MINIクーパー コンバーチブル(FF/6AT)
ステイ・オープン! 2016.04.25 試乗記 3代目となる新型「MINIコンバーチブル」が登場。従来モデルから変わったところ、受け継いだところを確かめながら、MINIならではのユニークなスタイリングとオープン・エア・ドライブが織り成す魅力にどっぷりとひたった。電動幌のお値段62万円
「ミニ問題」というビッグイシューが私たちの眼前にある。MINI(ミニ)はどこまで大きくなるのか、という大問題である。欲望という名の自動車の肥大化である。
そういう大問題を抱えながら、私たちはその大問題に真正面から取り組むことなく、つい目をそらす。そして目に入ったMINIコンバーチブルを見て思うのである。やっぱりMINIのコンバチはいいなぁ、と。
2015年の東京モーターショーで初お目見えした3代目MINIのコンバーチブルがいよいよ発売となった。日本市場では例によって本国にある「ONE」は落とされ、1.5リッターの直3ターボを搭載する「クーパー」(342万円)、2リッター直4ターボの「クーパーS」(397万円)、それにクーパーSをさらにチューンした「ジョンクーパーワークス」(483万円)という3本の矢からなる。
このうち今回とりあげるのは、クーパーのコンバーチブルである。テスト車はオプション満載で、「デビュー・パッケージ」という42万6000 円のセットやら17万8000 円の「ナビゲーション・パッケージ」やら、なんやらかんやらで、合計452万8000円になる。そもそも車両価格自体、初代も2代目の初期も一番安いのは300万円を切っていたから、消費税のアップ分を差し引いても、3代目は若干お高くなっている。
とはいえ、である。クーパーの場合、コンバーチブル-「3ドア」の車両価格=62万円。つまり、これが電動幌(ほろ)のお値段というわけだ。これでぜいたくかつ自由の象徴が手に入る。安い! と申し上げたい。東京とかミラノとかパリとかモナコとか、ロンドンとかNYとかLAとか千葉とか岐阜とかで乗っていてごらんなさい。そこがどこであろうと、ステキに見えるにちがいない。
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大きくなって、やっぱりヨカッタ
ベースは当然、現行3代目MINIの3ドアである。3代目“BMWミニ”の最大の特徴は、すでに読者諸兄もご存じの通り、先代よりもちょっぴり大きくなったことだ。具体的には、全高は同じで、若干幅広くて10cmほど長くなった。おかげで、幌を閉じているときのスタイルがクラシックなんてものじゃなくて、ベテランに見えるようになった。まるで20世紀の初めのころみたいだ。
と、最初はカッコ悪いと思ったのだけれど、見慣れると、これはこれでステキに見えてきた。戦前のクルマみたいな幌屋根。エレガントじゃないですか。大型化により後席の膝まわりは+4cm、肩まわりは+3cm広がったそうだけれど、運転席に座っても印象的なのは狭っくるしさとは無縁なことだ。大きくなってヨカッタ。
ファブリックの幌に施されたユニオンジャックは、ヘリンボーン柄で織り込まれているから耐久性が高いというのがジマンだ。8万5000円のオプションで、ヘリンボーンのスーツが買えそうだけれど、スーツはMINIに買ってあげたと思えばいいのではないか。
でもって、もったいないことにせっかくのヘリンボーン柄のユニオンジャックはスイッチひとつ、電動でなんの苦労もなく格納されてしまう。開閉時間は先代と同じ18秒。信号待ちでも十分間に合う。仮に作動が終了する前に信号が青になっても、30km/hまでなら走行中も開けたり閉めたりできる。
オープンにして運転席から空を見上げると、空と海との間には今日も冷たい雨が降る、かもしれないティピカル・ブリティッシュ・ウェザーである。君が笑ってくれるなら僕はあくびでもするし、つばめよ高い空から教えてよと中島みゆきちっくな詩をつぶやく自由が得られるのだった。
屋根を開けて先代と異なるのは、リアのクロムのバーがなくなっていることだ。ロールオーバー時に乗員を守ってくれるバーは、ボディーの内側にすっかり隠されてしまった。これにより、デザイン上のアクセントが消えたという見方もあるけれど、後ろがスッキリサッパリした。
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こまかいことはいいんだよ
Aピラーが以前よりは寝ているとはいえ、現代のほかのクルマと比べると、まだまだ立っている。直立したフロントスクリーンからの眺めは昔の、例えばMGBとかスプリジェットを思わせる。クラシックな味わいがある。
一般道での乗り心地ははっきり硬い。でも、ユカイな硬さである。MINIがステキなのは、いわゆる「いいクルマ」をつくろうとしていないことだ。小径で太めのグリップのステアリングホイールにせよ、硬い乗り心地にせよ、“ゴーカート・フィーリング”を生み出すことを優先している。無駄と実用をはかりにかけつつ、オモシロイ、楽しいクルマをつくろうとしている。そこに現代BMWミニの価値がある。
こんなに開口部がでかいのに、ボディーのしっかり感はたいしたものだ。というようなことを2004年に誕生した初代MINIコンバーチブルでも思った記憶がある。コンピューターによる解析ソフトが秋葉原で売っているのではあるまいか。技術の向上によって、ボディー剛性の計算なんて朝飯前。いや、現場はホントは大変かもしれない。でも、そう感じるくらい、「マツダ・ロードスター」だって尋常でなく高いレベルのボディー剛性が当たり前のように当たり前になっている。ちなみに3代目の場合、Aピラーとフロア下が強化されているという。
1320kgの車重は3ドアのクーパーAT比150kgも重いわけだけれど、ご安心。1.5リッター直3ターボは、最高出力136psを4400rpmで、最大トルク22.4kgmを1250kgmで発生する。十分に速くてスポーティーである。
というわけで、“ミニ”という名の大問題は今日も深く考えることなく、三浦半島を後にしたのだった。ステイ・オープン!
(文=今尾直樹/写真=向後一宏)
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テスト車のデータ
MINIクーパー コンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3835×1725×1415mm
ホイールベース:2495mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:136ps(100kW)/4400rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/1250-4300rpm
タイヤ:(前)215/45R17 88W/(後)215/45R17 88W(ダンロップSPORT MAXX RT)
燃費:16.7km/リッター(JC08モード)
価格:342万円/テスト車=452万8000円
オプション装備:ボディーカラー<カリビアン・アクア・メタリック>(5万9000円)/デビュー・パッケージ<ストレージ・コンパートメント・パッケージ+MINIエキサイトメント・パッケージ+レインセンサー[自動ドライビングライト付き]+ライト・パッケージ+MINIドライビング・モード+レザー・ラウンジ サテライト・グレー+MINI Yoursスポーツ・レザーステアリング サテライト・グレー[3本スポーク]+マルチファンクション・ステアリングホイール+クルーズコントロール+インテリアカラー サテライト・グレー+MINI Yoursインテリア・スタイル ダーク・コットンウッド+カラーライン サテライト・グレー+シートヒーター>(42万6000円)/ナビゲーション・パッケージ<ナビゲーションシステム+MINIコネクティッド>(17万8000円)/アロイホイール プロペラ・スポーク 7J×17+205/45R17タイヤ(9万4000円)+ウインドディフレクター(5万円)+パーキングアシスト・パッケージ<PDCフロント&リア含む>(6万円)/ヘッドアップディスプレイ(5万8000円)/ETC車載器システム内蔵自動防眩(ぼうげん)ルームミラー(6万9000円)/ドライビングアシスト アクティブ・クルーズコントロール(11万4000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:401km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。