ボルボV60クロスカントリーT5 AWDプロ(4WD/8AT)
あちらを立てて こちらも立てる 2020.02.25 試乗記 ボルボ伝統のワゴンボディーに悪路走破性能をプラスした「V60クロスカントリー」を、北海道の雪道と雪上特設コースでドライブ。オンロードでの試乗だけでは分からなかった、北欧生まれのクロスオーバーが有するポテンシャルをあらためて確認した。本格SUVに迫るスペック
全高は1505mmと、大半の機械式立体駐車場にもらくらく進入がOK! 一方で最低地上高は210mmと──この値が200mmを大きく下回るものも少なくない多くのライバル車に差をつけて──SUVとしての“本格度”の高さも見せつけることになっているのが、日本で2019年春に発売されたボルボのV60クロスカントリーだ。
そのルックスやネーミングからも想像がつくように、ベースは“クロスカントリー”の文字が外されるベーシックな「V60」。ただしそんなこのモデルが、これもまた周辺ライバルではありがちな「ステーションワゴンをベースに、SUV風味の装飾を施したもの」という内容のみにとどまらないことは、V60比で65mmプラスとされた前出の最低地上高だけではなく、実際のオフロード踏破能力を大いにかさ上げするさまざまなスペックが証明してもいる。
例えば、17度というアプローチアングルや22.8度というデパーチャーアングル、そして18.4度というランプブレークオーバーアングルなどがその一例。さらには、そうした物理的な対障害角の大きさに加え、低ミュー路での急勾配降坂時の安全性を前進/後進方向ともに大きく向上させる電子デバイス「ヒルディセントコントロール」の標準採用なども見逃せないポイントだ。
とはいえ、都会を中心にウロウロと走り回っているだけでは、そんなうたい文句も宝の持ち腐れになりがち。ということで「能あるモデル」が秘めたる実力の一端を実体験するべく、冬本番の北海道へと日帰り強行軍を試みた。
雪上で見るたくましさは格別
「実は東京から自走で来たんですヨ」と、さらなる強行軍を強いられたボルボ関係者の手によって札幌は新千歳空港にほど近いオフロードコースへと用意されたV60クロスカントリーは、やはり特にこうしたシチュエーションの下では、ベースとなった“普通のV60”よりもひと際力強く、そしてたくましく見えた。中でも前述の高い地上高とその数値を得ることにひと役買っている大径のシューズ、さらにそれを収める役割が与えられたフェンダーのエクステンションなど、主にロワーボディーの専用ディテールが功を奏していることは間違いない。
ちなみに、今回試乗会場に持ち込まれた上位グレード「T5 AWDプロ」の19インチホイールと組み合わされるタイヤは、もちろんあらかじめスタッドレスへと交換されていた。たとえ“スノー”をうたうドライブモードが用意されるモデルであろうとも、積雪路面上にノーマルタイヤで乗り出すのは言語道断というもの。非降雪の地域で少しでも雪が積もると必ず姿を現すのが、そんな状態で走り始めた挙げ句に案の定身動きがとれなくなって、タダでさえ通りにくくなった道を“通せんぼ”するやからである。
4WD車の場合に特に注意すべきは、2WD車に対して加速の自由度は高いものの止まる能力は全くの同等か、むしろ重くなった重量のため「それ以下になる」ということだ。
というわけでwebCG読者には“釈迦(しゃか)に説法”と知りながらも、あらためての御忠告。とにもかくにも、積雪の予報が出た時には、たとえ4WDモデルであろうとも、ノーマルタイヤ車で出掛けてはイケナイのであります。
テイストは本格的なフルタイム4WD
そんな留意点も存在する一方で、4輪にスタッドレスタイヤが装着されたV60クロスカントリーがステーションワゴン風のルックスからは想像できないほどに高い踏破力の持ち主であることをあらためて存分に教えられたのが、特設されたオフロードコースにおける今回のテストドライブであった。
クロスカントリーのベースとなるV60の4WDバージョンは、日本仕様の場合すべてが“ツインエンジン”をうたうハイブリッドの設定。後輪の駆動力がモーターではなくエンジンから直接届けられるトルクによって生みだされるのは、このクロスカントリーのみとされている。
そんなクロスカントリーに採用された4WDシステムは、前輪への駆動力伝達が優先され、“いざ”というシーンでは電子制御式の多板クラッチを用いたハルデックスカップリングを介して後輪にもトルクが伝達される、いわゆるオンデマンド方式。
ただし特筆できるのは、静止状態でも後輪側に80N・mほどのプリロードがかけられている点。すなわち、ゼロスタート時であっても後輪がある程度の駆動力を発生させるというのが、このシステムの特徴だ。
実際、雪上/氷上走行が100%を占めることとなった今回のテストドライブでは、スタートの瞬間から後輪もしっかりと大地を蹴る感覚を味わえた。分かりやすく言えば、FWDベースのオンデマンド式4WD車というよりも、限りなく本格的なフルタイム4WD車に近いテイストである。
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ステーションワゴンとSUVのいいとこ取り
電子制御式だからこそ可能になった巧みな車両コントロールの恩恵は、実は前述のスタートシーンのみならず、走り始めた後の操縦安定性面でも明確に感じられた。今でも多くのFFレイアウトベースのモデルが採用する4WDシステムを備えた車両の場合、「まずは前輪の空転状態を検知の後、後輪にもトルクが伝達される」というロジックから、特に今回のような滑りやすい路面では、どうしてもアンダーステアが発生しやすい。
そもそもフロントヘビーな上に、アクセルの踏み込み時に起こりやすい前輪空転によってアンダーステアが発生すると後に後輪が駆動力を生み出した段階では、それがプッシュアンダーを誘発。オンデマンド式4WD車は、コーナリング全般で頑固なアンダーステアに終始することが多い。
ところがアクセルオンで瞬時に後輪にもトルクが伝達されるこのモデルの場合、そもそも初期のアンダーステアが発生しづらく、わずかに1500rpmから生み出される350N・mというゆとりのトルクを生かして、場面によっては軽いドリフト姿勢に持ち込むことすら、さほど難しいことではない。
かくして今回のV60クロスカントリーでのテストドライブでは、対障害角や最低地上高などの物理的要件がかなえる踏破性の高さのみならず、これまでの日常シーンで感じていた以上に秀でた操縦安定性を明確に味わうことができた。
そんな自在度の高い走りに魅力的な固有のコスメティックが加えられ、さらにステーションワゴンならではの高いユーティリティー性能はそのままに、ベーシックなモデル比でプラス50万円という価格が設定されるとなれば、V60シリーズ中で最も高い人気を誇るモデルとなっても何ら不思議ではない。XC60では大きさも価格もヘビーに過ぎるといった思いを抱く人に対しても、もちろんアピール度の高いボルボ最新のクロスカントリーバージョンなのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ボルボV60クロスカントリーT5 AWDプロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1895×1505mm
ホイールベース:2875mm
車重:1830kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:254PS(187kW)/5500rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1500-4800rpm
タイヤ:(前)245/45R19 102Q/(後)245/45R19 102Q(ヨコハマ・アイスガード6 iG60)
燃費:11.6km/リッター(JC08モード)
価格:664万円/テスト車=707万2000円
オプション装備:メタリックペイント<メープルブラウンメタリック>(9万2000円)/プラスパッケージ<チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ、ステアリングホイールヒーター、リアシートヒーター、テイラードダッシュボード>(34万円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:611km
テスト形態:トラック/ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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