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第366回:氷上性能にこだわったSUV用スタッドレスタイヤ
ヨコハマの新製品「アイスガードSUV G075」を試す

2016.09.14 エディターから一言 河村 康彦
「アイスガードSUV G075」はアイスガードブランド初のSUV用スタッドレスタイヤだ。
「アイスガードSUV G075」はアイスガードブランド初のSUV用スタッドレスタイヤだ。 拡大

「ジオランダー」から「アイスガード」へ――横浜ゴムはSUV用スタッドレスタイヤのブランドを、乗用車用として親しまれているアイスガードに今シーズンから改める。その第1弾となる新製品「アイスガードSUV G075」の実力を、同社の北海道タイヤテストセンターで試した。

開発テーマは「SUVに、飛躍の氷上性能を」。発売サイズは235/55R18 100Q~175/80R15 90Qの24サイズ。価格はオープンプライス。
開発テーマは「SUVに、飛躍の氷上性能を」。発売サイズは235/55R18 100Q~175/80R15 90Qの24サイズ。価格はオープンプライス。 拡大
トレッドパターンは、接地性の向上とエッジの増加を狙って設計されている。見た目は、ヘビーデューティーなSUV用というより乗用車用という雰囲気である。
トレッドパターンは、接地性の向上とエッジの増加を狙って設計されている。見た目は、ヘビーデューティーなSUV用というより乗用車用という雰囲気である。 拡大
「アイスガードSUV G075」は、氷上性能のほかに、“性能長持ち”と省燃費にも配慮されている。また、近年人気の都市型SUVに対応するため、静粛性にも留意したという。
「アイスガードSUV G075」は、氷上性能のほかに、“性能長持ち”と省燃費にも配慮されている。また、近年人気の都市型SUVに対応するため、静粛性にも留意したという。 拡大

氷上性能の向上に主眼

いわゆる“クロスオーバー”までを含めた乗用車用スタッドレスタイヤとしての開発。それを強調するべく、ヘビーデューティーなSUV専用イメージを伴うジオランダーの名を改め、これまでパッセンジャーカー向けアイテムに用いてきたアイスガードの名称を採用――そんな“裏話“が聞こえてくるのが、ウインターシーズン到来を前に発売された、最新のSUV用スタッドレスタイヤ、アイスガードSUV G075だ。

開発の基本コンセプトは、氷上性能に長持ち性能、そして燃費性能の向上という3点。が、さらに「パターンノイズの低減など、ドライ路面を走行した際の快適性向上にも留意をした」とのことだ。このあたりが、前述の名称変更へと至った、大きな理由でもあるように受け取れる。

実際、凍結路面を引っかくエッジ効果を狙い、前後方向にジグザグ状の4本のメイングルーブや、同様のエッジ効果を横方向のグリップ向上にもつなげるべく、左右方向への振れ幅がより大きいジグザグ状のサブグルーブを採用している。さらには、接地面積の拡大を狙ったことがうかがえる幅広のセンターリブなどで構成されるそのトレッドパターンは、ヘビーデューティーなSUV用というよりは、まさにオーソドックスな乗用車用という雰囲気だ。

かつてのスパイクタイヤ時代は、「高い圧力でピンをしっかり食い込ませるため、路面との接触面積はスノータイヤよりも減らす」というのが常識だったもの。が、今や氷上性能に優れたスタッドレスタイヤづくりの定石のひとつは、接地面積を可能な限り大きく採ること。実際、この新タイヤの接地面積も、「従来品に対しておよそ5%のプラス」を実現させているという。

 

水膜除去の技術を総動員

オールニューのアイテムゆえ、スタッドレスタイヤとしての基本性能を決定づけるコンパウンド(ゴム)にも、最新技術が盛り込まれている。

そもそも、凍結した路面で滑りやすいのは、タイヤが路面を踏み込んだ際の摩擦熱でミクロの水膜が発生し、それがタイヤと路面の間に入り込んだ潤滑剤としての役割を果たすため……というのは、よく耳にするフレーズ。“ミクロの水膜”というフレーズがピンと来ないという人でも、冷凍庫内でカチカチに凍った氷よりも、表に出してしばらくたった“湿った氷”の方がずっとつかみづらい……というのは、実体験から納得できる人は多いはずだ。

アイスガードSUV G075に採用された最新コンパウンドには、そんなミクロの水膜を除去するべく開発された技術が“総動員”されている。

“スーパー吸水ゴム”と名付けられたコンパウンドには、氷の表面への密着効果と吸水効果を補完する、従来比で最大30倍の大きさになるという“エボ吸水ホワイトゲル”を新採用。ミクロレベルでカラが氷をかむことによりエッジ効果も補完する“新マイクロ給水バルーン”とともに、トレッド面が路面を踏み込んだ瞬間に発生するミクロの水分を一時的に吸収することで、グリップ力の低下を抑制する。

一方、低温になっても柔らかさを失わず、こちらもミクロレベルといえる氷表面の凹凸を包み込むことで、物理的にグリップ力を高めようというのが、“スーパー吸水ゴム”に配合された“ブラックポリマーII”という素材。ちなみに、前出“エボ吸水ホワイトゲル”も、「素材そのものが柔らかい」ために、やはり氷表面のミクロの凹凸との密着効果を高めることに貢献しているという。

新トレッドパターンと“スーパー吸水ゴム”の採用により、「アイスガードSUV G075」(右)は従来製品「ジオランダーI/T-S」(左)より氷上の制動性能が23%向上した(=23%短く止まる)とのことだ。
新トレッドパターンと“スーパー吸水ゴム”の採用により、「アイスガードSUV G075」(右)は従来製品「ジオランダーI/T-S」(左)より氷上の制動性能が23%向上した(=23%短く止まる)とのことだ。 拡大
新たに採用された“スーパー吸水ゴム”の顕微鏡写真(50倍モード)。
新たに採用された“スーパー吸水ゴム”の顕微鏡写真(50倍モード)。 拡大
“エボ吸水ホワイトゲル”の顕微鏡写真(2500倍モード)。“新マイクロ吸水バルーン”とともに、タイヤの表面の空洞によって、効率的に水膜を除去する。
“エボ吸水ホワイトゲル”の顕微鏡写真(2500倍モード)。“新マイクロ吸水バルーン”とともに、タイヤの表面の空洞によって、効率的に水膜を除去する。 拡大
今回のテスト車両はいずれもSUV。写真右(手前)から「トヨタRAV4」「マツダCX-5」「トヨタ・ランドクルーザー」「ジープ・チェロキー」。
今回のテスト車両はいずれもSUV。写真右(手前)から「トヨタRAV4」「マツダCX-5」「トヨタ・ランドクルーザー」「ジープ・チェロキー」。 拡大

性能向上をハッキリと体感

そんな最新スタッドレスタイヤを、昨年末にオープンしたばかりの、横浜ゴムの北海道タイヤテストセンター(Tire Test Center of Hokkaido=TTCH)でチェックした。

旭川市街からもほど近く、従来の冬用タイヤテストコースに比べ、約4倍もの敷地面積を持つというこの新コースは、実はかつての旭川競馬場跡地に建設されたもの。ちなみに、記憶の限りでは、同じく北海道にあるライバル各社のコースと比べても、その広大さは一目瞭然。今後のヨコハマのウインタータイヤの進化にも期待が持てるというものだ。

従来品(ジオランダーI/T-S)に比べ、アイスガードSUV G075では「氷上制動性能を23%向上させた」と豪語するが、なるほど「トヨタRAV4」を用いての氷盤路面上でのブレーキテストでは、大きな差を実感することができた。

そもそも、グリップ力を失うことに起因するABSの介入点が全く異なる印象だし、「最後の最後になって、なかなか止まらない」という感覚が強く伴うジオランダーI/T-Sに比べると、完全停止まで制動感が抜けないのがアイスガードSUV G075の特徴だ。

もちろん、2009年に登場した従来製品と比べれば、性能が向上しているのは当然のこと。それでも、これだけハッキリと体感できる性能向上は、スタッドレスタイヤの“新旧比較”でも珍しい。

一方、凍結/積雪路面に限ってのチェックであったゆえ、ドライ路面での静粛性向上などは知る由もなかったし、新タイヤが自慢とする経時劣化の小ささや、燃費の向上に関しても同様であったことはやむを得ず。

いずれにしても、これからのシーズンに向けてのヨコハマ発の最新自信作が、今ますますシェアを拡大させつつあるSUVへと照準を合わせたこの新アイテムであるわけだ。

(文=河村康彦/写真=横浜ゴム、webCG)

「トヨタRAV4」を用いての氷盤路面上でのブレーキテスト。「アイスガードSUV G075」(写真)と従来製品「ジオランダーI/T-S」装着車とを乗り比べると、制動性能に明らかな違いがあることを確認できた。
「トヨタRAV4」を用いての氷盤路面上でのブレーキテスト。「アイスガードSUV G075」(写真)と従来製品「ジオランダーI/T-S」装着車とを乗り比べると、制動性能に明らかな違いがあることを確認できた。 拡大
圧雪路面のショートサーキットを行く、「アイスガードSUV G075」装着の「トヨタ・ランドクルーザー」。
圧雪路面のショートサーキットを行く、「アイスガードSUV G075」装着の「トヨタ・ランドクルーザー」。 拡大
同じく圧雪路面のショートサーキットを行く「ジープ・チェロキー」。「アイスガードSUV G075」は氷上性能が長く効くのも特徴。約4年後も高レベルの氷上グリップ力が続くという。
同じく圧雪路面のショートサーキットを行く「ジープ・チェロキー」。「アイスガードSUV G075」は氷上性能が長く効くのも特徴。約4年後も高レベルの氷上グリップ力が続くという。 拡大
雪上ハンドリングコースを行く「マツダCX-5」。
雪上ハンドリングコースを行く「マツダCX-5」。 拡大
河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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