アウディQ2 1.0 TFSI デザイン(FF/6MT)/Q2 1.4 TFSI COD スポーツ(FF/7AT)/Q2 2.0 TDIクワトロ スポーツ(4WD/7AT)
軽く見えてマジメ 2016.08.05 試乗記 既存の「Q3」よりも一段とコンパクトな、アウディの新型クロスオーバー「Q2」にスイスで試乗。その走行性能、そして若者層をターゲットにしたという仕立ては、今後日本市場で支持されるであろう魅力にあふれるものだった。1リッターモデルは要注目
デューベンドルフにある元スイス軍の飛行場。ゼロハリかリモワのスーツケースのようなシルバースチールの倉庫の中に、われわれが試乗するアウディQ2がずらりと置かれていた。壁にはポップなグラフィティーが描かれており、よく見ればそれは「Audi Q2」の車名であった。
早速クルマ乗り込むと、目の前には巨大なスクリーンが。程なく映像によるプレゼンテーションが始まり、FMチューナーからはその画像と合わせたスピーチが各国の言葉で流れてきた。クラブミュージックとまではいかないが、軽快でハイビートなインストと共に今回のチェックポイントが語られ、スマートにプレゼンテーションが終わる。同時に倉庫の扉が開き、まぶしい光が差し込んできた。
Q2は、アウディが新たに提案するスタイリッシュSUV。生産はその本拠地であるインゴルシュタットで行われ、「A3」と同じラインで組み上げられる。その構造はA3や「TT」と共用化されたMQBプラットフォームを使用し、立ち位置的には同じSUVであるQ3がファミリー層狙いであるのに対し、Q2はさらなる若年層を狙う。
エンジンにはTFSI/TDI共に3種類のバリエーションがあり、今回試乗したのは「2.0 TDIクワトロ スポーツ」と「1.4 TFSI COD スポーツ」、そして「1.0 TFSI デザイン」の3台。これを丸一日で交互に乗り換えたが、今回は最初に日本導入予定となる1.0 TFSIを中心にインプレッションをお伝えしようと思う。
とはいえ実際筆者がイチ推しするのも、1.0 TFSIだ。「A1」にも搭載される1リッターターボ(116ps)は、3気筒ながらも回した途端にアウディらしさを感じさせる、とても気持ち良いエンジンだからである。街中での低回転域を多用するシーンではターボの過給が素早くかかり、かつそれがスナッチせずに十分なトルクを引き出してくれる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
流してよし、曲がってよし
今回、高速走行は130km/hが上限だったが、Q2はこれもバッチリこなした。エキゾーストマニホールドが短いターボゆえの排気干渉を多少は許しつつも、高回転になるにつれ「ヴーン!」と音色がそろうサウンドは、精密機械を回している実感にあふれており、小排気量エンジンながらまったく手抜きを感じさせない。レブリミットの6250rpmまでサージングせずにきっちりと回りきる、この“血の通わないロボタイズ感”こそが、アウディの個性である。
惜しいのは試乗車が6MTだったこと。そのタッチやシンクロナイザーの強さは素晴らしいのだが、小排気量の1リッターターボを回すには、いまひとつギア比が合ってなかった。特にワインディングの急な上り坂では、2速の立ち上がりにトルクのなさを感じた。これは完全に、高速巡航主体のヨーロッパ用ギア比だ。
とはいえ日本仕様はギアがひとつ多い乾式の7段Sトロニックが用意されるはずだから、筆者はあまり心配していない。ダウンサイジングが主流の現代で、クルマの動力性能はトランスミッションの協調性やレスポンス、ギア比が大きく影響する。逆に言うと、7段Sトロニック抜きでこれだけ気持ち良い走りができたのだから、早く日本仕様に乗ってみたい! と思えた。
215/55R17とエアボリュームがたっぷりとられた細身のタイヤを履いているのも良かった。フロントシートでの乗り心地はシッカリとしていて、ステアリングを切ればスィッとクルマが反応してくれる。Q2は全車に、微小舵角(だかく)ではギア比がスローだが切り込むとクイックになる「プログレッシブステアリング」が標準装備されているらしいが、それは、わざとらしさを感じさせない自然なハンドリングだった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「1.4」は“若さ”があれば……
サスペンションのダンピングも非常にプレーンで乗り心地がよい。ただリアシートは乗員の視線を確保するためか座面が高く、革シートも、新車ゆえに“バネ感”が強かった。一応SUVだから荷物を満載し、4人乗車しないと最終判断はできないが、ベイビーと一緒にママが後ろに乗る場合は、ウィッシュボーン式リアサスペンションのQ3に軍配が上がると思う。ちなみにQ2のFFモデルはリアサスがトーションビーム式だが、クワトロモデルは4リンク式。ディーゼルターボで4WDを試したが、トラクション性能の優劣は、オンロードでは体感できなかった。ちなみにガソリンモデルは2.0 TFSIがクワトロとなる。
参考までにまだその動向が不明確な1.4 TFSIについても記したい。理由は、この1.4を試したことによってQ2の立ち位置がより明確になったと筆者は感じたからだ。
率直に言って、1.4 TFSI(FF)の走りは素晴らしかった。150psに高出力化されたことを踏まえタイヤは18インチとなっており、サスペンションの剛性も圧倒的に高い。ビタッと路面に吸い付く様はアウディならではのもので、新開発の7段Sトロニックはギア比も抜群。これに乗った瞬間「あぁ、1リッターはないわ……」的な考えが頭をよぎるのだが、ジックリ乗るにつけ、どうにも違和感が生じてきたのだ。
オクタゴン(八角形)のシングルフレームを軸に、サイドエアインレットにポリゴン(多角形)モチーフをあしらい、キャラクターラインをフェンダーアーチで大胆に切り、リアドアのハンドル部分にはペンタゴンのプレスを配したQ2。その狙いはユーザーの若返りにあり、ボディーを眺めるほどにその意図は強く伝わってくる。
しかし1.4 TFSIの乗り味はどっしりガッシリしており、またそのブラック基調でレザートリムされたインテリアや、上級モデルと同じ小径のパンチングレザーステアリングホイール、スポーティーなセミバケットシートを見るにつけ、ちっとも若々しくないのである。
MINIのライバルとして十分
対して1.0 TFSIはその乗り味からして軽やかでフレッシュ。トンネルに入るとブルーに光る(10色が選べるという)オプションの「LEDライティングパッケージング」はやり過ぎに思えたが、クラブカルチャーに親しんだ若者なら簡単になじむこともできるのだろう。
USBポートにiPhoneをつないで音楽を鳴らし、アウディコネクトでネット検索をして、メーターナセルに広がるバーチャルコックピットのナビを見ながら友達4人で目的地を目指す。若いからトーションビームの乗り心地なんてへっちゃらだ。
そんな使い方をするユーザーこそアウディのターゲットであり、それと同時にアウディがひそかに目指す“若返り”でもあると思うのだ。
アウディ自身は「このクラスのSUVはないから、Q2にはライバルはいない」と強気なことを言っていたが、そのライバルはガチでMINIだろう。そしてQ2は、それに十分対抗しうる魅力があると思えた。
だから上級志向の1.4 TFSIは、若返りたいオジサン、もしくは自分が若いと思ってるオジサンが乗ればいい。そういう意味で注文をつけるなら、Q2のインテリアには、もう少し簡素なクールさが必要だとも思った。もちろんA3と多くを共用することでコストが抑えられているのはわかるが、MINIのトグルスイッチやセンターメーターに勝てる工夫があってもよかったと思う。
いまさらながらアウディは、バカがつくほどまじめなメーカーだと思う。その彼らが若返りをめざし、懸命に出した答えがこのQ2だ。最後はセンスで「行っちゃえ!」するライバルたちとは違って、最後まで悪ノリを許さないその不器用さも筆者は好きである。価格も意欲的に、A3と同等の300万円前後を狙うというし、日本ではある種サチュレートした感のあるMINIに対して、Q2がカウンタービークルになってくれることを願う。
まぁ……カッコいいSUVに乗る若造を見るのは悔しいけど!
(文=山田弘樹/写真=アウディ)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
アウディQ2 1.0 TFSI デザイン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4.19×1.79×1.51m
ホイールベース:2.6m
車重:1205kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:116ps(85kW)/5500rpm
最大トルク:20.4kgm(200Nm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17/(後)215/55R17
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
アウディQ2 1.4 TFSI COD スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4.19×1.79×1.51m
ホイールベース:2.6m
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/50R18/(後)215/50R18
燃費:5.4リッター/100km(約18.5km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
アウディQ2 2.0 TDIクワトロ スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4.19×1.79×1.51m
ホイールベース:2.6m
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190ps(140kW)/--rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/1750-3300rpm
タイヤ:--
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。






































