ボルボS60 T3 SE(FF/6AT)/XC60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/8AT)
軽さが身上 2016.03.23 試乗記 ボルボの60シリーズに新しいDrive-E(ドライブ・イー)エンジンが2機種搭載された。1.5リッター直4ターボユニットを積む「S60 T3 SE」と、2リッター直4ターボ+スーパーチャージャーの「XC60 T6 AWD R-DESIGN」に試乗し、その実力を確かめた。T3といっても4気筒
ボルボはこれまでの実績に甘んずることなく、今後を見据えてすべての分野で大胆な刷新を図りつつある。エンジンは今後4気筒以下、2リッター以下のものを自社開発していく方針で、ガソリンユニットだけでなくディーゼルや電気モーター駆動もその計画の中に含まれる。今のところ発表されているのは、「T3」/1.5リッター直噴ガソリンターボ(152ps)、「D4」/2リッターディーゼル(190ps)、「T5」/2リッター直噴ガソリンターボ(245ps)、「T6」/2リッター直噴ガソリンターボ+スーパーチャージャー(306ps)、という4種類のエンジンである。
T3といっても、3気筒ではなく4気筒なのも魅力のひとつ。最近の技術では3気筒でも滑らかに回るし、パワーも十分なレベルにチューンされている例は多い。しかし、高度な技術をもって成し遂げられたものとはいえ、その目標が静粛性を4気筒並みにすることだとしたら、最初から4気筒のまま軽量化して、パワーやトルク特性、レスポンス、燃料経済性、そして製造上の効率を上げる手だてもまだ残っているはずである。われわれシニア世代としては、排気量に対する憧憬(しょうけい)がある一方で、まだまだ気筒数に対する価値観も捨てがたいのだ。
もっとも、排気量については近年の傾向として、小さくして効率を上げる手法が評価されて、パワーやトルクの絶対値を確保してエンジンの特性さえ納得できれば、何ccであっても無関心でいられるようになってしまった。現状では車名の数字からは排気量を判断できない例も多くなってきている。また、税金区分を考慮すると、1.5リッターと1.6リッターでは自動車税の年税額に5000円の違いがある。1.5リッターであることは、ユーザーにとってもありがたい設定といえる。
ちなみに1.5リッターは、2リッターユニットのストロークを93.2mmから70.9mmに短縮することで得ており、82.0mmのボア自体は同じだ。よって、ショートストローク特有の、長いコンロッドによるピストン首振り角の減少などにより、1.5リッターユニットには滑らかでシャープな吹け上がりが期待できる。また、2リッター用の「過剰品質」の部分が、耐久性や回り方のクオリティーを高める面もあるだろう。両者はボアピッチが同じなのでエンジン外寸も一見して変わらない。だから個人的には、2リッター版よりもコチラの1.5リッターの方に大いなる興味をもっている。
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軽快感が印象的
今回用意されていた試乗車は、T3のS60と、T6のXC60の2台。とにかく軽さは運動性能全般に軽快な動きを与え、燃費性能にも貢献するから大歓迎ということになる。2リッターエンジンについては先ごろ「XC90」で体験しているので、ともかく先に期待値の高いT3に試乗する。
走りだして得た第一印象は、やはり何といっても軽快感があるということだ。もっとも、1.5リッターエンジンと2リッターの重量の違いは思ったより少なく、この後に乗るXC60 T6 AWD R-DESIGNと比べても、前輪荷重で120kgほどしか違わない。
ギアボックスは6段ATのギアトロニックでパドルシフトも使える。ギアのステップアップ比は常識的で、特別に低速側でクロスさせたものではないが、スッと出てそのままスムーズに加速していく。最近のエンジンは回転上昇させていく過程はそれほど重要ではなく、アイドリングからちょっと上の1000rpmから2000rpmの間に保ったままで、速度変化はギアボックスに任せるという傾向が強い。よって、エンジン回転をあまり上下させずに音も静かなまま、ギアポジションだけがどんどん上に上がっていく。加速や登坂など負荷が上がればターボが効いてトルクを補ってくれるという感覚だ。それさえもG的な変化は感じられないほど穏やかもので、こうなると確かに1.5リッターでも2リッターでも排気量を感じるチャンスは少ない。
自己主張が薄まっている?
続いて乗ったXC60 T6のパワーは306psもあって、さらにギアボックスは8段ATとなるから変速段差もより少なく、それらが知らないうちに舞台裏で行われていく。こうなると上記の傾向はさらに強くなって、日本の道路で乗る限り3000rpm以上の領域はまったく使わなくとも十分速く走れるほどだ。
こんな特性はディーゼルエンジンが得意とするところであったが、最近はガソリンエンジンでもこういう傾向になっている。本来ならばMTでギアを固定して回して楽しみたいところながらそんな仕様はないし、あってもたぶんATと同じように早め早めに上のギアへと送って乗ってしまうだろう。
その昔、エンジンは回転によるキャラクターがはっきりしており、「カムに乗る」とか「ターボの過給が効いてきて」……みたいな表現が使われたものだ。しかし、現代の電子制御技術は低回転域の不足部分を補う途中経過のつなぎ方がうまく、ドライバーが知らないうちに自然に必要な速度域に導いてくれる。そしてパドルシフトは減速時には重宝するという感じだ。そうした意味で、エンジンはどんどん存在感が薄くなっている。
軽快感は加減速時などの動力性能的なものよりも、ハンドルを操舵(そうだ)したときにノーズが回頭する感覚が軽いとか、操舵力そのものが軽く感じられるというところで顕著だ。今ではパワーステアリングのアシスト量を加減できるところから、操舵力の絶対的な重さは問題にしない傾向があるものの、エアバッグの重さやステアリングパッド上に付加されたスイッチ類の重さなどもあって、慣性モーメントの大きさがフリクションとなって、切り始めや転舵(てんだ)初期に手首に感じる重さや遅れは結構大きい。そのへんの感覚が軽くなって、手応えとしてスッキリしてきたというところだ。
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快適な乗り心地
エンジンのパワーを受け止めるシャシー性能については、従来とそれほど変わらない。T3では17インチのタイヤ/アルミホイールが標準。T6はR-DESIGN仕様の場合、19インチや20インチも用意される。タイヤとホイールは大きくなるほどバネ下重量の増加を招くから、乗り心地的には悪化するが、ボディー剛性やサスペンション系の強化は前回のマイナーチェンジで行われているので問題なし。新登場のXC90ではこのへんも刷新されているので、今後はもっと違った展開になるのだろうが、ボルボに期待するラフロードでのタフな走破性は継承されるだろうから、アスファルトの穴ぼこ程度の通過には無関心でいられる。ただし、都市部に多い路面段差というか、路面のつなぎ目などの小突起の連続などにはさらなる対策も必要になってくるだろう。
ライバル車とて拱手(きょうしゅ)傍観しているだけではなく、この分野は日々進化しているから、ボルボとて安閑としてはいられない。しかし、新しいものほどイイかといえば、必ずしもそうとはいいがたい。チューニングに時間をかけて熟成してきた実績からみても、フラットで姿勢変化の少ない上質な乗り味という点においては、S60の方がまだライバルより優位にあるといえる。
(文=笹目二朗/写真=小河原認)
テスト車のデータ
ボルボS60 T3 SE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1845×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1580kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:152ps(112kW)/5000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1700-4000rpm
タイヤ:(前)215/50R17 95W/(後)215/50R17 95W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:16.5km/リッター(JC08モード)
価格:434万円/テスト車=478万4000円
オプション装備:クリスタルホワイトパールメタリックペイント(10万3000円)/PCC<パーソナル・カー・コミュニケーター>キーレスドライブ(3万1000円)/レザーパッケージ<本革シート/助手席8ウェイパワーシート/フロント・シートヒーター/12セグ地上デジタルTV>(31万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:600km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ボルボXC60 T6 AWD R-DESIGN
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4645×1890×1715mm
ホイールベース:2775mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:306ps(225kW)/5700rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2100-4500rpm
タイヤ:(前)255/45R20 105V/(後)255/45R20 105V(ピレリ・スコーピオン ゼロ)
燃費:12.3km/リッター(JC08モード)
価格:719万円/テスト車=729万3000円
オプション装備:クリスタルホワイトパールメタリックペイント(10万3000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:600km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

笹目 二朗
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