ホンダNSX(4WD/9AT)
未知の世界へ 2016.09.20 試乗記 3基のモーターと3.5リッターツインターボエンジンからなる、独自のハイブリッドシステムを搭載した新型「ホンダNSX」。開発テーマである「New Sport eXperience=新たな走りの喜び」とはどんなものなのか。その出来栄えを、オープンロードで確かめた。価格は初代の3倍に
1990年から2005年まで、初代NSXはトータルでおよそ1万8000台がつくられ、アメリカで9500台、日本で7300台が販売された。
いちばんたくさん売れるところでつくる、というホンダの方針に従って、新型NSXはアメリカ生産に変わった。チーフエンジニアにあたるLPL(ラージプロジェクトリーダー)も、こんどは米国ホンダのアメリカ人だ。米国生産のホンダ車はいくらでもあるが、LPLを米国チームから出すのは異例のことである。
開発は栃木とオハイオの日米共同で行われた。ざっくり言うと、シャシーとボディーがアメリカ、パワートレインは日本が担当した。
4年かけて完成した2代目NSXは、ランボルギーニ流に言うなら、「NSX LP350-4ハイブリッド」である。モーターと組み合わせた新設計の3.5リッターV6ツインターボを、初代とは違って縦置きにして後輪を駆動。さらに、左右前輪を2基のモーターでそれぞれ駆動する。ホンダの言う「スポーツハイブリッドSH-AWD」、その最新バージョンを搭載するミドシップスーパースポーツである。
聞いているだけでおなかいっぱいになりそうなメカもスゴイが、2370万円という価格もスゴイ。それでも、欧州製ミドシップスーパースポーツよりは安いものの、初代NSXの3倍である。
現在、オハイオでの生産は、1日6~8台といわれる。北米モデル、アキュラNSXのデリバリーはすでに始まっているが、日本での発売は来年2月になる。だが、それに先立って、ホンダは6台の右ハンドルモデルをそろえ、神戸で国内初のプレス試乗会を開いた。
シフトセレクターの操作方法に物申す
あっさりしょうゆ味だった初代モデルと比べると、新型NSXはカタチからして濃厚だ。ボディーサイズは全長で6cm、全幅で13cm、全高で4cmほど大きくなったが、カタマリ感ははるかに強い。特徴的なのは、リアピラーのフローティング構造で、ピラーの後端部がグラスキャビンから離れ、浮いている。走行中、そこに空気を通すことで、エンジンの排熱を助けるのだという。
上等な革のスポーツシートに座って、スタッフから簡単なコックピットドリルを受ける。EV走行ができるハイブリッドでも、始動時には必ずエンジンがかかる。パワートレインやシャシーのキャラクターを変えるドライブモードは、デフォルトが“スポーツ”で、上は“スポーツ+”と“トラック”。ノーマルモードはない。そのかわり、エンジン回転を抑え、EV走行を優先させるクワイエットモードが備わる。
セレクトダイヤルをスポーツからスポーツ+に切り替えると、液晶計器盤のタコメーターがクルンと回転し、12時の位置が4000rpmから6000rpmに移動する。iPhoneのアプリにありそうな楽しい演出だ。
9段DCTのセレクターは、センターパネルに並ぶプッシュスイッチである。現行「レジェンド」(アキュラRLX)が初出で、燃料電池車の「クラリティ フューエルセル」もこの方式だ。PもRもNもDも、ぜんぶ独立したスイッチなので、直観的な操作がきかない。新型NSXを運転していて、これがいちばん煩わしかった。
“ハイブリッド四駆”ならではの走り
キラ星のごとくちりばめられたスペックに、いちいちヒモづけして感想を記していたら、日が暮れてしまうので、結論めいたことを先に書こう。
新型NSXの最大のテーマは「新たな走りの喜び」だという。それをたしかに実感したのは、ワインディングロードを走ったときだった。
いちばん感心したのは、コーナーの頂点ですら、「まだ踏める!」と思わせることである。すばらしい操縦性のスポーツカーはいくらでもあるが、最もクリティカルなエイペックス通過の時間に、もっと踏んでいこう、踏んでいけそうだ、と感じたクルマは個人的には初めてである。駆動トルクで曲がり、安定させるトルクベクタリング制御を、前輪のツインモーターでより緻密にやる機構のなせるわざだろう。
ホンダの言うとおり、操縦フィールはオン・ザ・レールである。でも、それなら電車に乗ってりゃいいって話で、オン・ザ・レールのクルマはたいていつまらない。3モーターハイブリッドの先輩格、レジェンドでもそう思ったが、NSXはぼくのような技量の不自由なビビリでも楽しめる。スポーツハイブリッドSH-AWDでホンダがやりたいことが、初めて理解できた。
山道でもドライブモードをいろいろ試してみたが、おもしろかったのは、クワイエットモードである。これだとエンジン回転は最高4000rpmに規制される。排気音も吸気音も歴然と低くなる。しかしそれでも、並のスポーツカーよりずっと速い。息を止めて走っているような、かつて味わったことのない新鮮なドライブ体験だった。
飛ばさなくとも感じられる御利益
最初に神戸の町へ出て、まず感じたのは、走りの軽さである。ボディーが軽い感じがする。足まわりもかろやかだ。ステアリングも軽い。1.8t近い重さのクルマとは思えない。高価なスーパースポーツで軽い感じがするというのは、とても大事なことである。心が軽くなるからだ。
スポーツかクワイエットモードで、バッテリーに余裕があると、EV走行をする。エンジンに直結するモーターは、単体で駆動することはない。NSXの場合、EV走行とは、前輪走行のことである。
仮にこの日、トルクベクタリング効果を発揮する前輪のツインモーターがまったく作動していなかったら、試乗インプレッションはどうなったか。走り終えてから、開発スタッフにそう質問すると、車重をもっと重く感じ、ステアリングは舵角が大きくなり、操舵力も増していたはず、とのことだった。スポーツハイブリッドSH-AWDは日常の走りにも御利益を与えているらしかった。
神戸をスタートして、六甲山から淡路島へ行って帰って、約200km走った。90年に出た初代NSXは、当時、日本車としては画期的な性能を持っていたが、「フェラーリ328」や「348」の直接ライバルとは思わなかった。
しかし、こんどのNSXはヨーロッパのスーパースポーツに比肩しうる。「フェラーリ458」や「ランボルギーニ・ウラカン」のようなカラフルさや華やかさはない。「感動」より「感心」するクルマだが、そのベースにあるまじめさがホンダ製スーパースポーツらしいと思った。
米国価格は15万6000ドルから。いまの為替レートだと、2370万円はずいぶん割高だが、120円あたりまで円が下がってもやっていける価格に設定したという。
発売は来年2月27日だが、購入予約はこの8月25日から始まり、最初の100台枠はとっくに売り切れている。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸)
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テスト車のデータ
ホンダNSX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4490×1940×1215mm
ホイールベース:2630mm
車重:1780kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:507ps/6500-7500rpm
エンジン最大トルク:56.1kgm/2000-6000rpm
フロントモーター最高出力:37ps/4000rpm(1基当たり)
フロントモーター最大トルク:7.4kgm/0-2000rpm(1基当たり)
リアモーター最高出力:48ps/3000rpm
リアモーター最大トルク:15.1kgm/500-2000rpm
システム最高出力:581ps
システム最高トルク:65.8kgm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)305/30ZR20 103Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:2370万円/テスト車=2658万8000円
オプション装備:ボディーカラー<バレンシアレッド・パール>(67万円)/カーボンファイバーエンジンカバー(40万円)/カーボンファイバーインテリアスポーツパッケージ(36万円)/カーボンセラミックローターブラックキャリパー(113万4000円)/電動4ウェイパワーシート<セミアニリンレザー/アルカンターラ>+ブラックアルカンターラルーフライナー(32万4000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1037km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ホンダNSX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4490×1940×1215mm
ホイールベース:2630mm
車重:1780kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:507ps/6500-7500rpm
エンジン最大トルク:56.1kgm/2000-6000rpm
フロントモーター最高出力:37ps/4000rpm(1基当たり)
フロントモーター最大トルク:7.4kgm/0-2000rpm(1基当たり)
リアモーター最高出力:48ps/3000rpm
リアモーター最大トルク:15.1kgm/500-2000rpm
システム最高出力:581ps
システム最高トルク:65.8kgm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)305/30ZR20 103Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:2370万円/テスト車=2598万4000円
オプション装備:カーボンファイバーエンジンカバー(40万円)/カーボンファイバーインテリアスポーツパッケージ(36万円)/カーボンセラミックローターレッドキャリパー(120万円)/電動4ウェイパワーシート<セミアニリンレザー/アルカンターラ>+ブラックアルカンターラルーフライナー(32万4000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1166km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ホンダNSX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4490×1940×1215mm
ホイールベース:2630mm
車重:1780kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:507ps/6500-7500rpm
エンジン最大トルク:56.1kgm/2000-6000rpm
フロントモーター最高出力:37ps/4000rpm(1基当たり)
フロントモーター最大トルク:7.4kgm/0-2000rpm(1基当たり)
リアモーター最高出力:48ps/3000rpm
リアモーター最大トルク:15.1kgm/500-2000rpm
システム最高出力:581ps
システム最高トルク:65.8kgm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)305/30ZR20 103Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:2370万円/テスト車=2619万5000円
オプション装備:ボディーカラー<ソースシルバー・メタリック>(8万5000円)/カーボンファイバーエンジンカバー(40万円)/カーボンファイバーインテリアスポーツパッケージ(36万円)/カーボンセラミックローターレッドキャリパー(120万円)/電動4ウェイパワーシート<セミアニリンフルレザー>+ブラックアルカンターラルーフライナー(45万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1033km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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