MINIクーパーS コンバーチブル(FF/6AT)
MINIも“最新が最良” 2016.03.15 試乗記 個性的なスタイリングはそのままに、「MINIコンバーチブル」が3世代目にフルモデルチェンジ。最新のアーキテクチャーが採用された新型の走りやいかに? 上級グレード「クーパーS」の試乗を通して、その実力を確かめた。受け継いだところ、変わったところ
MINIのグローバル年間販売台数は今や軽く30万台以上と、ひと昔前ならボルボやランドローバーあたりと同規模に扱われるほどに成長している。「小さいけど高いクルマ」というプロファイルだけをみれば、客数は相当に限られそうなだけに、主にデザインからなるMINIのブランド力にあらためて驚かされる次第だ。
現在、MINIはその6つのボディーバリエーションのうち「3ドア」「5ドア」「クラブマン」の3つが、3世代目となる最新のアーキテクチャーを採用している。それに続いて今回完全刷新されたのが、このコンバーチブルというわけだ。
新しいコンバーチブルは例によって3ドアがベースとなっており、車寸も取り立てるほどの差異はない。すなわち、先代に対してはひと回り大きな全長・全幅を利して、室内の前後席間距離やトランク式のラゲッジスペースに体感できるほどの拡大をみている。スタイリングについては、ベルトラインに仕込まれたハイマウントストップランプからして位置が微動だにしないほど、徹底的にキープコンセプトが貫かれるが、後席のアクティブ・ロールオーバープロテクションが小型化されたことによりリアまわりがすっきりした印象になるなど、こちらも代々のユーザーであればすぐに感じ取れる違いが盛り込まれていた。
ちなみに、屋根には先代と同じく4層式のホロが採用されており、完全自動での開閉時間は18秒以内。30km/h以内であれば走行中の操作も可能で、ルーフ部のみをキャンバストップのようにスライド開閉できる機能も継承されている。そのホロ屋根の上部は、オプションでその全面をヘリンボーン織りのユニオンジャック柄とすることも可能だ。見る角度によって印象を違えるなどシックな仕上がりのそれは、日本では18インチホイールやレザーシートなども含めたセットオプションとしてクーパーS用に設定された。
エンジンは刺激よりも扱いやすさが身上
MINIコンバーチブルに搭載されるエンジンは136psを発生する1.5リッター3気筒直噴ターボと、192psを発生する2リッター4気筒直噴ターボの2種類で、前者が「クーパー」、後者がクーパーSとなる。さらに2リッター4気筒直噴ターボを231psまでパワーアップさせ、足まわりや電子制御系もスポーツ走行向けに最適化した「ジョンクーパーワークス」を合わせると、日本で展開されるバリエーションは当面3つということになるわけだ。
そのうち、試乗に供されたのはちょっと野太いエキゾーストノートを響かせるクーパーS。とはいえ、最近はスポーティネスを過剰に演出したモデルも多いから、MINIのそれはキャラクターに似合わずちょっと控えめな印象を受ける。“はじけキャラ”としてジョンクーパーワークスが用意される以上、カタログモデルはそこまで攻める必要もないということだろうか。思えば、MINIもBMWが手がけ始めてから15年の月日が流れたわけで、キャラ弁みたいなものだと思われていた当初から比べれば、あらゆる意味でオーセンティックな存在となっている。
2リッターターボのパワートレインは、それ自身に過激なチューニングがなされているわけではないから、3ドアより若干重いコンバーチブルのボディーと合わせても、発進から実に扱いやすい。特にオープンカーにとっては低回転域での粘り強さが巡航時のゆとりにも大きく関係してくるわけで、個人的には車格に対してトントンよりも少し大きめのエンジンを選ぶのが向いていると思っている。そういう意味では、MINIコンバーチブルにおけるクーパーSという選択肢は、スポーツというより余剰やぜいたくの面でクローズアップされてもいいものなのかもしれない。
欲しいと思ったときが買いどき
いくら車格がアップしたとはいえ、基本的には小さく軽いボディーである。クーパーSの走りはすこぶる軽快だ。踏めば応えるシャシーのポテンシャルは他のモデルでも確認済みだが、車体がコンバーチブルになったところでその剛性感に不満はない。フロアまわりを中心に補強はしっかり加えられているものの、先代に対して30kg程度の重量増に抑えられたこともあって、持ち前のゴーカートフィールに鈍りはなく、コーナーでは操舵(そうだ)の初期からぐんとゲインを高めてスパッとアペックスを切り取ってくれる。一方で、乗り心地の側にも剛性向上はプラスに作用しており、一般路での路面に対するアタリはやや硬めながら、フロア振動やスカットルシェイクなどの不快要素は先代に対して確実に低く抑えられているようだ。
人によっては「初代の、ロールを抑えまくったすばしこい曲がり感が良かった」とか、「2代目の、オーバーハングがパツパツに詰められたスタイリングが気に入っていた」とか、さまざまな思いはあるかもしれない。が、デザインと走りにおける個性を大きく曲げることなく、年次ごとに慎重かつ順当な進化を重ねてきたMINIをみていると、もはやこれは性能の優劣うんぬんではなく、欲しい時にあるそれを買うべきクルマなのかなという気がしてくる。3代続けば末代続くとは言わないにせよ、それほど同じことをやって支持を集め続けるのは大変なことだと思う。あるいは、末代まで続きそうなプロダクトを表する有名な言葉を借りれば、最新のMINIは最良のMINI、ということになるだろうか。新しいMINIコンバーチブルに乗ってみて、しみじみ、それを実感させられた。
(文=渡辺敏史/写真=BMW)
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テスト車のデータ
MINIクーパーS コンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3860×1725×1415mm
ホイールベース:2495mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:192ps(141kW)/5000-6000rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1250-4600rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88Y/(後)205/45R17 88Y(ピレリPゼロ)
燃費:16.3km/リッター(JC08モード)
価格:397万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は日本仕様のもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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