第8回:ガソリン大好き!
2017.01.12 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして![]() |
ついに……ついに本連載でこの話題に触れる時が来てしまった。そう。燃費のお話である。乗用車としては当時の世界最大排気量(webCGほった調べ)を誇った「ダッジ・バイパー」さまのこと、さぞや極悪であるに違いない。今、webCGがアメ車界最大のタブーに触れる!
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カタログ値がアテにならないのは日米共通
リードで散々あおっておいて恐縮だが、まずはおわびと訂正から。
本連載の第6回で紹介した運転環境の悪さについて、この正月にドライビングポジションをああだこうだした結果、解消とまではいかないものの、ずいぶん改善されてしまった。
地味なドラポジの話なんて退屈だと思うので詳細は割愛させていただくが、結果としてハナ先の見切りの悪さが3割ほど、後側方のそれが1割ほど軽減された感じである。クラッチの操作についても、もうペダルを抜く際にディーゼルノイ・チョー・タナスカンばりのヒザ蹴りをハンドルにかます必要はなくなった。まさにいいことずくめである。
読者諸兄姉の皆さま、ドラポジはホントに大事です。まずは自戒を込めて報告させていただきます。
で、ここからが今回の本題、バイパーの燃費のお話である。
たいした数が生息しているわけでもないのに、ここ日本でもすっかり大飯食らいのイメージが定着しているわが相棒。記者が碌(ろく)を食(は)むギョーカイ内でさえ、「燃料計の針が動いているのが見える」「箱根まで出掛けたら帰ってこられない」といった都市伝説がささやかれているのだからたいしたモンである。
しかし、そもそも皆さん、このクルマの“カタログ燃費”をご存じなのだろうか? 記者はもちろん知らなんだが、第4回にてS氏よりいただいた当時の書籍を読み込んだところ、2000年モデルのそれはEPA(環境保護庁)審査値で「city/highway……12/21mpg」という記述を発見した。ようするに「下道が5.1km/リッター、高速が8.9km/リッター」である。
EPAよ。いくらなんでもサバを読みすぎだろう。少なくとも東京近郊の道路状況でこの数字を出すためには、10本あるうちの6本くらいのシリンダーからインジェクターを引っこ抜く必要がある。いやいや、心配は無用。それでも排気量は3.2リッターですから。
冗談はさておき、記者は本連載が始まる前から、「何かの役に立つかも」と思い、せっせこバイパーの走行記録をメモしてきた。次のページからは、これまでの2カ月半で記録した給油量とオドメーターの履歴、そこから算出した実燃費などを紹介させていただく。ただのメモなので、面倒くさい人は4ページ目まで飛ばしてください。
バイパーの実燃費を赤裸々公開(その1)
(0)2016年10月23日
場所:express中央石油販売東名川崎SS
オド:4万4431マイル(7万1534km)
トリップ:--km
給油量:52.18リッター
平均燃費:--km/リッター
走行ルート:納車直後のバイパー初給油 悪夢の始まり
※計測を開始するためのリセット給油
(1)2016年11月6日
場所:ヤマヒロせるふ武蔵野
オド:4万4559マイル(7万1740km)
トリップ:206.08km
給油量:41.59リッター
平均燃費:4.96km/リッター
走行ルート:川崎IC最寄りのスタンド→市川の実家→武蔵野
(2)2016年11月6日
場所:ENEOSエノモト三鷹中央SS
オド:4万4692マイル(7万1954km)
トリップ:214.13km
給油量:33.04リッター
平均燃費:6.48km/リッター
走行ルート:武蔵野-片貝往復
(3)2016年11月19日
場所:ヤマヒロせるふ武蔵野
オド:4万4737マイル(7万2027km)
トリップ:72.45km
給油量:12.36リッター
平均燃費:5.86km/リッター
走行ルート:記憶にありません
※同給油時に、タイヤ空気圧を前後とも2.3から2.1に変更
(4)2016年11月27日
場所:出光田村産業プロントカフェ調布
オド:4万4846マイル(7万2202km)
トリップ:175.49km
給油量:36.73リッター
平均燃費:4.78km/リッター
走行ルート:武蔵野-湘南T-SITE往復ほか
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バイパーの実燃費を赤裸々公開(その2)
(5)2016年12月4日
場所:ヤマヒロせるふ武蔵野
オド:4万4943マイル(7万2358km)
トリップ:156.17km
給油量:31.05リッター
平均燃費:5.03km/リッター
走行ルート:武蔵野→勝どき→相模原→勝どき→武蔵野
(6)2016年12月4日
場所:express中央石油販売練馬関町SS
オド:4万5091マイル(7万2597km)
トリップ:238.28km
給油量:40.98リッター
平均燃費:5.81km/リッター
走行ルート:武蔵野を出て、箱根・御殿場をぐるり
(7)2016年12月25日
場所:express武蔵石油野崎SS
オド:4万5163マイル(7万2712km)
トリップ:115.92km
給油量:31.03リッター
平均燃費:3.74km/リッター
走行ルート:武蔵野・三鷹周辺で普段使い
(8)2016年12月31日
場所:ENEOSフロンティア千葉支店Dr.Driveセルフすが野店
オド:4万5255マイル(7万2861km)
トリップ:148.12km
給油量:29.80リッター
平均燃費:4.97km/リッター
走行ルート:武蔵野・三鷹周辺で普段使い+市川へ帰郷
(9)2017年1月8日
場所:ヤマヒロせるふ武蔵野
オド:4万5429マイル(7万3141km)
トリップ:280.14km
給油量:43.71リッター
平均燃費:6.41km/リッター
走行ルート:市川-箱根往復+懐かしの武蔵野へ
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冬場の燃費は良くて6.5km/リッター
……なんというか、社用車でもないのにわれながらよくメモしておいたもんである。書き写しているうちにあきれてきた。
それはさておき、初回のリセット給油を含めて都合10回スタンドのお世話になり、9回分の記録が得られたバイパーの燃費データ。まず注目していただきたいのが、これまでの最高値を達成した(2)の記録である。本連載の第5回で紹介した、悪夢の九十九里ツアーのものだ。
このときは調布ICから中央自動車道に乗り、千葉までは首都高湾岸線/東関東自動車道を使うという、いささか大回りなルートを利用した。特になにかを意図したわけではなく、初めての遠出で、狭い道をくねくね走りたくなかったのだ。
とはいえ、記者の経験からすると湾岸線は小松川線(ともに東京から千葉へと向かう道である)より平均速度が速く、また休日は“ディズニーランド渋滞”さえかわせば前走車に道をふさがれることも少ない(……気がする)。ルート全体を眺めてみても、千葉東金有料道路を除いて険しい山越えはなく、また全行程のほとんどが有料道路。しかも当日は早朝出発の午前戻りだったので、下道でも一度も渋滞にははまらなかった。
期せずして、この回のお出掛けには省燃費ドライブの好条件がそろっていたのだ。
恐らく、このとき記録した6.48km/リッターが、常識的な使用におけるバイパーの“最高燃費”だろう。同じく、非常な好条件が重なった(9)……初日の出ツアー+α の燃費が6.41km/リッターだったことからも、われながら、これはけっこう信ぴょう性のある考察ではないかと思う。季節による変化を度外視してはいるものの(一般に、クルマは冬より夏の方が燃費が良いのだそうな)、ひとつの指標としてこの数字を覚えておこう。
一方で、最悪の燃費となったのが(7)の3.74km/リッターである。確かに、この期間はちょこまかとした地元での“普段使い”が主だったが、甲州街道や環八の休日渋滞に突撃するような愚行は犯さなかったはず。それでも見事に4km/リッターを切ってくるあたり、“ガスガズラー”としてのバイパーの矜持(きょうじ)を見た思いである。
以前、バイパーを使って世田谷-国立間を下道で往復したという御仁から、「市街地での燃費は、2か3ですよ」とアドバイスいただいたことがある。このカンジだと、恐らくそれはこけおどしではなさそう。本当に勘弁していただきたい。
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いっぱい食べる君が好き
最後に、これら9回分の走行データをもとに、これまでのダッジ・バイパーの平均燃費を算出してみた。結果は以下の通りである。
走行距離:1606.78km
給油量:300.29リッター
総支払額:3万6809円
平均燃費:5.35km/リッター
……うーん。なんと言うべきか。
悪いね。確かに悪いよ。でも許容範囲というか、想定の範囲内というか。
正直、もっとバイオレンスな数字を予想していたので反応に困る。しかも、わがバイパーは前後ともタイヤの外径が標準より大きくなっているので、実際の走行距離は上述の数値より長い……すなわち、実際の燃費がもっと良い可能性すらある。これは困った。燃費が良くて困るというのも変な話だけど。
なんとかオチをつけられないものかと隣席の藤沢青年に相談したところ、「大丈夫ですか? 5km/リッター台で燃費が良すぎるとか、頭沸いてんじゃないですか?」とまくし立てられた。伊藤園の紅茶のボトル(450ml)を振りかざし、「僕の家(荻窪)から新宿に行くまでに、これが2本なくなっちゃうんですよ!」と力説する始末である。
まあまあ、落ち着きたまえよ藤沢青年。5km/リッター台の燃費といえば、直近の試乗記を見たところベントレーやアストンの12気筒モデルと同じくらいじゃないか。2リッターも排気量の小さなクルマと燃費が一緒なんて、バイパーはなんてエコなんでしょう。
それと、荻窪から新宿までの距離はだいたい7~8kmだから、そのペットボトルだと3本分だよ。
(webCGほった)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。