40.8km/リッターの新型トヨタ・プリウス発売
2015.12.09 自動車ニュース![]() |
トヨタのハイブリッドカー「プリウス」がフルモデルチェンジ
トヨタ自動車は2015年12月9日、4代目となる新型「プリウス」を発表。同日に販売を開始した。
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■燃費はついに40.8km/リッター
1997年に世界初の量産型ハイブリッドカーとして初代が登場してから18年、プリウスは4代目となった。事前に燃費の開発目標値として40.0km/リッターという数字(JC08モード値。以下同じ)が掲げられていたが、市販型ではそれを上回る40.8km/リッターを実現している。
新型の開発コンセプトは「Beautiful Hybrid(美しい地球・美しいクルマ)」。燃費性能に加えて「走りの楽しさ・乗り心地のよさ・静かさ」といった基本性能を向上させ、「低重心スタイル」でカッコよさを際立たせたという。
エンジンは3代目と同じ1.8リッター直列4気筒のアトキンソンサイクルエンジン「2ZR-FXE」(最高出力:98ps/5200rpm、最大トルク:14.5kgm/3600rpm)を採用しているが、吸気ポートやピストンの形状を改良して、先代を1.5ポイント上回る最大熱効率40%を実現。大容量のクールドEGR(排ガス再循環)の導入やエンジン冷却水流量切り替えバルブの追加なども、燃費向上に貢献している。
ハイブリッドシステムのTHS-IIも大幅に進化。モーター(72ps、16.6kgm)は複軸配置になり、リダクションギアは従来の遊星歯車から平行軸歯車に変更された。コンパクト化を図るとともに、約20%の損失低減を果たしている。バッテリーはニッケル水素電池に加えてリチウムイオン電池を新採用。グレードによって使い分ける。いずれも小型・軽量化してリアシート下に搭載し、ラゲッジスペースを446リッターから502リッターに拡大した。
ハイブリッドシステムの高効率化によって、プリウスのDNAである燃費性能が大幅に向上した。ベーシックグレードで世界トップレベルの40.8km/リッター、その他のFFモデルでも37.2km/リッターの低燃費を実現した。全グレードで「平成32年度燃費基準+20%」を達成し、「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」の認定を受け、エコカー減税の対象となっている。
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■TNGA採用で走行性能と乗り心地が向上
さらに今回の4代目は、プリウスとして初めて4WDを採用した。リアにインバーターとトランスアクスル&リアモーター(7.2ps、5.6kgm)を追加したE-Four(電気式四輪駆動方式)で、走行状態を常に監視して必要な場面で後輪に駆動力を与える。雪道などの滑りやすい路面でも、安定した走行が可能だという。4WDモデルの燃費は34.0km/リッター。
新型プリウスはトヨタが推進する次世代車両技術のToyota New Global Architecture(TNGA)を採用する第1号車となった。トヨタの掲げる「もっといいクルマづくり」の基盤となるプラットフォーム&パワートレイン戦略で、このモデルがこれから10年後、20年後のトヨタ車の姿を占うことになる。
TNGAの考え方に基づいた環状構造の骨格を採用し、ボディーのねじり剛性は約60%向上。レーザースクリューウェルディングや構造用ボディー接着剤を採用することで接合剛性を上げ、安定した走りや上質な乗り心地を実現したという。980Mpa以上の超高張力鋼板の採用率を3%から19%に拡大し、強度を保ちながら軽量化も図った。
全高を20mm下げるとともにパワートレインユニットの搭載位置も10mm低めるなどして、低重心化。ルーフピークを170mm前に出しながら、従来通りの室内空間を確保した。前席のヒップポイントは59mm下げられ、スポーティーなドライビングポジションをとれるようになった。ステアリングホイールやペダル類の配置も最適化されている。
大きく変わったのはリアサスペンションである。歴代プリウスのトーションビーム式からダブルウィッシュボーン式に変更された。高い走行性能と優れた乗り心地の両立を図っている。低重心化による安定性の向上と合わせ、気持ちのよいコーナリングが可能になったという。
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■優しい造形と未来感がデザインコンセプト
そんな4代目プリウスのボディーサイズは全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm(FF車の値)。3代目に比べ60mm長く、15mm幅広く、20mm背が低い。ホイールベースは変わらず、2700mmのままである。
2代目から採用されたトライアングルシルエットは継承されたが、エクステリアデザインはアグレッシブさを増した。フロントはキーンルックを発展させ、ヘッドランプとフォグランプを流れるような線で結んでエモーショナルな造形を試みたという。センターに構えるトヨタマークは、さらに強調されるようになった。
リアにかけて低いラインを通すことで低い構えを強調。走りのよさをビジュアルでも印象づける造形だ。Cピラーをブラックアウトし、ルーフ後端が浮き上がっているように見せることで風の流れをイメージさせている。フロントタイヤの前やリアクオーターに平面を設けて空気の流れを整え、実際に空力性能が向上した。Cd値は0.24を達成した。
リアコンビネーションランプには大胆な造形を採用した。スポイラーからバンパーサイド下端へと流れる線をつなぎ、特に夜間にはひと目でプリウスとわかる印象的なラインを見せる。リアスポイラーは従来より55mm下げられており、安定感が演出されている。
今回のデザインコンセプトは「アイコニックヒューマンテック」。優しい造形と未来感を併せ持つ、記憶に残る形を目指したという。未来感を優先したエクステリアに対し、インテリアは人に寄り添う機能と上質さをテーマにした。伝統のセンターメーターは健在で、左右対称のインストゥルメントパネルがプリウスらしさを醸し出す。「表示系は遠方に、操作系は手元に」という従来の考え方も受け継がれている。
変わったのはセンターコンソールの造形で、こんもりと盛り上がっていた従来のものから一転して低く設(しつら)えられた。エンジンフード後端が62mm下げられて前方視界が開けたこともあり、開放感が大きい。新たに採用された硬質な感触のホワイト加飾は、トリムやパネルに使われている温かみのある素材と対比的で、「ヒューマンテック」のコンセプトを体現している。
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■温度上昇を抑えるボディーカラーを採用
ボディーカラーにも新しい試みが採用された。新色のサーモテクトライムグリーンは、塗料にチタンを配合することで赤外線を反射、車体表面の温度上昇を抑える機能を持つ。イメージカラーとされる新色のエモーショナルレッドも、層を重ねるなどして得られた“にごりのない色鮮やかさ”で、ビビッドな走りを表現している。
先進装備も充実しており、衝突回避支援パッケージの「Toyota Safety Sense P」は、全グレードに標準またはオプションとして用意される。ミリ波レーダーと単眼カメラを用いることにより、プリクラッシュセーフティーシステムは車両以外に歩行者も検知可能。レーンデパーチャーアラート、レーダークルーズコントロール、オートマチックハイビームもセットとなっている。隣の車線を走る車両を検知してドアミラーのLEDインジケーターで知らせるブラインドスポットモニターも、一部グレードを除き標準で備わる。
専用周波数で路車間通信と車車間通信を行う運転支援システム「ITS Connect」にも対応している。見通しの悪い交差点でドライバーに注意を喚起したり、緊急車両の存在を知らせたりして、安全運転を支援するシステムである。
グレードは40.8km/リッターの燃費を実現した「E」、基本装備を充実させた「S」、「Toyota Safety Sense P」などの先進デバイスを装備する「A」、「A」に本革シートなどの上級装備を加えた「Aプレミアム」が用意される。S、A、Aプレミアムには、215/45R17のタイヤ&ホイールなどを装備する“ツーリングセレクション”が設定される。
価格帯は、FF車が242万9018円から319万9745円までで、4WD車が267万3491円から339万4145円まで。
月間の目標販売台数は1万2000台で、堤工場と高岡工場で生産される。
(文=鈴木真人/写真=webCG)