アウディQ3 2.0 TFSIクワトロ(4WD/7AT)【海外試乗記】
初めてでも安心 2011.11.14 試乗記 アウディQ3 2.0 TFSIクワトロアウディのSUVラインに、最もコンパクトな「Q3」が登場。その走りっぷりや乗り心地を、中国での試乗会からリポートする。
カジュアルなSUV
アウディの最新作である「Q3」は、最もコンパクトなSUV。2011年4月に上海で開催されたオートショーで発表されたモデルだ。そのQ3の、世界規模での一大試乗会が、「トランス・チャイナ・ツアー」の名の下に開催された。
「アウディQ3」は、日本でも人気のSUV「Q5」の下に位置するモデルで、Q5がエンジン縦置きレイアウトであるのに対し、横置きであるのが最大の違いである。日本仕様のQ5と比較すると、全長は250mm短い4385mm、全幅は69mm狭い1831mm、そして全高が70mm低い1590mmとなる。
ハッチゲートはより寝かされ、「クーペのようなキャラクター」(アウディ)が与えられている。SUVというよりハッチバックのようなイメージ、ともいえる。軽快感、あるいはパーソナル感が強く、Q5が実用性や機能性を重視するのに対して、よりカジュアルな乗り方を提案しているようにも感じられる。
日本への導入は「2012年中ごろ」という。パワートレインはラインナップ中最もパワフルな211psの2リッター4気筒ターボに、フルタイム4WDシステムの「クワトロ」が組み合わされるもよう。変速機は7段の「Sトロニック」となる予定だ。
周りからは熱いまなざし
「Q7」ではアメリカ、Q5ではオーストラリアと、ニューモデルが登場するたびに各地を旅するのが、アウディQモデル独自の試乗プログラムだった。Q3のツアーは中国。「穿越中国之旅」と中国語のタイトルもつけられた。
欧州のプレミアムブランドとしてはどこよりも早く、1988年から中国に足場を築いたアウディがオフィスをかまえる北京を振り出しに、上海や広州など中国の主要都市を経て、香港まで南下するというのが今回のルートだ。総走行距離5700km。これを4つのパートに分け、世界中から呼んだジャーナリストたちにステアリングを握らせた。
日本から参加した僕たちは、深センから広州などを経由して桂林まで走った。「Q3はスポーティーで、あらゆる道に対応する旅の伴侶にもなります」とは、今回のツアーに際しての、アウディのルーパート・シュタッドラー社長のメッセージだ。試乗を開始する事前のブリーフィングでも、中国の道は路面が荒れているところが多い、標識は見にくい、現地の人の運転は予想がつかない、地元警察は怖い……などの諸注意が、ドイツ人スタッフから与えられた。
中国におけるアウディは長春の工場で「A6L」「A4L」「Q5」といったモデルの生産を行っており、中国人にとっては比較的なじみのあるブランドだ。それだけに、サモアオレンジというコミュニケ−ションカラー車体の上に、「穿越中国之旅」と大きく書かれたQ3の群れは、どこでも注目を集めたようだ。とりわけ高級車に乗るドライバーから、しげしげと眺められることが多かった。
ワケあって2リッター
僕が乗ったのは、ステアリング位置を除けば、ほぼ日本仕様に準じるモデル。やや高めの着座位置と、入念に作られた内装は、Q5に近い。アウディならではの高品質感がある。スタートは、センターコンソールに設けられたプッシュボタンで。ギアをDレンジに入れて、アクセルペダルを踏みこむと、出足は意外なほど軽快だ。さらに強く踏みこむと、小気味よい瞬発力を見せる。
Q3のステアリングは、電動のパワーアシストを持つ。サスペンションの設定を含めシャシーの反応は素直で、中立付近でもダイレクト感がちゃんとあるのが好ましい。適度なスポーティーさが気持ちよく、また同時に、クルマが完全に自分のコントロール下にあるという感覚が、初めて運転しても安心感を与えてくれる。中国の路上でもそれをすぐに感じた。
車体は高価な超高張力鋼板を多用し、車重は約1.5トンに収まっている。そのおかげもあって、軽々と車体が動く印象が強い。Q5を引き合いに出せば、あちらには2リッターの上に3.2リッターバージョンが設定されているが、Q3は2リッターターボエンジンで力不足を感じる場面はおそらくないと思われる。ギアチェンジはステアリングに設けられたパドルスイッチでも行え、反応速度は速い。燃費のことを考えてシフトアップは積極的に行われるが、屈曲路などでは素早くシフトダウンして最適のギアを選ぶことが容易だ。
いまは小さなエンジンに過給する、いわゆるダウンサイジングコンセプトがはやりだが、Q3は2リッター。より小さな排気量のエンジンを搭載する計画はなかったのか。それについてドイツのアウディ本社から来たエンジニアに確認した。
「エンジンと車体の関係はバランスが重要。この大きさのモデルには2リッターが最適。1.4リッターなどではエンジンに負担がかかりすぎて燃費も悪化する傾向が出てしまいます」(車両開発担当のアレクサンダー・リーデル氏)
車内への透過音は低く抑えられており、日本の法定速度では静かだと感じられるだろう。中国の3車線のハイウエーでは最高速度が120km/h。それを少々上回っても、音に疲れることは一切なかった。
サスペンションの設定は全体的にはよくしつけられている。つまり路面の状況にかかわらず、総じて乗員は快適だ。試乗車は、16インチの「ピレリ・スコルピオ」というやや硬めのタイヤを装着したうえ、荒れた路面も多い中国の事情に合わせて空気圧がやや高めだったのか、少しゴツゴツ感があった。ここは日本仕様がどうなるか、楽しみにしたい。
燃費対策も抜かりなし
アウディQ3は一見したところ、Q5と似ている。並べてみると、ラップアラウンドタイプのリアゲートなど、ファミリーの近似性を感じさせるところが多い。しかし、新世代のデザインを与えられたフロントグリル、大きく寝かされたリアゲートなど、このクルマならではの特徴がある。冒頭でも触れたように、市街地での普段使いにはぴったりのサイズだと思う。それでいて室内は、175cm超の人間が4人乗れ、荷室には大きなスーツケースがすっぽり2つ収まる。
アウディでは、「インフォテイメント」と呼ぶナビゲーションやオーディオなどを組み合わせたマルチインフォメーションシステムの開発に力を入れている。中国での試乗も、田園地帯を抜けていく行程がきちんとフォローされていて、道に迷う不安感は一切なし。感心した。アウディミュージックインターフェース(AMI)を使えば、iPhoneやiPodを直接つなげることも可能。僕たちは、1台のiPodとつなげて、品質の高いオーディオシステムで音楽を楽しみながら走ることもできた。
燃費の面では、ギアの多段(7段)化に加え、いくつもの機構が採用されている。信号待ちのときなどエンジンを停止させる「スタート&ストップ・システム」、走行中にアクセルペダルから足を離すとクラッチが切れて、エンジンとトランスミッションとの間の動力が切り離される「コースティングモード」、ブレーキをかけると電力が発生してそれを蓄電する「エネルギー回生システム」といった具合だ。そのおかげで、SUVの中では経済性も高そうだ。
中国での800km超のドライブはまったく疲労感なしに終えることができた。「高速道路は高いので」(中国人スタッフ)、特に都会を離れると利用者が少なく、3車線の道を自分が独占しているような気分にすらなる。
箱根に行くようなつもりで桂林を走る――それがいいことか悪いことか、わからない部分はあるが、操作性から快適性にいたるまで高いレベルに達したQ3のおかげで、違和感のようなものは一切感じず。中国のさまざまな道を走った後で思ったのは、クオリティーとはいい意味で物事を均質化する手段だということだ。それを成し遂げるのは容易ではない。それゆえ、Q3に、アウディに、ともに感心させられた。
(文=小川フミオ/写真=アウディジャパン)

小川 フミオ
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