ボルボS60ポールスター(4WD/8AT)/V60ポールスター(4WD/8AT)
モータースポーツ直系のボルボ 2016.04.19 試乗記 モータースポーツのテクノロジーが注ぎ込まれた「ボルボS60/V60ポールスター」が進化を遂げて帰ってきた。エンジンを3リッター直6ターボから2リッター直4ツインチャージャーに改め、367psに強化された新型の走りやいかに? 南仏でそのステアリングを握った。“AMG”や“M”のような存在になる?
ボルボ車、と耳にして、ことさらにスポーティーなモデルをイメージする人は、そうは多くはないだろう。モータースポーツとの関連を思い浮かべる人となると、さらに少ないかもしれない。
が、恐らくボルボ自身では、そうした状況こそは今後改善が不可欠な、ある意味「現在の自らのウイークポイント」でもある、と認識をしている兆しがうかがえる。
なぜならばボルボは昨年、1996年以来のオフィシャル・モータースポーツ・パートナーである、自身の本社とも至近の場所に居を構えるポールスター社を、レーシング部門を除いてすべて子会社化。従業員は新たに自社の社員として迎え、その活動をより直接的にコントロールしていく姿勢を明確にしているからだ。
ちなみに、独立して残された前出ポールスターのレーシング部門は、今年2016年からツーリングカーレースの世界最高峰であるWTCC(World Touring Car Championship)にフル参戦する。
当然ながら、その活動はボルボ本体が全面的な支援を行う事実上の“ワークス体制”になる一方で、そんなコンペティションシーンで得られたさまざまな事柄が、ボルボ車の開発やプロモーション活動により積極的に使われるようになっていく可能性も濃厚だ。
かくして、まだ知名度が高いとは言えない「ポールスター」の名が、これからより頻繁に聞かれるようにもなっていくことは間違いない。端的に言えば、目指すは“ボルボのAMG”であり、“ボルボのM”であるに違いないのだ。
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排気量はダウン、パワーはアップ
そんなポールスターから、「ボルボの一部」となってから初となるコンプリートモデルが発表された。その名はズバリ、「S60/V60ポールスター」だ。
あれ? 何だかその名前、聞いたことがあるゾ! という人が現れるのは当然。実は、2015年の6月に同名のモデルが、S60が10台、V60が40台という合計50台の限定数で、日本でも発売された実績があるのだ。
見た目や装備上ではそんな“従来型”と変わらない。ここに紹介する“新型”での最大のトピックは、そのパワーパックが完全に刷新されたという点に尽きる。
従来型が搭載していたのは、ツインスクロールターボを備えた3リッターの直列6気筒エンジン+6段ATという組み合わせ。一方、新型にはターボチャージャーに加えメカニカルスーパーチャージャーも装備の上で、2リッターへと排気量を大幅にダウンさせながら気筒数も削減した直列4気筒エンジンに、アイシン・エィ・ダブリュ製の8段ATを組み合わせたパワーパックが用いられる。
こう見る限りでは、“スペックダウン”という印象も否めない一方で、最高出力は従来型の350psから367psへと向上。加えれば、最新のボルボ車に採用が拡大しつつある“Drive-E”を称する4気筒ユニットの開発には、そもそもプロトタイプ段階からポールスター社が深く関わってきたと公称されてもいる。
となれば、そんな心臓部を搭載した新型の方が、ポールスターのコンプリートモデルとしての“純血度”はより高くなっているとの見方もできることになる。
ちなみに、今回のテスト車やWTCCマシンに採用されている鮮やかなブルーは、「スウェーデン国旗が出典」という、ポールスターのコーポレート・イメージカラーでもある。
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トルクはもちろん、伸びもある
そんな新型の国際試乗会が開催されたのは、ちょうどWTCCの今季開幕戦が行われている南仏はポールリカールのサーキット。周辺のワインディングコースとともに、予選前日のフリー走行終了後の本コースで、サーキット走行のチャンスも用意された。
すでに発売されている「T6 AWD R-DESIGN」に搭載のツインチャージャー付きユニットをベースに、圧縮比を10.3から8.6へと落とす一方、ターボの大容量化などで最大過給圧を1.2バールから2.0バールへとアップ。さらに、インテーク系の抵抗低減やカムシャフトの変更、燃料ポンプの大容量化などが伝えられるエンジンは、1リッター当たりの出力が186ps超に達するハイチューンな心臓。
にもかかわらず、低回転域からごく自然で実用的なトルク感が得られ、シフトプログラムもあえて低いギアを引っ張るような設定になっていないのは、まだ排ガスのエネルギーが小さい領域ではメカニカルスーパーチャージャーが威力を発揮しているからに違いない。
ただし、そんな軽負荷運転でも瞬間燃費計の表示が思ったほど伸びないのは、コンロッドの短縮により圧縮比を大幅に下げたことによる影響が強そうだ。同様に圧縮比を下げた上で高いブースト圧を与えたメルセデス・ベンツの「45 AMG」系モデルでも、高速クルージングで10km/リッターになかなか届かなかったという経験を思い出す。
アクセルペダルを深く踏み込むと即座に太いトルク感が得られる一方で、そのまま回転数が上昇を続けても7000rpmのレッドラインまで一切の頭打ち感を示さない。後輪側バイアスを強めた、という4WDシステムを介してのトラクション能力は当然際立って高く、「なるほどこれならば、S60もV60も0-100km/h加速は4秒台だろうな」と実感できるたくましい加速力が味わえる。
一方で、耳に届くサウンドは、6気筒ユニット搭載の従来型が発していた、「ボルボ車のそれとは到底思えない」という迫力にはやはり及ばない印象。控えめなダウンシフト時のブリッピング音も含め、このあたりにはもうちょっと強い“演出”が欲しいとも思う。
“寛容な挙動”の持ち主
ワインディング路、そしてサーキット走行で得られたハンドリングの感覚は、「6気筒時代よりはノーズの動きが軽やかだな」という事柄がまず印象的。実は、従来型との比較では車両重量が20kgのマイナス。「フロントの軸重は24kg軽くなって、重量配分が改善された」というのが新型のうたい文句でもある。
そんな新型には、新たなファンクションも追加された。ATセレクターをスポーツモード側に倒した上で、前方に押しながら左側パドルを2回引くと、「スタビリティーコントロールをカットの上で、エンジン回転数を常時4000rpm以上にキープしてシフトプログラムが極めてスポーティーになる」という“スポーツ+”のモードが新設されたのだ。
「パドルに触れると解除されちゃうからね」というレクチャーを受けつつ、WTCCレースと同じレイアウトが設定されたポールリカールのコースでフルスロットルを与えてみると、まさかこの場所に合わせてシフトプログラムを組んだわけではないだろうが、なるほどほとんど“全自動”で、素早く的確なシフト動作を行ってくれる。
ちなみに、ハイスピードのコーナーでターンインにブレーキングがかぶったりすると、時にテールアウトの姿勢になったりするものの、それでもすかさず修正舵(しゅうせいだ)を入れてアクセルオンを行えば、すぐに挙動は安定方向に向かうので危機感は薄い。サーキット走行では“S”と“V”の挙動の差が思った以上に大きく、前者の方が全般によりシャープなハンドリングの感覚だ。
多くの場合、「スタビリティーコントロールは切っちゃダメだからね」とくぎを刺されるのがサーキットでのテストドライブというもの。が、このモデルのイベントがそんな例に当てはまらないのは、こうした“寛容な挙動”の持ち主ゆえであるのかもしれない。
高速で増すしなやかさ
フロントに6ピストンのブレンボ製キャリパーがおごられたブレーキが、そのスペックから連想される通りの強力で持久性に富んだ利きを提供してくれるなど、サーキットでのホットラップを難なくこなしてくれる一方で、S60/V60というモデルがそもそも備える、セダン/ステーションワゴンとしての高い実用性を損なっていないことも、また特筆できるポイントだ。
前述した従来型との重量差も踏まえた上で、スプリング、ダンパー、スタビライザー、ブッシュなどにあらためて専用チューニングを施して得られた乗り味は、20インチのシューズを履くこともあって、50km/h程度までの低速域では、やはり「硬め」という印象が強い。
が、さらに速度が増すとフラット感は急速に高まり、80km/h付近からは「しなやか」という言葉がためらわずに使える乗り味を提供してくれるようになる。
タイヤが発する空洞音が、なぜかセダンのS60の方で目立つ傾向があったものの、基本的には静粛性も高く、なるほどプレミアムモデルとしての上質な走りのテイストが味わえるもの。
一方で、800万円を軽くオーバーした従来型と同等の価格が想定される中では、特にインテリア部分での“見た目の演出”にはもうひと工夫が欲しいという印象も受けた。
現状でもステアリングホイールやATセレクターノブ、シート素材などに専用の化粧が施されてはいる。が、例えばダッシュボード全体をアルカンターラ張りにするなど、より大胆なコスメティックの手法にもトライをしてほしい。
ところで、注目だったWTCCの初戦では、上位入賞こそ逃したものの2台のS60ポールスターは、予選で1桁グリッドを獲得するなど、すでになかなかの戦闘力の持ち主であることを証明。レギュレーションで1.6リッターに制限されるものの、そこに積まれている400psを発する心臓は、「他のチームとは異なり、市販車ベースのユニット」というのもポールスター車の特徴だ。
こうして、この先もサーキットで得られていくノウハウは、当然今後の市販モデルに直接投入されていくことになるはず。
実は、何とも“サーキットに近いところ”に位置しているのが、昨今のボルボ車であるのかもしれない。
(文=河村康彦/写真=ボルボ)
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テスト車のデータ
ボルボS60ポールスター
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=----×----×----mm
ホイールベース:2775mm
車重:1751kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:367ps(270kW)/6000rpm
最大トルク:47.9kgm(470Nm)/3100-5100rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y/(後)245/35ZR20 95Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:7.8リッター/100km(約12.8km/リッター、EU複合モード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション、トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ボルボV60ポールスター
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=----×----×----mm
ホイールベース:2775mm
車重:1796kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:367ps(270kW)/6000rpm
最大トルク:47.9kgm(470Nm)/3100-5100rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y/(後)245/35ZR20 95Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:8.1リッター/100km(約12.3km/リッター、EU複合モード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション、トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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