ランドローバー・レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSEダイナミック(4WD/9AT)
見かけるたびに感動する 2016.12.16 試乗記 “SUVのオープンモデル”という、古くて新しいカタチを具現した「レンジローバー イヴォーク コンバーチブル」に試乗。そのスタイリングにすっかりほれ込んでしまった筆者が、走りの中身を確かめた。モダンとクラシックが同居
レンジローバー イヴォーク コンバーチブルを、街で見かけるたびに感動する。こんなカッチョいいデザインのSUVが製品化されるなんて! イギリス人は時々、こういうキテレツなことをシレッとやってくれる。
幌(ほろ)を閉じていれば車高の高いスポーツカー、開けると「キューベル・ワーゲン」のようでもある。モダンとクラシックが同居している。初代「ゴルフ」のカブリオレに相通じるところもある。どちらも四角くてくさび形で、ま、理屈はなんであれ、カッコイイ。
SUVなのにスモールキャビンで、オーバーフェンダーの「イヴォーク」が素晴らしかったということもある。そのイヴォークをオープンに仕立ててしまった「いき」の方向が「いき」なのだ。実に意表を突いている。
コンセプトそれ自体を古典に求めた、と言えるのではないか。「スポーツ・ユーティリティー・ヴィークル」、すなわち「SUV」なんて言葉が生まれる以前、“ジープ”とかオフロード4WDとかMPV(マルチ・パーパス・ヴィークル)とか4×4とか言われていた時代には、「ジープ」が基本的にオープンカーだったから、かどうかは知りませんけれども、例えば「ランドローバー」にも「ランドクルーザー」にも「ジムニー」にも、幌型のモデルは用意されていた。
発売は称賛に値する
イギリスには「MINIモーク」なんていうのもあった。ということで思い出したのだけれど、2010年に筆者が「MINIカントリーマン(日本名:MINIクロスオーバー)」の国際試乗会に参加したおり、次はオープン版を出さないのですか? と開発担当者に尋ねたところ、「売れるなら出しますよ。あなたは買ってくれますか?」と切り返された。「うっ」と私は言葉に詰まった。負けた……。その後、この担当者はロールス・ロイスの社長になり、ホンモノの「砂漠のロールス・ロイス」を開発中である。
閑話休題。つまり、イヴォーク コンバーチブルは古くて新しい、ということを申し上げたかった。本国で発売されたのは2015年11月のことで、「世界初のプレミアム・コンパクトSUVのコンバーチブル」という表書きが添えられていた。マーケティングにたけたBMW MINIの開発担当者も二の足を踏んだオープンモデルを、いち早くラインナップに加えたのだから称賛に値する。
前置きが長くなりすぎた。要するに筆者は感動した。イヴォーク コンバーチブルは3ドアクーペをベースにして、屋根をカットし、代わりにZ型の格納式幌を取り付けている。乗車定員が4人になるのは、幌の骨組みが内側に向かって若干張り出し、後席を狭くしているからだ。
幌はセンターコンソールのスイッチひとつで自動開閉する。開くのに21秒、閉じるのに18秒しかかからない。これは窓ガラスの開閉も含めての数字で、幌屋根だけだったら15秒ほどで完了する。しかも、48㎞/hまでなら走行中も開閉できるから、信号待ちで気軽に開閉スイッチに手を伸ばせる。信号が青になったらどうしよう……という心理的ストレスがない。
“男のクルマ”なのだ
夜、空は薄曇りだったけれど、取りあえずオープンにして走り始める。寒さ対策にはシートヒーターが付いている。テスト車のシートにはマッサージ機能も付いている。
予想に反して、ボディーは実にしっかりとしていた。ホイールベースよりも長く、もともとは5座のキャビンの屋根とピラーがすっぱりカットされているのに、カッチリ感があるのはコンピューター解析なり、長年の蓄積なり、あるいは試行錯誤なりによってしっかり補強がなされているからだ。
乗り心地は素晴らしくよい、というわけではない。適度に硬くて、そこが味になっている。“男のクルマ”なのだ。もちろんタイヤがデカイこともある。全長4355mmの小型車で、20インチを標準装備する。
車重は2tを20kgだけ超えている。3ドアの「イヴォーク クーペ」は1760kgだから、コンバーチブル化によって260kgもの重量増を招いたことになる。それだけ補強してある、とも解釈できる。上屋の重さが、硬いなりに適度な乗り心地のよさをナチュラルにつくりだしている。「アダプティブダイナミクス」と呼ばれる可変ダンパーの設定がないことがむしろシンプルな潔さを生んでいる。
そこが好ましい。
コーナーでは冒険的な気分に
オールアルミの「Si4」2リッター直噴4気筒エンジンはターボチャージャーの空気の力で、最高出力240psを5500rpmで、最大トルク34.7kgmを1750rpmで発生する。組み合わされるZF製のオートマチックギアボックスは9段で、これがトルクを拾いまくって、2tの車重を感じさせない。変速は素早くて滑らかで、2リッター直噴ターボを気持ちよく歌わせる。乾いた男性的な音色が控えめにドライバーの耳に飛び込んでくる。
260kgの重量増にもかかわらず、ATのギア比の設定は変わっていない。自然吸気にして3.5リッター並みのトルクがあるから、その必要を認めなかったのだろう。小排気量をターボで補う、空気ポンプみたいなフィールは、慣れると軽快に思えてくる。
ガラスウォールの巨木に囲まれた夜のコンクリートジャングル。着座位置が高めなので見晴らしがいい。首都高のコーナリングはやや腰高感があって、冒険的な気分にさせる。
アフリカの天気は変わりやすい(ホントは東京です)。ポツポツと雨が降ってきたが、首都高速上なので走り続ける。雨粒がフロントガラスに落ちてきて、やがてワイパーを動かすことになる。ゴムで拭われた雨がAピラーから後方に流れていき、基本的に前方からは室内に入ってこない。もちろんサイドのガラスは上げている。
最もインプレッシブ!
2016年に筆者が試乗した中で、イヴォーク コンバーチブルは最もインプレッシブな一台となった。欲しい、と思った。しかしながら、問題はお銭である。車両価格765万円はいいとして(強がり)、テスト車にはアダプティブクルーズコントロールだの、マッサージ機能付きシートだの、シートヒーターだの、ブラックデザインパックだの、総額208万6000円ものオプションが付いていた。
世界初のプレミアムコンパクトSUVのコンバーチブルは1000万円級なのだ。コンパクトなクルマで贅沢(ぜいたく)を表現するのはむずかしい、というのが一般論だけれど、イヴォーク コンバーチブルは軽々とその壁を乗り越えている。これはお金持ちのサンダルである。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSEダイナミック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1900×1650mm
ホイールベース:2660mm
車重:2020kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:240ps(177kW)/5500rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)245/45R20 103V/(後)245/45R20 103V(コンチネンタル・コンチクロスコンタクト)
燃費:9.6km/リッター(JC08モード)
価格:765万円/テスト車=973万6000円
オプション装備:メタリックペイント(0円)/インテリアトリムフィニッシャー<グロスブラックストラータ>(5万4000円)/ACC(12万3000円)/フロントシート・ヒーター&クーラー(15万5000円)/電動調整式14ウェイフロント・シート+運転席・助手席シートメモリー+運転席・助手席マッサージ機能(25万9000円)/アダプティブLEDヘッドランプ(30万4000円)/ラグジュアリーパック(70万1000円)/ブラックデザインパック(35万7000円)/コールドクライメートコンビニエンスパック(7万9000円)/ウェイドセンシング(5万4000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2273km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:279.9km
使用燃料:42.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.5km/リッター(満タン法)/7.6km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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