プジョー208アリュール シエロパッケージ(FF/6AT)
乗ったら、ぜったい好きになる 2015.12.03 試乗記 大がかりなマイナーチェンジを受けた「プジョー208」に試乗。1.2リッター直3エンジンにターボが付いた「アリュール」は、町なかを流しても、山道を飛ばしても楽しいプレミアムコンパクトに仕上がっていた。1.2直3ターボ+トルコンATへ
プジョーのベストセラー、208が登場から3年半で大がかりなフェイスリフトを受けた。
一見してフロントグリル内のデザインが変わり、質感が向上した。これまでは失敗してベロ出しているみたいだったのが、今度は成功したと思う。文字通りのフェイスリフトである。
中身も大きく変わった。2015エンジン・オブ・ザ・イヤーに輝いた1.2リッターの3気筒ターボが搭載されたのだ。従来の1.2リッター3気筒を直噴に変え、ターボ化したもので、変速機も5段セミオートマからアイシン製の6段ATにアップグレードした。
このエンジンと変速機の組み合わせは「DS 3」にもこのほど搭載されたが、これで日本仕様のフツーの208はすべて3気筒エンジンになった。「206」のころから日本のプジョーはMT派にやさしいが、最廉価グレードの「208スタイル」(199万円)には、ポート噴射の自然吸気3気筒+5段MTモデルがこれまでどおり用意される。
今回試乗したのは、新型パワーユニットを積む上級グレード「アリュール シエロパッケージ」(256万円)である。
“車格”が半ランクくらい上がった
直噴ターボ化された新しい1.2リッター3気筒は110psの出力と20.9kgmのトルクを発生する。82ps、12.0kgmだった従来型からはとくにトルクの増大が顕著だ。
走り始めてまず感じたのは、クルマ全体の印象が大人っぽくなったことだった。“車格”が半ランクくらい上がったといってもいい。
最大トルクは1500rpmという低回転で出る。おかげで、1.2リッターなのにさして回転を上げなくても力強く走る。自然吸気版は3気筒特有の息遣いがあって、それが魅力でもあったのだが、新エンジンは音やビートが格段に小さくなった。
さらに車格アップ感を決定づけるのは新しい6段ATである。変速スピードも変速マナーもシングルクラッチ式ロボタイズドMTの域を出なかった旧型と比べると、さすがのトルコン式フルATである。
フルスロットルを踏むと、レッドゾーンの始まる6000rpmまできっちり引っ張る。静かになったとはいえ、トップエンドではかろやかな3気筒サウンドがかすかに漏れて、楽しい。
ただし、新しいエンジンと変速機の搭載で車重は正味70kg増え、パワーアップしたといっても110psだから、そんなにパワフルになった印象はない。町なかでの活発な走りからすると、高速道路で追い越しをかけた時にもう少しパンチがあってもいいかなと思った。ふだん使う実用域で力を出し尽くし、「上がない」感じは欧州製クリーンディーゼル的である。
流しても、飛ばしても楽しい
208のコックピットはタイトである。シエロパッケージには大きなガラスルーフが付くので、広々感は少し増すが、標準ルーフだと大柄なドライバーにとっては窮屈に感じられるかもしれない。
だが、このタイトなコックピットが208の美点だと思う。楕円形といっていいほど横方向につぶれたステアリングホイールは小さい。天地は33cmしかない。小径なだけでなく、操舵感もクイックだ。直進時の据わりはすごくいいが、きればスポーツカーのように反応する。
6段ATになって、パドルはなくなった。MTモードでのマニュアルシフトはフロアセレクターで行うが、これもドライバーの手元といってもいいすぐそばにある。運転操作の動線が短いから、クルマとの一体感が強く味わえるし、走っているとボディーサイズよりもっとコンパクトなクルマに感じる。
「地球の上にかるーく乗っかってまーす」的なフレンチコンパクトに特有の足まわりのかろやかさも、ノンターボMTの「スタイル」ほどではないが、健在だ。町なかを普通に流していても、ワインディングロードをハイペースで飛ばしていても、楽しいクルマである。
クルマはドイツ車だけじゃない
ステアリングホイールを小径の楕円形にして、メーターパネルを高めの位置に集中させ、ダッシュボード中央の高い位置に7インチの液晶タッチスクリーンを置いた208の運転席を、プジョーは“iコックピット”と呼んでいる。タッチスクリーンではカーナビやオーディオの操作ができ、燃費などの車両情報もとれる。
直噴3気筒ターボの新型208には、レーザーセンサーを使った「アクティブシティブレーキ」が付き、“ぶつからないクルマ”の仲間入りを果たした。効果を試すチャンスはなかったが。
今回、約250kmを走って、燃費は13.4km/リッターだった。1年前の夏に乗ったノンターボ1.2リッターのアリュールは12km/リッター台だったから、実走燃費もよくなったと感じた。
新しいパワーユニットを得た208は走って楽しいプレミアムBセグコンパクトである。日本では“爆発的人気”を博した206と比べると、その後、2で始まるコンパクトプジョーは地味な存在に甘んじている。だが、自動運転の靴音が日増しに高まる今日このごろ、新型208は運転好きにぜひ試してもらいたいクルマである。乗ったら、ぜったい好きになると思う。ドイツ車だけじゃないよと、あらためて声を大にして言いたい。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
プジョー208アリュール シエロパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3975×1740×1470mm
ホイールベース:2540mm
車重:1180kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:110ps(81kW)/5500rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/1500rpm
タイヤ:(前)195/55R16 87H/(後)195/55R16 87H(ミシュラン・エナジーセーバー)
燃費:18.2km/リッター(JC08モード)
価格:256万円/テスト車=280万2460円
オプション装備:メタリックペイント<リオハ・レッド>(4万8600円)/208専用SDカードメモリーナビゲーション(18万3600円)/ETC(1万260円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1400km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:246.9km
使用燃料:18.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.4km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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