第367回:非降雪地域での最適解?
グッドイヤーの「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」を試す
2016.09.21
エディターから一言
拡大 |
サマータイヤとウインタータイヤの特徴を併せ持つ商品として、目下注目を集めているオールシーズンタイヤ。しかし、実際にはその雪上性能はどれほどのものなのか? グッドイヤーの「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」を、本格的な雪上コースで試した。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
悩める秋
「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、残暑も和らぎ、すっかり過ごしやすくなってくると、毎年繰り返されるのが“ウインタータイヤ問題”。「今年の冬は履こうか、どうしようか?」 クルマを買い替えた年なら、「スタッドレスタイヤを買うか、ガマンするか?」でいつも悩むのだ。
北海道や東北といった降雪地域ならスタッドレスタイヤは冬の必須アイテムだから、なにがなんでも履き替えなければならないだろうが、東京など、非降雪地域に住んでいると、なければないでなんとかなってしまうし、雪が降ったらクルマで出かけるのをやめれば済むという人も多い。でも、クルマで移動することが多い人、あるいはどうしてもクルマで移動しなければならない人にとっては、スタッドレスタイヤは転ばぬ先のつえ。雪のシーズンが訪れる前に手を打っておきたいところだ。
ただ、そうはわかっていても、スタッドレスタイヤを新調するとなると、出費はそれなりに大きいし、マンション住まいだとサマータイヤの保管場所にも困る。また、場合によっては、「スタッドレスタイヤも必要だけど、その前に減ったサマータイヤをなんとかしないと、来月に迫った車検が通らない」なんて悩んでいる人がいるかもしれない。自動車税の納入がある5月とともに、秋は悩ましい時期であるのだ。
そんな悩みを解決するかもしれないのが「オールシーズンタイヤ」。通常のサマータイヤと同じ使い勝手でありながら、突然の雪にも対応できる優れモノだ。これなら、冬でもドライ路ばかりを走る私のようなドライバーには好都合。さらに冬が終わってもそのまま履き続けられるので、交換の手間や、外したタイヤの保管場所に頭を痛めることもない。
オールシーズンタイヤという選択
このオールシーズンタイヤ、欧米のSUVなどに標準装着されることがあるので、その存在は知っていた。実際、以前試乗した「ジープ・レネゲード トレイルホーク」には、グッドイヤーの「ベクター4シーズンズ」が装着されていて、舗装路で乗るかぎり、乗り心地やグリップ感はサマータイヤとほぼ同じ印象だったし、スタッドレスタイヤが不得意とするウエットコンディションでも不安なくドライブすることができた。ただ、実際に自分のクルマに履かせたことはないし、ましてや雪道を走った経験もない。「本当に雪道でも大丈夫なの?」というのが正直な気持ちである。
果たしてその実力は……と思っていたところ、スキー場内の特設コースで試乗するチャンスが舞い込んできた。タイヤは前述のグッドイヤーが2016年8月に発売した「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」。日本向けにサイズを拡大するのを機に、日本生産をスタートさせるという、なかなか気合の入った製品である。
試乗会場には、ベクター4シーズンズ ハイブリッドと同社のスタッドレスタイヤ「アイスナビ」が比較できるよう試乗車が用意されている。その顔ぶれは、SUVやミニバン、トヨタの「プリウス」といった乗用車など。プリウスはFFとE-Fourがあり、非降雪地域のユーザーとしてはぜひとも4WDじゃないクルマでその走りを試したいところだ。
というわけで、さっそくFFのプリウスに乗り込む。まずはスタッドレスタイヤを装着した試乗車をドライブするが、圧雪されたコースでは無理なステアリング操作やむちゃなスピードで走らないかぎり、不安のないドライビングが楽しめる。雪の下からところどころツルツルに凍った路面が顔を出したりしていたが、それでも余裕を持ってステアリングを握ることができた。
冬用タイヤ規制にも対応
そしていよいよオールシーズンタイヤでコースイン。見た目は普通のタイヤだけに、最初は半信半疑だったが、走りだすとわりと普通に運転できる。サマータイヤでは到底無理という雪道だが、動き出しからしっかりと路面を捉えてくれるし、カーブでも案外ちゃんと曲がってくれるのだ。スピードの出し過ぎにさえ気をつければ、雪道でも十分いけそうである。
もちろん、直接比べてしまうと、直進安定性やコーナーでの踏ん張りなどはスタッドレスタイヤのほうが一枚上手で、楽に雪道をドライブできるが、東京で年に数回の雪に備えるというならこれで十分だし、コストや手間を考えるとむしろオールシーズンタイヤを選ぶメリットはある。4WD車であれば、雪道の挙動はさらに安定しており、また、雪だけでなく泥(マッド)にも強いことを考えると、サマータイヤよりもむしろオールシーズンのほうが好ましいくらいだ。
ちなみに、ベクター4シーズンズ ハイブリッドでは、ヨーロッパでウインタータイヤであることを示す“スノーフレークマーク”が記されるのに加えて、日本のウインタータイヤを表す“SNOW”の文字が追加されるため、高速道路等で冬用タイヤ規制が敷かれる場合でも胸を張って走行することができる。
ライフスタイルによっては、オールシーズンタイヤで十分という場合もあるので、これから冬に備えようと考えている人は、スタッドレスタイヤに加えて、オールシーズンタイヤも購入候補に加えておくことをお勧めする。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。