メルセデス・ベンツCLA250シュポルト 4MATIC(4WD/7AT)
「まさか!」の衝撃 2016.10.06 試乗記 「メルセデス・ベンツCLA」が3年ぶりにマイナーチェンジを受け登場。地道な改良によって進化を遂げた、新型の走りとは? 「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を装備した、スポーティーな「CLA250シュポルト」に試乗した。スカしたAクラス
CLAが日本に導入された2013年7月は、安倍政権が誕生して間もない時期だった。当時、東京株式市場は昇り竜状態で、「20年ぶりに日本経済復活か!?」という期待感に満ちていた。
人間、景気が良くなると、自然と消費意欲が増す。景気が良くなれば誰かは儲(もう)かるので、たとえ自分のフトコロは潤っていなくても、誰かクルマを買い替えたのを見て、「じゃ俺も買おうかな」という気になるからだ。
クルマ選びにも変化が出る。不景気だと堅実になり、好景気だと冒険的になる。不景気下に派手なクルマを買えば世間に後ろ指をさされる気がするが、好景気で地味なクルマを買うのは、「豊かになるレース」の敗者に思えるからだ。つまり、CLA登場のタイミングはドンピシャだった。
CLAは「Aクラス」や「Bクラス」と共通のプラットフォームを使った4ドアクーペ&シューティングブレークだが、コンセプトは「スカしたAクラス」だ(ろう)。Aクラスは明らかにメルセデスのラインナップのボトムだが、CLAはパッと見、Aクラスよりかなり羽振りが良さそうに見える。値段もそれなりにお高くなってますし。
3年前の第一印象は、正直なところ、「小さいなりして頑張っちゃってるな~」だった。4685mmという全長で、優美な尻下がりのフォルムを持つ4ドアクーペを作ろうとした結果、寸足らずな印象が出ていたからだ。しかしだからこそ、「実用性よりカッコ重視!」という景気の良い自己主張があって、日本市場にはジャストタイミングと思ったものだ。
その後アベノミクスは消費増税で腰折れし、CLAもいまひとつブレークし切れていないが、そんなこととは無関係に、登場から3年余りたったこの8月、マイナーチェンジを受けたという流れでございます。
密かなる進化
今回のマイナーチェンジは、景気停滞を反映して(?)、表向き思い切り地味だ。パワーユニットにはあまり変更はなく、ルックスの変更も細部にとどまっている。
一応列挙すると、
●フロントマスクのロワーグリルが、従来の3分割から水平基調になった。→正直、言われなければわからないかもしれません。
●リアのテールパイプはバンパーと一体となり、リアコンビネーションランプのデザインも変更された。→これは、言われなければわかりません。
●インテリアでは、8インチへと大型化されたワイドディスプレイが全車標準装備となったほか、視認性を向上させるべくメーターの一部に新たなデザインが盛り込まれた。→申し訳ないことに、またしても言われなければわかりません。
●アップルのカープレイに加えて、グーグルのアンドロイドオートにも対応し、スマートフォンのインターフェイスを車載ディスプレイで操作できるようになった。→カープレイを試しましたが、アイフォーン内の音楽を簡単に再生できて良かったです。
●全車、走行状態や天候に応じて配光モードを自動的に切り替える「LEDパフォーマンスヘッドライト」を搭載した。→言われなければわからないけど、暗くなってからも大変快適でした。
前述の通りパワーユニットにはあまり変更はなく、以下の3種類が用意される。
●「CLA180」/1.6リッター直4ターボ(最高出力122ps/5000rpm、最大トルク20.4kgm/1250-4000rpm)
●「CLA250」/2リッター直4ターボ(同218ps/5500rpm、同35.7kgm/1200-4000rpm)
●「AMG CLA45」/2リッター直4ターボ(同381ps/6000rpm、同48.4kgm/2250-5000rpm)
トランスミッションは、すべてデュアルクラッチ式の7段ATとなっている。
今回試乗したのは、このうち2リッター直4ターボ+7段デュアルクラッチを搭載したCLA250シュポルト 4MATICだ。
想像を超えるエンジンフィール
パワーユニットには数値上あまり変化はないのだが、乗って驚いた。
エンジンの吹け上がりがメチャクチャ気持ちいい! もう、まるで別のクルマのように感じる。3年前の登場時の面影はないし、1年前の「シューティングブレーク」登場時からも明らかに変わっている。
これは、フライホイールを軽量化したような軽やかさとでも言えばいいのだろうか? かといって回転フィールが神経質になったわけではなく、ただただピックアップがシャープになり、軽くアクセルを踏み込む程度でも、「クォ~~~~ン」という上昇感が実に心地よい。
218ps/35.7kgmのパワー/トルクは、約1.5tのボディーに対して十二分だが、動力性能よりもまず快感が先に来た。メルセデス・ベンツというブランドはこうじゃなかったはずなのに! まさかCLA250に乗ってエンジンフィールに打ち震えるとは。
一体何を変えたのか? それに関して何のリリースも出ていない。地味なプログラミングの変更だけということですかね? メルセデス・ベンツ日本によると、「表に出ない改良は常に行われている」とのことだが、”エンジンフィールを大幅に改善”とかなんとか、ちょっとはリリースに書いておいてもらいたい、と思うくらいイイ。
こんなに気持ちいいとは
足まわりのフィールもかなりイイ。「250シュポルト」が出た当時は、かなり固められたスポーツサスという印象だったが、大幅に快適性が増している。
特にイイのはスポーツモードだ。多少のゴツゴツ感はあるが、とにかく姿勢がフラットで、滑るように走る。コンフォートモードにすると、ソフトになる分ダンピングが不足し、揺り戻しが来てしまうので、個人的には一般道から高速巡航まで、すべてスポーツの方が快適に感じた。
欲を言えば、コンフォートモードのセッティングをあと一歩詰めてもらいたい。しなやかでいながらもう少しサスの動きをすぐ収束するような方向に。現状はバネに対してダンパーが追いかず、コンフォートにするとかえってコンフォート性が落ちる。そこは要改良ですね。
250シュポルトは4MATIC仕様のみだが、ワインディングでも4WDをまったく感じさせないほど自然で、高速巡航では無類の安定性を発揮する。縁の下の力持ちさんありがとう。
このCLA250シュポルト 4MATICを有り体に言えば、カッコも足まわりも何もかもフッ飛ぶほど、エンジンが気持ちいいクルマであった。今、メルセデスの「250」はみんなこうなっているのだろうか? 直近、他モデルはすべて未確認だが、皆さまもディーラーで試乗してみることをおすすめします。「まさか!」の衝撃でした。
(文=清水草一/写真=池之平昌信)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLA250シュポルト 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4670×1780×1430mm
ホイールベース:2700mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:218ps(160kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y/(後)235/40ZR18 95Y(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:13.8km/リッター(JC08モード)
価格:579万円/テスト車=630万7000円
オプション装備:AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(本革シート<レッドステッチ入り>+メモリー付きフルパワーシート<前席>+レザーARTICOダッシュボード<レッドステッチ入り>+レザーARTICOドアパネル(レッドステッチ入り)+アンビエントライト<マルチカラー、ウェルカムファンクション機能付き>+パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>+ハーマンカードン・ロジック7サラウンドサウンドシステム)(45万円)/メタリックペイント(ポーラーシルバー)(6万7000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:712km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:348.5km
使用燃料:33.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.4km/リッター(満タン法)/10.4km/リッター(車載燃費計計測値)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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