第25回:ラーメンやめてカレーを食うべし!!
チーム日本の大バトル! デリーオートエキスポ2016に突撃(後編)
2016.02.20
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
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やっぱりデリーは熱かった!? インドで開催された自動車ショー「デリーオートエキスポ2016」の会場から、各自動車メーカーの戦略をリポート。そもそも、なぜ今インドがここまで注目を集めているのか? その市場のポテンシャルと、数字には表れない大きな魅力を紹介する。
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いよいよ本気になったドイツの巨人
(前編からの続き)
続いて「デリーオートエキスポ2016」に見る欧米およびアジア勢の動向だけど、目立ったのは現在乗用車販売で第2位のヒュンダイ。まずはインド専用車ではなくグローバルSUVの新型「ツーソン」を発表した。日本じゃなじみはないが、本国では燃料電池バージョンも出ているほどの人気モデルで、この世代で3代目となる。見た目のクオリティーはもちろん、インテリアも立派。ガソリンエンジンに加えてディーゼルも選ぶことができる。インドでは高価格帯に属し、大量に売れるクラスじゃないだろうが、見事にヒュンダイのブランドイメージを上げてくれるかもしれない。
それと昔の「日産キューブ」や「トヨタbB」をSUV化したようなコンセプトカーが「HND-14カルリーノ」。
それから小沢的にかな〜り気になったのがフォルクスワーゲン(以下VW)の「アメオ」。ヨーロッパの巨人、VWもついに感情むき出しで一番の激戦区となっている全長4m以下のセダン市場に商品をぶつけてきた! って感じ。エンジンはガソリンが1.2リッター直3、ディーゼルが1.5リッター直4ターボと、まさしくこのクラスのライバルとガチンコ勝負なのがいい。
なにより面白いのは質感の高さ。見た目品質、インテリア品質共に高く、ショーで見た限りぶっちゃけライバル車をしのぐ。精度の高さはピカイチだ。装備も充実していて、セグメントで初めてクルーズコントロールが設定されたり、全車デュアルエアバッグやABSが標準装備されたりしている。価格はマルチ・スズキや地元インドのタタより高めになるだろうが、果たしてインドでVW流の質感勝負がどこまで通じるかはマジで見もの。価格設定も難しいでしょうねぇ。
やっぱり強いスズキとヒュンダイ
というわけで、各社出そろってきた“インド国民車バトル”だけど、果たして勝敗を分けるポイントはなんなのか? とある日本メーカーのエンジニアは言う。
「今や新興国とはいえ安さが見えちゃうとツラいんです。1980年代ならいざ知らず、今はネットでいくらでも他のクルマのレベルがわかっちゃいますから」とズバリ。
いまや新興国とはいえ、安かろう悪かろうでは通用しないってことだ。デザインやパッケージングはもちろん、一番重要なのは質感。そして、インドでそれをかなえるためには、従来の系列サプライヤーではなく、付き合いの浅い現地サプライヤーを使って価格を下げつつ、ホンダらしさや日産らしさをキープしなきゃイケないワケだけど、メーカーによってそこがうまくいったりイマイチだったりしているようなのだ。
「やはりスズキさんは強い。もともと軽で培った、安くていいものを作る技術がある上、既にインドで30年以上やってきた蓄積とブランドイメージがありますから。ホンダさんはよく頑張っていますよ」(現地サプライヤー)。
要するに、いかにインド人の気質をつかみ、現地の物作りノウハウを使いこなせるかなのだ。もっとも、これが「言うはやすく行うは難し」だとは小沢も分かっているんですけどね。
というのも、トヨタはインドネシアやタイで大成功しているし、日産もブラジルでシェアを確保している。安くていいもの作ることに関しては、それぞれ独自のノウハウやルートを既に持っているのだ。しかし、ところ違えば勝手が違うとはよく言ったもんで、それを簡単にインドでも再現! ってなわけにはいかないのである。
このあたり、見事なのがマルチ・スズキ・インディア(以下、マルチ・スズキ)に次ぐシェア第2位のヒュンダイだ。台数を伸ばしているだけでなく、コンパクトカーの「グランドi10」「i20エリート」、SUVの「クレタ」と3年連続でインド・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。小沢がショーで見た限りでも、デザインのよさと品質の高さが光っており、ついでに値段もスズキ並みに安いらしい。
つくづく、日本に入っていないとはいえ、ヒュンダイのデザイン力とコスト競争力をなめちゃアカン! と実感した次第ですわ。
本質は“反日のない中国”?
ところで、なぜそもそも今インドなのか? 気になるのは市場のポテンシャルと体質だ。
現地に詳しいマルチ・スズキの副社長、蓮池利昭氏いわく「(インドでの自動車の)販売台数は、多い人だと『年間2000万台までいく!』とも言いますから。もっとも30年後か、40年後の話かはわかりませんが(笑)」とのこと。さらに「インドは世界最大の民主主義国といわれていて、政府主導の計画経済ではないんです」とも。
つまりインドは、リスクの少ない中国というか、世界基準の自由主義で動いている超大国なわけで、その分、歩みは遅いけど、日本企業がマトモに勝負するに足る国といえる。特に“反日”で思うようにいかなかったトヨタなどからすると、夢のようなマーケットなんではあるまいか。
もちろん、今はインドでも「2020年問題」「2023年問題」などと言われて大気汚染とそれに伴う排ガス規制強化がささやかれているし、いますぐ体勢を立て直し、大攻勢をかけるのも難しいもよう。だが、トヨタをはじめ、日産やおそらくマツダも、インド市場の伸びをボーッと眺めていられるわけがない。新聞報道ではトヨタが完全子会社化したダイハツの力を借りて新しいコンパクトカーを作ろうとしているとか、スズキとの提携の話まで出ちゃっているが、それだってインド戦略と無関係であるはずがない。
なにより、インドは既にスズキ車が出回っていることからも、日本的な物作りに対しリスペクトを抱いている上、日本そのものにアレルギーがないことが完璧に証明されている。実際、日本式の新幹線の導入まで決まっているわけだからして。
よってほかの日本ブランドも頑張れば絶対に認められるわけで、まさにここで頑張らずしていつどこで頑張るの? 状態。だからこそ不躾(ぶしつけ)小沢は今回「同胞日本人よ、今はラーメンを食べている場合ではない。時代はインドであり、アチラの体質に慣れるためにも毎日カレーを食べて鍛えるべし!」って言っているわけですよ。この気持ち、分かっていただけましたよね?(笑)
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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