれば「ボルボは小さい会社ですので……」ということだ。つまり、現在のボルボはエンジンと変速機の刷新が最優先事項で、それ用の4WDの開発が本格化するのは次のステップらしい。というわけで、4WD系では熟成の旧世代パワートレインがまだまだ健在である。

今回は試乗記なのに、またまた前置きを続けてしまった。というわけで、いよいよ試乗である。
試乗会のベースとなったリゾートホテルから乗り出したV60 CCの第一印象は、良くも悪くも車高カサ上げグルマ特有のクセが皆無ではない。もともとのV60が路面へばりつき系スポーツテイストが濃いめであることもあって、リフトアップされたV60 CCに乗ると、上屋の揺れがわずかに目立つことは否定できない。そのわりにステアリングは鋭い。

さらにボルボのディーゼルは、このクラスとしてはパワフルかつレスポンシブなので、CC特有のリズム感に慣れないうちは、ユラユラと同乗者に不快な挙動を出してしまいがち……と思えた。わざわざ不満をとなえるほどではないが、ダンピングチューンにはまだ熟成の余地がある。

2リッター直4ディーゼルターボ「D4」エンジン。1750rpmの低回転域から、40.8kgmの最大トルクを発生する。
2リッター直4ディーゼルターボ「D4」エンジン。1750rpmの低回転域から、40.8kgmの最大トルクを発生する。 拡大
「V60」と共通デザインの、ウイング型メーターパネル。
「V60」と共通デザインの、ウイング型メーターパネル。 拡大
ワインディングロードを行く「V60クロスカントリー」。専用のサスペンションが与えられている。
ワインディングロードを行く「V60クロスカントリー」。専用のサスペンションが与えられている。 拡大
テスト車には、標準のものより1インチ大きなオプションの18インチのアルミホイールが装着されていた。
テスト車には、標準のものより1インチ大きなオプションの18インチのアルミホイールが装着されていた。 拡大

山坂道でも都会でも

V60 CCの最低地上高は200mmもある。ベース比で65mmもリフトアップされており、専用開発SUVと比較しても小さくない……どころか、十二分にホメられる本格派レベル。ちなみに弟分「V40 CC」のそれは145mmで、ベース比だと10mmしか上がっていない。

さすがにこれだけ地上高があれば、ベースのV60と乗り味に明確な差が出るのは当然だ。
試乗コースを箱根の山坂道に移すと、市街地でしっくりこない印象もあった足どりは、見ちがえたように安定してリニアになる。しっかりと荷重がかかってロールすると、今度は微小域のダンピングより、ジオメトリーや横剛性など、サスペンション本来のポテンシャルが問われる。そうした場面でのV60 CCのフィジカル性能は悪くない。

ベース比で65mmものリフトアップは、さすがに細かいチューニングでは対応しきれない。事実、このクルマの足まわりはXC60やXC70のアームやナックルを巧妙に流用した専用設計。そんな本格SUVばりのシャシーに、低重心なステーションワゴンの車体を載せているのだから、基本性能は高いのだ。
さらにタイヤ銘柄も高性能なサマータイヤである。ディーゼルの強力トルクをもってしても、その安定性を乱すのは簡単ではない。

走りの印象が良くなると、クルマ全体もがぜんカッコよく魅力的に見えてくる。CC専用の加飾は控えめだが効果的。FFとはいえ200mmもの地上高があれば、走破性に不足があろうはずもない。全高1540mmで立体駐車場にも入るのも、都市生活者にはポイントが高い。
V60 CCが似合うのは基本的にアウトドア的な場面であることは当然だが、降雪時の東京(は除雪インフラもなく、ワダチがすごい)などでは、バカデカいSUVより小回りが利いて、なのに地上高は本格派……のV60 CCのようなクルマこそ最強の一台だろう。

(文=佐野弘宗/写真=高橋信宏、ボルボ・カー・ジャパン)

「V60クロスカントリー」の最低地上高は、「V60」比で65mm高の200mm。立体駐車場への対応を意識し、車両の全高は60mm高の1540mmに抑えられている。


	「V60クロスカントリー」の最低地上高は、「V60」比で65mm高の200mm。立体駐車場への対応を意識し、車両の全高は60mm高の1540mmに抑えられている。
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センターコンソール部には、空調やインフォテインメントシステム、運転支援システムのスイッチが整然と並ぶ。
センターコンソール部には、空調やインフォテインメントシステム、運転支援システムのスイッチが整然と並ぶ。 拡大
後席。中央席のヘッドレストは収納式で、左右席のものも、ドライバーの視界確保のために折りたたむことができる。写真はガソリン車のもの。
後席。中央席のヘッドレストは収納式で、左右席のものも、ドライバーの視界確保のために折りたたむことができる。写真はガソリン車のもの。 拡大
スキッドプレートやハニカムデザインのグリルなどにより、フロントデザインも「V60」との差別化が図られている。
スキッドプレートやハニカムデザインのグリルなどにより、フロントデザインも「V60」との差別化が図られている。 拡大
 
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テスト車のデータ

ボルボV60クロスカントリーD4 SE

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1865×1540mm
ホイールベース:2775mm
車重:1740kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4250rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)235/50R18 101W/(後)235/50R18 101W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:19.5km/リッター(JC08モード)
価格:494万円/テスト車=595万8000円
オプション装備:チルトアップ機能付き電動ガラスサンルーフ(17万7000円)/メタリックペイント<リッチジャバメタリック>(8万3000円)/パークアシストフロント(3万1000円)/プレミアムサウンドオーディオシステム/マルチメディア(12万円)/アーバンウッドパネル<センタースタック、ドアハンドル>(4万7000円)/18インチアルミホイール(8万円)/レザーパッケージ<本革シート+助手席8ウェイパワーシート+フロントシートヒーター+12セグ地上デジタルTV>(36万円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1763km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ボルボV60クロスカントリーD4 SE
ボルボV60クロスカントリーD4 SE 拡大
トランスミッションは、アイシン・エィ・ダブリュ製の8段ATが組み合わされる。
トランスミッションは、アイシン・エィ・ダブリュ製の8段ATが組み合わされる。 拡大
リアエンドには、「CROSS COUNTRY」のロゴが入ったスキッドプレートが添えられる。
リアエンドには、「CROSS COUNTRY」のロゴが入ったスキッドプレートが添えられる。 拡大
 
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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