ジャガーXF 20dプレステージ(FR/8AT)
打倒! ジャーマンスリー 2016.04.15 試乗記 “新世代ジャガー”の嚆矢(こうし)として、2007年にデビューした4ドアセダン「XF」がフルモデルチェンジ。2代目となる新型はドイツのライバルと渡り合うことができるのか? その実力を試す。新世代ジャガーの真価が問われる
このところのジャガーは、ポルシェの作品を猛烈に意識している。「Fタイプ」のコンバーチブルが「『ボクスター』と『911カブリオレ』のはざま」を狙って生み出されたことは明らかだし、ついにローンチされたジャガー初のSUV「Fペース」も、開発陣が「『マカン』が最大のライバル」という意味のコメントをはばかることなく発している。
そんな昨今のクルマづくりの背景には、かつてポルシェ社で副社長を務め、“マーケティングの神様”ともいわれたハンス・リーデル氏が、実は現在ではジャガーのインハウス・エージェントに属し、同社のブランディングやマーケティングに深く関与をしている影響が大きい……と、個人的にはにらんでいる。
それはともかくとして、特に2007年にブランニューモデルとしてXFが送り出されて以降、ジャガー車はいずれもすこぶるダイナミックな走りの持ち主であることを大きな特徴としている。そんな“新世代ジャガー”の第1号モデルとなったXFが、初めてのフルモデルチェンジを受けて日本に上陸した。
「うっかりすると見分けがつかない!」といったコメントが寄せられることは承知の上と言わんばかりに、昨年Dセグメントに投入された「XE」と2代目となったXFの雰囲気が極めて近いのは、新しい世代のジャガーセダンのスタイリングイメージが、まだ構築の途上であることを物語っているともいえそう。
ただし、XEと比べれば全長は285mm、ホイールベースは125mmも長く、その分後席の足元やラゲッジスペースの余裕は明確に大きく、全体のプロポーションも特にボディー後半部分がより流麗であることは間違いない。
エンジンに火を入れると、ディーゼル特有の音質は明確。ただし、そのボリュームは「やかましい」と文句を言いたくなるほどではなく、特に車外でのノイズは、同じくディーゼルエンジンを搭載するメルセデス・ベンツやBMWのコンペティターに対して、明らかに静かである。
およそ100kg軽い重量に同じ心臓を組み合わせるXEほどではないものの、加速力は十二分なレベル。タイトな駆動力の伝達感と微低速でもスムーズな変速を実現する出来のいい8段ATも、そんな好印象を生み出すひとつの立役者となっている。このアイテムがきめ細かく、レスポンスのよい変速を行ってくれることで、低回転域から太いトルクを生み出すエンジンの特性を巧みに引き出し、滑らかでありながらも力強い走りを実現してくれるのだ。
回頭感に優れたハンドリングとフットワークの軽やかさは、最新のジャガー車ならでは。時にタイヤのトレッド面がかたく、エンベロープ性(タイヤが路面の突起物を乗り越える際に、トレッド面が変形する特性)が今一つ、という感覚を抱かされる場面もあるが、全般にはコンフォート性能も満足すべき水準にある。アクセルワークによって気分よく荷重移動をコントロールできるのは、ほぼ50対50という前後重量配分に優れたFRレイアウトの持ち主であることも、当然無関係ではないはずだ。
果たして、独自の立ち位置と最新のボディーやエンジンを武器に“ジャーマンスリー”と呼ばれるドイツ発の強豪たちと渡り合うことはできるのか? 新世代ジャガーの真価が、今まさに問われようとしている。
(文=河村康彦/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
【スペック】
全長×全幅×全高=4965×1880×1455mm/ホイールベース=2960mm/車重=1760kg/駆動方式=FR/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ(180ps/4000rpm、43.8kgm/1750-2500rpm)/トランスミッション=8AT/燃費=16.7km/リッター/価格=693万円
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。






























