第337回:多彩な4WDモデルにイッキ乗り!
三菱の四駆を特設雪上コースで試す
2016.03.06
エディターから一言
拡大 |
カジュアルなSUVから本格クロカンまで、さまざまな四駆モデルを取りそろえる三菱。モデル数が多いだけでなく、車種に応じて複数の4WD機構を使い分けるという気合の入れようだ。そんな“四駆に本気”の三菱のラインナップに、雪上コースでイッキ乗りした。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「四駆」ではなく「四輪制御」
「うわぁ、こんなに曲がってくれちゃうんだ」
四駆といえば直線番長的なイメージをお持ちの方も、まだまだいらっしゃるかもしれませんが、イマドキの四駆は曲がるんです! これをわかりやすく体験するために、選ばれたステージはすなわち雪道。雪を目にすると「やっぱり四駆でしょ! 走破性は高いし、安定性は高いし、やっぱり四駆が安心よね」という気持ちに自然になりますよね。
四駆とひと口に言ってもいろいろなタイプがありますが、「パジェロ」や「デリカ」を有する三菱は、やっぱり本格四駆のイメージが強いメーカー。というわけで、今回は特設雪上コースを三菱の四駆で駆け回ってまいりました。
“三菱の四駆”を不動の地位に押し上げたのは、やっぱりパジェロでしょう。1982年に登場したころはまだ、このジャンルのクルマは「RV」などと呼ばれていましたね。パジェロはジープから本格的な四駆の技術を受け継ぎつつ、普段使いもできるということで大ヒットしました。しかも、その技術を引っ提げてダカールラリーにも参戦し、7連覇を含む通算12勝という素晴らしい戦績を残しています。
そして今では、4WDシステムは「四駆」というより「四輪制御」ともいうべきものに進化を遂げています。かつての四駆は「イコール駆動力」といった感じでしたが、今の四駆は「走る」「曲がる」「止まる」の基本性能を、高い安定性とともに実現するもの。そんなわけで、三菱では自社の駆動制御技術について、まとめて「AWC(オールホイールコントロール)」と呼んでいます。
今回の試乗の舞台となった特設雪上コースには、そんなAWC技術が用いられた三菱車の中から、パジェロ、デリカD:5、「アウトランダー」、「アウトランダーPHEV」、そして日本では販売されていない「トライトン」と「パジェロスポーツ」の試乗車が用意されていました。
オフにすることで感じる電子デバイスの恩恵
まず私がハンドルを握ったのはパジェロ。4世代目にあたる現行型は、残念ながら全盛期のころほど街中で見かけることは少なくなりました。とはいえ2WD、4WD、直結4WD(センターデフロック)、ローレンジでの直結4WDという、4つの走行モードを持つ「スーパーセレクト4WD-II」は今でも第一級の実力の持ち主。高いオフロード走破性能とオンロードでの快適性をバランスさせています。
実際に運転してみると、「ゴゴゴー」っと雪をのしていく感じではなく、スルスルと走りだすことができたことにまずビックリ。高性能なレーシングカーほど運転しやすいって言いますが、ダカールでも優秀な成績を残しているパジェロのこと、まずドライバーにとって操りやすく、長距離を快適に乗れなければお話にならないということなのでしょう。
今回の試乗では、そのスーパーセレクト4WD-IIをわざとオフにしてみたり、横滑り防止装置を切ってみたり、センターデフをロックしてみたりと、さまざまなことを試してみました。その結果「トラクションコントロールと横滑り防止装置って本当にありがたいんだなあ」ということがあらためてよくわかりました。雪道って刻々と路面状況が変わるので、その変化を先読みして微妙なコントロールをするというのは、本当に大変なことなんですよね。それを瞬時にやってくれる電子デバイスを組み合わせた四輪駆動車のありがたさを、心底実感した次第です。
しかし、パジェロといえばやはり絶対的な悪路走破性能の高さ! センターデフロックの走行モードでは、そんなシーンを思い浮かべながら走ってみました。やや曲がりにくくはなるものの、とにかく前へ進もうとする力が増していますし、自分でいろいろ考えて走れる余地もしっかり確保されています。ラフロードでの走りを楽しみたい方には打ってつけ。なんだか「私もパリダカにトライしてみようかな」と、そんな夢まで見せてくれる一台でした。
大事なのは操作したとおりにクルマが動くこと
次に乗り込んだのは、デリカD:5。駆動システムは前輪駆動ベースの電子制御4WDで、通常は前輪での走行を基本としながら、必要な時に後輪へ駆動力を伝達するタイプです。言葉にするとなんだか平凡な感じですが、実際に乗ってみると「こんなにコントロール性の高いミニバンはほかにはない!」というのが一番の印象でした。
ミニバンは全長が長いので、こういったコースで元気に走らせると、どうしてもボディーがたわんだりよじれたりしてしまいがち。しかしデリカD:5は肋骨(ろっこつ)のような「リブボーンフレーム」のおかげで車体がガッシリしており、ハンドルを切ったら切った分だけ、しっかりついてきてくれるんですよね。雪の上では普段よりも繊細なドライビングが要求されるからこそ、「自分の思った通りにクルマが動く」という性能が非常に大切になります。大勢でスキーに行く、なんていうシーンでぜひ選びたいクルマですね。
もちろん4WDシステムの出来栄えも上々。駆動力の配分もごく自然な感じで、ドライバーに違和感を与えません。試乗日は天気がとてもよくて、どんどん雪が解けて滑りやすいシャーベット路面になっていくというシチュエーションだったのですが、そんな中でも終始安心して走れました。
まあ、そもそもデリカは先代アウトランダーをベースにしたクルマですから、今回の特設コースのようにフラットに整えられた道はもちろん、降雪地域で厄介な“わだち路面”などでも他のミニバンとは別次元の走破性能を披露してくれます。また今回は試せなかったのですが、大きなアプローチアングル、ディパーチャーアングル、ランプブレークオーバーアングルに加えて最低地上高も高いから、普通のクルマではおなかがつっかえてしまいそうなところも、余裕で走破できることを付け加えておきましょう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
軽快感とバランスのよさが身上
続いての試乗車はアウトランダーのガソリン車。こちらにはフロント左右輪の駆動力配分をコントロールするなど、より高度な車両運動統合制御システムの「S-AWC」がオプションで用意されています。FF車ベースの四輪駆動車なので、パジェロと比べると“シティー派”のイメージが強いSUVではありますが、こういった路面でもラクラク走れてしまうところが、さすが三菱の四駆という感じです。
むしろパジェロよりも軽快に走れるため、“普段使い+α”という感じで使うのなら、こちらの方が気軽でいいかもしれないですね。適度かつ十分なパワーとコントロール性のよさに加え、悪路走破性もしっかりと保たれているので、雪の上では非常にバランスの取れた一台と言っていいと思います。どうしても“PHEV”の方に目が奪われがちですが、軽さというのもクルマの大切な性能のひとつ。軽快なSUVが欲しいという方にピッタリなモデルとしてオススメしたいですね。
そして、注目のアウトランダーPHEV。こちらには「ツインモーター4WD」という駆動システムが採用されています。パワーユニットが発生する駆動力をプロペラシャフトで伝達するのではなく、前輪用と後輪用に個別のモーターを持つことで四輪駆動を成立させているんですね(状況に応じて、前輪にはエンジンの駆動力も伝達されます)。そのモーター技術には、電気自動車「i-MiEV」のそれを応用しているというのが、また面白いところ。いい技術があると、軽自動車だろうがSUVだろうが応用が利く。新時代のクルマの作り方だと思います。
PHEVならではの運動性能を体感
駆動用バッテリーを搭載している分重いので、雪道ではどうかな? と思っていたのですが、これがビックリ。この重さが安定感として効いてくるんですよ。「しっかり、どっしりと大地を踏みしめて走ってくれているな」という感じで安心感が高く、オマケに乗り心地もいいんですよね。しかも、制動には回生ブレーキと摩擦ブレーキの両方が使われるので、重さからくる止まりにくさまで上手にカバーされています。さらに、2つのモーターにより変幻自在の駆動力制御ができるということもあり、コーナーでは「こんなに曲がってくれるんだ!」と感動するほど、きちんと曲がってくれます。イメージ的には、アウトランダーのガソリンモデルよりもさらに“もうひと声”曲がるイメージ。これにはちょっと驚かされました。
最後は、海外で販売されるパジェロスポーツとトライトン。これがまたなかなか面白くていい感じでした。パジェロスポーツはスポーツという名前が付いているだけあって予想以上に軽快だし、トライトンはホイールベースの長さが効いて、意外と落ち着き感がありました。
さて、こうしてあらためて並べみると、豊富に取りそろえられた四駆モデルは、まさに「雪道最強の三菱四駆軍団!」という感じですね。ただ、普段使いとなると気になるのが燃費です。実は、最近は四駆の燃費ってさほど悪くないんですよ。例えば三菱の「RVR」で比較すると、FF車に対して4WD車の燃費悪化率は2.4%にしかならないのだとか。正直、ドライバーの乗り方次第で十分変わってしまう数値です。
イマドキのクルマはみんなエコカーと言っても過言ではありませんから、「マイカーには夏のゲリラ豪雨に備えて四駆をチョイス」なんていうクルマの選び方も、これからはアリかもしれませんね。
(文=竹岡 圭/写真=三菱自動車、webCG)

竹岡 圭
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。





























