ボルボV60 D4 R-DESIGN(ポールスター・パフォーマンス・パッケージ装着車)(FF/8AT)
気になる部分がひとつだけ 2015.11.12 試乗記 メーカー純正のチューニングプログラム「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」が施された「ボルボV60 D4 R-DESIGN」に試乗。ROMチューンを受けたディーゼルエンジンの実力と、「R-DESIGN」用シャシーが織り成す走りを報告する。病みつきになる気持ちよさ
「Drive-E」系の「D4」エンジン。イマドキのよくできたディーゼル内燃機関のひとつ、といっていいんでしょう。特筆点その1は、ピークパワーやマキシマムトルクが額面上こんなにありながらも街なかゆっくりモードの運転というか走行が場違いでないこと。おとなしく走っているときはおとなしく走っているときで、ちゃんと充足感がある。そして気が向いて、あるいはそうすることが比較的かもっと場違いでない状況でグイッと強めの加速要求をしてみると、ヌオオーッ!! と速い。200psも44.9kgmも、オドカシ用としてはイマドキたいした額面ではないかもしれない。でも、この正味の速さはやみつきになる。……人によっては。
トバす気に全然ならないままシアワセにドライブしていられる人ももちろんいて、筆者はどちらかというとそっちのタイプ。でもやはり、この速さは……。料金所からのスタートダッシュ(笑)よりは、巡航状態からのいわゆる追い越し加速。そこからの速度維持。8速100km/hが1500rpmぐらいのギアリングなので巡航状態からグイッと負荷を上げるとそれなりにダウンシフトはやるけれど、ケーハクにヒャンヒャン回転を上げる感じにはならない。で速い。力強い。気持ちよさが一瞬、ではなく長~く続く。それだけに、ある意味かえってタチが悪い。かもしれない。
踏めば即座に、しかしジワッと反応する
ワインディングロードのお元気走行も得意科目である。乗ったことはないけれど、WRC車両。ああいうののエンジン特性に近い特性のノーマル市販車用エンジンはこのテではないかという気もする。有効なトルクバンドを外さぬために、常に回転数を高めに保って……的な配慮がまるで要らない。ダウンサイジング系ガソリンエンジンと比べても、さらにずっとラク。いわゆるNA(自然吸気)領域の谷間に落っこちてしまうことがないので、ラクで速い。スムーズにステディーに強力。動力方面のことを気にする必要がなくなるぶん、ハンドルとブレーキの操作に集中できる。
曲率半径の小さいカーブが連続する上り坂の区間で、例えば3速ホールド。タコメーターを気にする必要はロクになかったのでアレだけど、2000rpmも回っていればオツリがくる……でしょう。コーナー出口へ向けての加速のためにドライバーがアクセルペダルを踏み込もうとする段階でエンジンさんはすでに準備万端待ち構えていて、踏めば即座に力が強まる。ただし、ドライバーの操作を追い越すような反応はしない。あくまでジワッと系。運転しやすい。
上のほうで回りかたが苦しくなるようなことは別にないけれど、金切り系の超高回転サウンドを体験するのには、このクルマというかこのエンジンは(アタリマエだが)向かない。そのかわりというか、正味の速さがある。あるいは、公道で速いタイプ。金切り系の排気音は、YouTubeあたりでちょっと前(かもっと前)のF1の走行動画かなんかを探して試聴すればいい。8発。10発。12発。イギリス。ドイツ。イタリア。あと日本。フランス。各種より取りみどり。運転の心配なんてしなくてよくて、それこそ酔いしれ放題。
山坂道で感じるROMチューンの恩恵
今回借りた個体にはポールスター・パフォーマンス・パッケージというのがついていた。ついていたというか、いわゆるROMチューンがされていた。メーカー純正(後付け可というか、基本、後付け用)。このROMチューンをやるとピークパワーとマキシマムトルクがそれぞれ10psと4.1kgmアップするのと、あとはアクセル操作に対するエンジンのレスポンスがよくなる。Dレンジで走っているときのギアホールド度もアップする。ただしモード燃費の額面はノーマル状態と変わらず……ということは、フツーにおとなしく走っているときの動力関係のフィーリングというか特性はROMチューンなしの状態と同じであるはず。
ポールスターの効果のほどについては、「効いてるんだろうな、これ」というのが正直なところである。同じ条件でROMチューンありとなしの両方の仕様を比べたわけではないので……というのはイイワケ。逃げ口上。やってみて「全然違わないじゃん!!」なんてものならボルボも堂々と売ったりはしないでしょう。
ROMチューン物件であることは乗る前からわかっていたので、エンジンやATだけでなく乗る側=筆者の脳もチューンされていた可能性がゼロだとはいえない。いえないけれど、たしかにエンジン、山道お元気走行時にはツキがよかった。ミョーによかった、といってもいいぐらい。アクセルペダルのONないし踏み込みの操作に対する燃料の噴射のしかたが、ROMチューンなしの状態と比べてより“クい”気味になっている……ということなのか。
レスポンスのよさに寄与するディーゼルの構造的特徴
多くのガソリンエンジンの場合、アクセルペダルは直接的にはもっぱら吸気弁=スロットルの開き具合をコントロールするためのインターフェイスである。アクセルペダルを踏み込むとスロットルが開いて空気の流入量が増えて、その増えた吸気量に対して燃料の噴射量というか噴射率がアジャストされて……という過程を経て(ようやく?)トルクが増える。
対してディーゼルの場合、アクセルペダルは直接的に燃料噴射制御とつながっている。ガソリンエンジンでいうとスロットルは常に全開の状態で、空気は常にシリンダー内へドバドバ入っている。アクセルペダルが踏み込まれたら、ハイよとばかり、そこへもっと燃料を吹いてやるだけ……というのは説明としては乱暴だけれど、ディーゼル機関のレスポンスのよさに関してはそこがひとつのキモである。
細かいことをいうと、アクセルペダルの踏み込みを直接のトリガーとして燃料を吹きにいく制御をもやっているガソリンエンジンもなかにはある。典型的なところで、例えば「フォルクスワーゲン・ゴルフR」用の2リッターターボ。あれなんかは、いまのディーゼルエンジンのレスポンスの気持ちよさをかなりのところまでモノにしているガソリンエンジンだといってもそんなに間違いではないと思う。
乗り心地に不満はないが
で、今回のV60。ROMチューンとあともういっこ、これは後付けできるものではないけれど、R-DESIGNがついている。ついているというか、仕様としてR-DESIGNである。シャシー部分に関していうと、インチアップやグリップ指向がやや強めのタイヤ銘柄とセットのスポーツシャシー。ということで、乗り心地はフツーにカタい。そういうのが好きであえて選んで買う人のための仕様であるから、好きでない人は選ばなければいい。
好きで選んだ人であるなら、この乗り心地に文句をいったりはしない。少なくともその程度には快適である。あるいは、初めて乗って走りだした直後に「カタいな」と思って以上終わり&あとはなにも気にならず……なぐらいには。セダンとガチで比べたら少し不利かもしれないけれど、ワゴンのV60、クルマの骨格はガッチリしている。アシが少々カタいぐらいのことで乗り心地が途端に崩壊するようなヤワなものではない。
シャシー関係で気になるところがもしあるとしたら、カーブでのハンドル操作に対するクルマ側というかフロント側というかの反応がミョーにスルドいのがそれにあたるかもしれない。対策としては、ハンドルのきり始めからきり終わりまでのなかで、特にその前半部の操作を意識してゆっくりめにやってやるとスムーズに曲がれる。ハンドル操作を途中で止めたり、あるいは操舵(そうだ)速度がカクッと変わったりといったことなしに、きり終わりまでキレイにつなげていくことができる。クルマの向きの変わりかたをウオッチしつつ、きりこみはそれをリードするのではなくフォローするイメージで。もちろん、そんな気をつかうことなく思ったとおりハンドルをきってその結果スムーズにカーブを曲がれるのがベストであるに決まってはいるわけだけど。
ほかの仕様では表れなかった挙動
ちょっとソレっぽくいうと、ハンドルをきった直後、フロント外側のタイヤからミョーに強い“横蹴り”が入る。あるいは横蹴りを受ける。現行世代の「S60」やV60には何回も、個体数でいうと何台も乗ったことがあるけれど、この感じは今回が初めてだった。最新モデルイヤーのR-DESIGNのアシがそういうチューニングなりジオメトリー設定なりになっているからなのか、あるいはディーゼルエンジン+8段ATの重さ(とFFの組み合わせ)のせいで図らずもそういうことになってしまっているのか、それともディーゼル+8段ATのFFのステーションワゴンでもR-DESIGNならグイグイ曲がれるようにとの積極的な配慮なのか、いずれにせよ原因はわからない。わからないけれど、乗った感じほか全体がおよそ問題ナッシングなこのクルマのなかで、操舵に対する横蹴りの強さががぜん目立っていた……のは間違いない。ものすごくよく曲がってくれる感が演出されていてうれしいという人もなかにはいるかもしれないけれど、ノホホンと運転したい人にとってはこれ、加点要素とはちょっと、いいがたい。
総論的にいいクルマかそうでないかでいうと、V60はいい。同じく、新しいディーゼルエンジンも。もっというと、ボルボのクルマはたいがいいい。そのなかで、仕様によって多少の(?)凸凹があるのは、これは別にあっても不思議なことではない……ですよね?
(文=森 慶太/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ボルボV60 D4 R-DESIGN(ポールスター・パフォーマンス・パッケージ装着車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1680kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:200ps(147kW)/4000rpm
最大トルク:44.9kgm(440Nm)/1750-2250rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y/(後)235/40R18 95Y(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:20.2km/リッター(JC08モード)
価格:549万円/テスト車=611万円
オプション装備:電動ガラス・サンルーフ(17万7000円)/メタリックペイント(8万3000円)/パーク・アシスト・パイロット+パーク・アシスト・フロント(5万2000円)/プレミアムサウンド・オーディオシステム/マルチメディア(12万円)/ポールスター・パフォーマンス・パッケージ(18万8000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1万1371km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:521km
使用燃料:31.9リッター(軽油)
参考燃費:16.3km/リッター(満タン法)/16.2 km/リッター(車載燃費計計測値)
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森 慶太
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