MINIクーパーS クロスオーバーALL4(4WD/8AT)
この大きさに納得できれば 2017.02.15 試乗記 MINI一族の中で随一のボディーサイズを持つSUV「MINIクロスオーバー」が、新型にフルモデルチェンジ。大幅なサイズアップが目を引く2代目だが、乗り込んでみると、それ以上に注目すべき進化のポイントが各所に見受けられた。従来モデルよりさらにサイズアップ
欧州名「カントリーマン」の日本向けの名が「クロスオーバー」。MINIブランドの新たなバリエーションとして、SUV的なテイストとファンクションを加えた5ドアハッチバックのそれが登場したのは2010年のことだった。
それから6年あまりの間に、MINIのバリエーションは増殖と淘汰(とうた)を重ね、現在は5つのボディータイプを擁している。中にはクロスオーバーと同じく5ドアに改められた「クラブマン」や、3ドアのホイールベースを若干延長したその名も「5ドア」があるわけで、クロスオーバーのフルモデルチェンジにあたっては、当然これらのモデルとの機能的差異を明確化する必要があった。
そう推すれば、この車格は納得できるだろうか。新型クロスオーバーの全長は現行の日本仕様よりも195mm長い約4300mm、全幅は30mm広い約1820mm、全高は約1560mmとなる。そして75mm延長された2670mmというホイールベースからもうかがえる通り、プラットフォームはクラブマンや同門のBMWの「X1」や「2シリーズ アクティブツアラー」等と同じUKLアーキテクチャーを採用。寸法的にはCセグメントのど真ん中辺りにあるわけだ。わずかに四角寄りに成形されたおかげで適度に締まった印象は受けるも、MINIとしてはちょっと大きすぎると感じる向きもいるかもしれない。
その車寸は主に後席の居住性や積載力の向上に充てがわれており、130mmの前後スライドとともに4:2:4のスプリットフォールディングを可能とするリアシートや、後席使用時でも450リッターを確保するラゲッジスペースなど、そのユーティリティーはファミリーカーとしてみても不足はない。検討する上で悩ましいのはむしろMINIクラブマンの側かもしれないが、クロスオーバーの積載容量はそれをも軽々と凌駕(りょうが)する。そして実際に後席に座ってみると前後席間は十分な広さが確保されているだけでなく、座面は小さめながら着座高は前席よりしっかりと一段高められており、前方も見通せるなど、大人4人でもゆったりできる居住性が確保されていた。
各所に見受けられる質感の向上
新しいクロスオーバーに搭載されるパワートレインは従来通り、「ONE」「クーパー」「クーパーS」のグレードに応じた3種類ずつのガソリン&ディーゼルユニットに加え、X1やアクティブツアラーにも用いられるプラグインハイブリッドも用意される。うち、日本ではまずクーパーとクーパーSのディーゼルモデルである「クーパーD」と「クーパーSD」の2種類が導入されるもよう。その他は検討中ということだが、現行後期型では販売の約9割がディーゼルモデルだったことから、通常のガソリンモデルは導入されない可能性が高い。つまりMINIクロスオーバーについてはディーゼルがメインユニットという大胆なグレード構成がひとつのトピックとなりそうだ。
今回の試乗では生産立ち上がりのタイミングということもあり、モデルはガソリンのクーパーSがメイン、その四駆の本領はオフロードコースで……という内容となった。つまり日本での売れ筋となりそうな150psのクーパーDの試乗はかなわなかったわけだが、搭載されるエンジンもN47系から最新世代のB47系へとスイッチされ、ATも8段を採用することで、現行型のウイークポイントだった音や振動も随分低減されることになるだろう。その辺りを勘案しながらの品定めではあったが、クオリティーアップの跡はクラブマンの作り込みに準拠した内装の質感向上以外からも感じることはできた。
まず大きく向上したのは乗り心地や静粛性といったコンフォートの項目だ。形状的に不利であるはずの風切り音やロードノイズもよく抑えてあり、Cセグメント級という車格に見合った快適性が保たれている。乗り心地は柔らかいというほどではないが、低中速域でのピッチやロールが穏やかになり、細かな揺すられ感が程よく丸められていた。他モデルと骨格を共有するだろう前席はデザイン的にはやや面白みが失われたものの、サイズやアタリもゆったりしたものとなり、乗り心地面でも少なからず寄与しているようだ。
穏やかなドライブフィールとMINIらしさの両立
いずれのモデルでもゴーカートフィールを標榜(ひょうぼう)するMINIだが、新型クロスオーバーのドライブフィールは現行型に比べると幾分穏やかだ。重心高やホイールベース、サスペンションのレートやストローク量など、その動きをおっとりと感じさせる要素はいくらも挙げられる。ステアリングのギア比もいたずらに詰められてはいないが、同時に、ほどほどにロールを抑えながら切り込むほどに応答感がクイックになるようしつらえられている。ファミリーカーとしての用途やオフロード走行での微妙なコントロールを鑑みながら、ギリギリのところでMINIらしさを引き出そうと留意したことが伝わってくるようなセットアップだ。ちなみにオフロード走行は粘度の高い泥路を数分走行する程度ではあったが、後輪側に100%までの駆動配分を実現する新たな四駆システムは、滑りやすい路面でもラグのない確実なトラクションをもたらしいていることが確認できた。
フォルクスワーゲンの「MQB」やトヨタの「TNGA」ほどの大々的なアナウンスはないものの、BMWもFFラインナップの拡充と並行して、確実にモジュール化を進めている。新型MINIクロスオーバーは現行型のネガとしてユーザーから挙げられていた実用性を克服すると同時に、コスト配分の最適化によりクオリティーを大きく高めてきた。今日的なクルマ作りといえばそうではあるが、このクルマを求める向きにとって、サイズが納得できれば歓迎される進化を遂げたといえるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=BMW/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
MINIクーパーS クロスオーバーALL4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4299×1822×1557mm
ホイールベース:2670mm
車重:1530kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000-6000rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1350-4600rpm
タイヤ:(前)225/55 R17 97W/(後)225/55 R17 97W
燃費:6.4-6.6リッター/100km(約15.2-15.6km/リッター、欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラック&ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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