第391回:LAで気になる新車にイッキ乗り!
ワールド・カー・アワード試乗会に参加して
2017.01.10
エディターから一言
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世界23カ国のジャーナリストが選ぶ世界規模のカー・オブ・ザ・イヤー「ワールド・カー・アワード」をご存じだろうか。イヤーカーは2017年4月のニューヨークショーで発表される予定だが、それに先立ち、アワード選考のための試乗会が去る11月にロサンゼルスで開催された。そこには、とても興味深いあんなクルマやこんなクルマの姿が……。ショートインプレッションをダイジェストでお届けしよう。
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オススメはAT仕様――フィアット124スパイダー
ロサンゼルスモーターショー(2016年11月14日~27日)開幕のタイミングに合わせ、今回もワールド・カー・アワード主催による試乗会が、ロサンゼルス北東部パサデナのホテルをベースに開催された。
世界各国から70人を超える自動車ジャーナリストが、直近1年間に発売されたグローバルモデルを、さまざまな角度から評価するワールド・カー・アワードのプログラム。今回行われた試乗会は、2017年4月に開催されるニューヨークモーターショーでのアワード決定に向けての、重要なイベントとしての意味を持つものだ。
そんな今回の試乗会には、“日・米・欧・韓”という4つの地域から、合わせて25のノミネート車が集結した。その中から、日本ではなかなか乗れないもの、あるいは、日本ブランドの作品でも国内販売が行われていないものなどを選び、早速パサデナの街中とその周辺フリーウェイ、そしてワインディングロードでテストドライブした。ここにそのファーストインプレッションを集めてお届けしよう。
さて、日本ではアバルトブランドのみで販売される「124スパイダー」だが、今回テストドライブしたのはそのベースであるフィアットブランドの“素”の124スパイダー。日本向けのアバルト仕様は170psだが、アメリカ向けのアバルトの最高出力表記は164hp。これに対して、フィアット版のベースバージョンに積まれる同じ1.4リッター・ターボユニットが発生する値は160hpと、実はその差はわずか4hpにすぎない。
MTとATが用意されるトランスミッションのうち、今回のテスト車は後者の仕様。ギアの数が6段にとどまるのは物足りないが、アバルトのMT仕様では気になった蹴り出し時のトルクの不足感は全くなく、実はエンジンが必ずしもアクセルレスポンスの点で優れたものではないということに加えて、「オススメは文句ナシにATの方」というのが、“出典”である「マツダ・ロードスター」とは大きく異なるポイントだ。
ちなみに、アバルト版と比較をしてもその力強さに物足りなさは覚えなかったが、走行中ちょっと残念に思えたのは、シフトパドルが用意されていないこと。
コンクリート路面の継ぎ目が連続するフリーウェイ上でもヒョコヒョコしないフットワークは、マツダブランドを含む“広島産ロードスターファミリー”の中にあっても随一の仕上がり、というのが率直な印象だった。
アメリカでは主役はこちら――トヨタ・プリウスPHV
ベースの「プリウス」に負けないハイブリッドモード時の低燃費を実現するため、テールゲートにはCFRP(炭素繊維強化樹脂)を用いた専用アイテムを採用。が、皮肉にもその供給体制に問題があるらしい……と、発売延期の理由がうわさされた新型「プリウスPHV」。その米国向け名称が「プリウス プライム」だ。
日本国内ではいまだ実現していない公道試乗のチャンスを、こちらロサンゼルスで先に得ることができた。ホテル地下駐車場の充電器によって“満充電”とされたところで、早速のスタート。
地下駐車場から地上へと向かう急な上りのスロープも含めて、アクセルペダルを床まで踏み込んでもエンジンがすぐには始動しないのは、通常のプリウスと大きく異なる点。
正確には、アクセル全開状態をしばらくキープするとエンジンが始動。そのエンジン出力も上乗せすることになったが、こうしてバッテリーの充電状況にゆとりがあるうちはエンジンが始動する場面はまれ。結果として、ピュアなEVという雰囲気が通常のプリウスよりもはるかに強いのが、このモデルの走りの基本テイストといっていい。
このモデルには、通常のプリウスでは発電専用に用いられる“第2のモーター”が駆動力を発するモードがある。それゆえ、より幅広い領域でエンジンパワーに頼らない走行が可能であることも、EV風味の色濃さと大いに関係がある。
が、それでも「絶対的にもう少し強い加速力が得られれば」と思えてしまったのは、“TNGA”と呼ばれる新骨格が生み出すシャシー能力に、従来型をはるかに超えた余裕が感じられるからでもある。
実は、アメリカでは標準型プリウスのような単なるハイブリッド車は、もう“エコカー”としてはカウントしなくなる。「補助金を含めれば、ベースのプリウスと逆転する」といわれる価格設定も、今後はこちらプライムが主流となることを示唆しているかのようだ。
侮れぬ実力――ジェネシスG90
日本ではほとんど知られず、話題にもなっていないものの、だからこそ気になってしまったのがこのモデル。実はジェネシスはヒュンダイが2015年に立ち上げた高級車ブランド。「G90」は、米国で発売されたばかりのフラッグシップセダンだ。
内外装は、いずれも「先行するライバル各車を真面目に研究して仕上げたな」と想像ができるもの。
堂々たるサイズから確かに立派には見えるし、各部の質感も、なるほどそんな周辺モデルたちに見劣りしないが、そんな見た目に関しては、どこか“既視感”を抱く部分が多いというのが率直な第一印象。例えば、横長ディスプレイを大胆に使ったダッシュボードやテールレンズのグラフィックには、やはり“メルセデスコンプレックス”を感じてしまったりするのだ。
ところが、静粛性はもはや間違いなく世界のトップクラスといえる水準にあったりと、走り始めると感心をさせられる部分も少なくない。今回テストしたのはツインターボ付きの3.3リッターV6エンジン車だったが、ここは5リッターのV8モデルも、ぜひとも試してみたかったところだ。
少なくとも、なぜかモデルチェンジを先延ばし(?)にしてきた「レクサスLS460」などは、もはや多くの部分をキャッチアップされてしまっている。
“歴史と伝統”がモノをいう欧州の市場とは異なり、「安くて良いもの」であれば即物的に受け入れるのがアメリカ市場。下手をすると、これは“家電の二の舞”になりかねないナ……と、ちょっとそんな怖さを感じさせられた。
サイズも走りも北米スケール――マツダCX-9スポーツ
ネーミングからも判断できるように、マツダ最大の作品。日本でのラインナップを目にして「マツダは3列シート車から撤退した」と思っている人も多いかもしれないが、どっこい、アメリカ市場でローンチされたばかりのこの作品は、マツダの“最新3列シートモデル”なのだ。
とはいえ、この地で目にしても「大きいナ……」とつぶやきたくなるその巨体は、仮に日本に導入されたとしても、どうにも持て余してしまいそう。一方で、その原動力である最高250hpを発する最新の2.5リッターターボ付き4気筒エンジンは、聞けば「CX-5にも積めないわけではない……」というから、こちらは日本でもお目にかかれる可能性がありそうだ。
大人6人乗りでのドライブも試したが、3列目シートもそれなりのヒール段差(フロアからヒップポイントまでの高さ)が確保され、よほどの長時間でなければさほどの我慢も必要なし。ただし、3列目シートへの出入りは大変だし、後面衝突された場合の恐怖心も伴うので、“5+2シーター”と考えるのが適切であることは確かだが。
重量は1.8t超であるものの、スタートの瞬間からなかなかのトルク感。フットワークも現行マツダ車中で最もしなやかと感じられて好印象であるものの、時にショックを伴う6段ATと、停止寸前で“職場放棄”をし、肝心の渋滞の中で使えないACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の2点が、2大残念ポイントだ……。
さらなる熟成を期待――インフィニティQ60
なかなかのルックスの良さと、最高400hpを発する新開発のツインターボ付き3リッターV6エンジン搭載と聞いて、大いに期待をしていた「インフィニティQ60」。
ところが、ドライバーズシートへと乗り込みスタートという段階で驚愕(きょうがく)の事実が判明。何と最新モデルにも関わらず、パーキングブレーキには旧態依然の“足踏み式”が採用されているのだ。この期に及んで一体どうしてしまったのか?
そんな戸惑いは、走り始めるとさらに加速をすることに。
路面凹凸をダイレクトに拾い、ストローク感に乏しいフットワークは、これでは長距離ツーリングに出掛けようという気持ちにはとてもなれないし、オプション装着されていた例のバイワイヤ式“ダイレクトアダプティブステアリング”も、残念ながら不自然さばかりが気になってしまう違和感の塊という印象。
7段ATと組み合わされた前出の最新エンジンは、確かにパワフルでスムーズに回ってくれるものの、そんなパワーパックの好印象な仕上がりも、このシャシーとの組み合わせでは残念無念。
日本市場には次期「スカイライン クーペ」として遠からず登場するはず。願わくば、母国に向けては何とかシャシー性能の熟成を進めた状態でデビューしてほしい。
SUV先進国の佳作――キャデラックXT5
アメリカきってのプレミアムブランドから放たれた最新SUVが「XT5」。日本のインポーターからは今のところ発売のアナウンスは聞かれないものの、事実上「SRX」の後継モデルであることを考えると、それが現在「SRXクロスオーバー」の名称で発売されている日本にも、今後導入される可能性も高そうだ。
内外装はそれなりに個性的なデザインであるものの、インテリアに採用された木目(調?)パネルがちょっとチープな質感であったりと、良くも悪くも“アメリカ車”を感じさせられる部分も。
それでも、シートサイズはたっぷり。かつ、前席に対してかなり高い位置にセットされた後席からの見晴らしはすこぶる良く、静粛性にもたけているので、なるほど広大な風景の中で、ドカンと広いフリーウェイを長時間流したりするには、なかなか快適であろうことは容易に想像がつく。
4輪の接地感が思いのほか高く、ステアリング操作に対する舵の利きも正確……というのは、実はキャデラックの最新作に共通する美点。それゆえに、経営危機へと陥った際に、まず右ハンドル仕様が“仕分け”されてしまったのは残念無念だ。
(文=河村康彦/写真=佐藤靖彦/編集=竹下元太郎)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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