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第437回:嗚呼! ソソられまくりフランクフルト(後編) ドイツ自動車業界はバブルなのであーる!?

2011.10.07 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第437回:嗚呼! ソソられまくりフランクフルト(後編)ドイツ自動車業界はバブルなのであーる!?

かつてのバギーをモチーフにしたというフォルクスワーゲンのコンセプトカー「buggy up!」。
かつてのバギーをモチーフにしたというフォルクスワーゲンのコンセプトカー「buggy up!」。 拡大
「buggy up!」のインテリア。
「buggy up!」のインテリア。 拡大
こちらは「buggy up!」のリアビュー。
こちらは「buggy up!」のリアビュー。 拡大

円高さまさまのドイツ!?

新車出まくりフランクフルト。一方、本拠地のドイツ車はドイツ車ですごかった。なにが好印象かって、まずはフォルクスワーゲン「up!」よ。
といっても9月から本拠地ドイツで受注が始まってる実車版の方じゃない。コンセプトカーの方ね。up!は話題の9850ユーロの激安「take up!」のほかコンセプトカーが6種も出ており、それぞれ「buggy up!」「up! azzurra sailing team」「cross up!」「 GT up!」「eco up! 」「e-up」とかなりオモチャっぽい(?)ネーミング。個人的には「GT up!」は「Hurry up!」にしてほしかったが(笑)。

なかでも気になったのは海をイメージした最初の2台で、かたや60年代の「フォルクスワーゲン・ビートル」ベースのカスタムバギーで有名なブルース・メイヤー、かたやイタリアの超有名カーデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロと現フォルクスワーゲン・グループデザイン部門トップのワルター・デ・シルヴァとの共同プロデュース。特にシビれたのはヨット仕様だ。

写真を見てもらえればわかるが、とにかく華やか&爽やか!! まさしくコートダジュールのイメージだ。ウッドフレームだけの手すりといい、ウッドデッキそのもののラゲッジルームといい、見事に陸と海が溶け合っている。もう、なんちゅうか、デッキシューズ限定でしょ!

バギーの方も、ドアなしのロールバーボディーといい、ウオータープルーフのインテリアといい結構リアル。しかもアメリカっぽい。
どちらもこの市販版が出るとは思えないが、一番驚いたのは堅物フォルクスワーゲンが、ついにこういう柔らかなコンセプトを打ち出してきたこと。それもイタリアと組んで。
もちろんイタリア人デザイナーをトップに持ってくるくらいだから、グローバリズムまっただ中なのは分かるし、偏見もないのだろうが、フォルクスワーゲンがまさかラテンテイストで来るとはね。

「up! azzurra sailing team」。
「up! azzurra sailing team」。 拡大
ウッドがふんだんに使われる、個性的な「up! azzurra sailing team」のインテリア。
ウッドがふんだんに使われる、個性的な「up! azzurra sailing team」のインテリア。 拡大
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しかもこれだけじゃない。最近フォルクスワーゲンは、「フィアット500」や「アバルト」ブランドを復活させ、ヒットさせた名マーケッターであり元フィアットCEOのルカ・デメオ氏を引き抜いたそう。「up!」のイメージ戦略もまことしやかに彼が描いたとも言われるほどで、今のフォルクスワーゲンはなりふりかまってない。伸びるためには、ラテンの力も借りるし、ラテンテイストもまとうのだ!
それと実車版「up!」の方だけど、ドイツ人ジャーナリストいわく「Macintosh的」。そ、例のミニマリズム全開のアップルコンピュータ的だといい、なんだかどんどんボーダーレスになっている気がする。それも発想がね。

新型「ポルシェ911カレラ」。日本でも、来春にはデリバリーが始まるとか始まらないとか。
新型「ポルシェ911カレラ」。日本でも、来春にはデリバリーが始まるとか始まらないとか。 拡大
インテリアの様子。デュアルクラッチ式のPDKに加えて、世界初となる7段MTが採用されるのも話題のタネ。
インテリアの様子。デュアルクラッチ式のPDKに加えて、世界初となる7段MTが採用されるのも話題のタネ。 拡大

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「ポルシェ911」もラテン風味に?

それとやっぱ今回のヒーローったらポルシェでしょ、「ポルシェ911」! ついに7世代目投入で、コードネームが「991」で、「実は車名も991に!?」ってデマが回ったほどだが、個人的にはデザインが気になった。

ボディーパーツの90%が新しくなり、全長×全幅×全幅が4491×1808×1295mmと全長が56mmも長く、ホイールベースに関しては100mmも長くなったわけだが、それよりデザインがビミョーにラテンっぽくなった気がした。
これはオレの思い込み(苦笑)みたいな部分もあるけど、遠くからみた時、一瞬フロントフェンダー部に微妙に抑揚がついたように見えたのよ。911といえば、ご存じドイツの合理主義というか、古典の権化みたいなデザインで、昔『NAVI』じゃ「川で削られた石」とも表された時間に磨かれたカタチなわけだが、ついにコッチもラテンテイスト投入か!? と思ってしまいました。見間違いかもしれないけど。
でも、今あらためて写真を見てもそういうムードは否めないし、リアビューにしろ今までよりデコラティブになってるとは思う。

それとグループとして勢いがあったのはアウディだよね。コンセプトカーは「アーバンコンセプト」をクローズドとオープンの2パターンと、さらに「A2コンセプト」。量産車でも「A5」「A6アバント」に「A8ハイブリッド」「R8 GTスパイダー」、さらに意外に市販が間近のEV、「R8イートロン」も出してたくらいで、実は他じゃあまり言ってないけど、会場はすし詰め状態(笑)。

新しくしたブースが予想以上に狭かったのか、車両間隔が非常に狭くて、見やすいは見やすかったけど、写真は撮りにくかった。
でもそのブースにしろ、BMWの“ブース内コース”以上に斬新で、なんとブースの外から入って、中を通って外に出る「動くショールーム」を内設。これには驚いた。ま、日本じゃやりたくても規制が厳しくてできないって面もあるけど、ホント、勢いあんのよドイツメーカーって。

「アウディS7」
「アウディS7」 拡大
「アウディR8 GTスパイダー」
「アウディR8 GTスパイダー」 拡大
MINI初の2シーターモデル、「MINIクーペ」。
MINI初の2シーターモデル、「MINIクーペ」。 拡大

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リアには、大きく開くハッチゲートが備わる。
リアには、大きく開くハッチゲートが備わる。 拡大

いまどき2ドアを作れるMINIはすごい!

それと個人的には日本でもデビューをはたした「MINIクーペ」。もうすぐ路上でも見られるはずだけど、つくづくこんな商品、MINIブランドでしかあり得ない! と思った。だって、オープンでもないのに、2人乗りでリアのスペースは荷室だよ! イマドキこんなのを作っても日本車ブランドじゃ、売れるわけないし、買う余裕もない。

でも「MINIクーペ」、実物は実に魅力的で、欲しくなるんだよね。それは、なにより前出パソコンのMacintoshにも似たデザイン力と品質力に加え、圧倒的なブランド力で、おそらく走ったらメチャクチャ楽しいに違いない。
オシャレさはもちろん、乗った時の楽しいカーライフが想像できるから、これを作れちゃうし、おそらく売れちゃうわけで、ホント、こういう“クルマで語る夢”づくりは、今ドイツが最高にうまいよね。正直、今の日本車に足りないとこだよなぁ、コレは。

そのほか今回語らなかったメルセデス・ベンツやBMW本体も含め、圧倒のドイツ車勢。いったいなんでこんなに勢いあるんだろ? と思ってたところに、オレのドイツでの師匠、キムラさんがボソっと教えてくれた。
「なに言ってんの。ユーロ安よ。考えてみれば分かるよ。ドイツメーカーはクチに出して言わないけど、ギリシャさまさまなんだよ」

は? そうかそうそう、考えてみれば当たり前だ。2007年に1ユーロ=170円ぐらいだったのが、リーマンショック直後に120円ぐらいに落ち、今では103円ぐらいに落ちている。それは確かに通貨不安ではあるが、ことドイツ企業、それも輸出企業に限っていえば万々歳。もうかってもうかって仕方ないのだ。
実際、今年上半期、2011年の1〜6月実績でいうと、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーの乗用車部門はすべて前年比プラスで、しかも伸び率はフォルクスワーゲンが14%でBMWが18%でダイムラー、すなわちメルセデス・ベンツが9%。このペースで年内行けば、過去最高実績っつうハナシなのだ。

奇抜なカラーリングをまとうのは、「ブガッティ・ヴェイロン」の特別仕様車「ロブロン」。陶磁器のグラフィックを取り入れたという。
奇抜なカラーリングをまとうのは、「ブガッティ・ヴェイロン」の特別仕様車「ロブロン」。陶磁器のグラフィックを取り入れたという。 拡大
これは、アウディのコンセプトカー「アーバンコンセプト」。EVの小さなシティコミューターだ。
これは、アウディのコンセプトカー「アーバンコンセプト」。EVの小さなシティコミューターだ。 拡大

つまり、実はドイツ自動車業界はバブルなのであーる! だからこそ、ぶっちゃけこれだけ魅力的なクルマが出て、楽しい未来も描けるのだ。むろん、それだけじゃなく、ちゃんと骨太なクルマ作りをしてきた歴史と文化があるからだけどね。
ってなわけで驚くほど日本とムードが違うドイツ! こりゃ、つくづく東京モーターショーが楽しみですわ。いろんな意味で(苦笑)。

(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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