クライスラー300 SRT8(FR/8AT)/ジープ・グランドチェロキー サミット ラグーナレザーパッケージ(4WD/8AT)
豪快から洗練へ 2017.02.18 試乗記 「ジープやフィアットで雪道を走りませんか?」 そんな誘いを受け、長野・白馬へ。フロントマスクを一新した「グランドチェロキー」などアメリカとイタリアの5ブランドがそろう、FCAの冬季フルライン試乗会に参加した。2カ国5ブランドの試乗会
輸入車を扱うインポーターの中で、FCAは異色な存在である。ブランドはアルファ・ロメオ、クライスラー、フィアット、ジープ、アバルトの5つもあり、しかもイタリアとアメリカの2国から輸入している。統一感が乏しいとも言えるが、FCAは多様性ととらえている。小型ハッチバックから大型SUVまでをラインナップしているのが強みだという。
フルラインナップ試乗会にはにぎやかな顔ぶれが並んだ。実は、こういったイベントができるのは日本だけ。他国ではアメリカとイタリアのブランドは厳格に分けられていて、両方が一堂に会することはないそうだ。東京から「アバルト124スパイダー」に乗って中間地点の山梨県甲府に到着し、「クライスラー300」に乗り換えた。目指すのは雪深い長野・白馬村で、ここからはスタッドレスタイヤ装着車だけが用意されている。
出発に先立って、FCAの現況について説明があった。2016年はトータルで2万台だった販売台数を、今年は2割増しの2万5000台まで伸ばす計画だという。秋にローンチする予定の「アルファ・ロメオ・ジュリア」を含まない数字だというから強気である。アルファ・ロメオは専売化することになっており、2019年までに年間販売台数を1万台に乗せるのが目標だそうだ。
小休止と説明会の会場となったのは、昨年12月にオープンした正規ディーラーのジープ甲府である。ジープはCIを変更し、ロゴがグリーンからシルバーになった。建物の内外装は黒とウッドの組み合わせで、プレミアム感を強調している。クライスラーも販売しているが、ディーラー名からは外れた。全国すべての店舗がジープと地名の組み合わせに変えられている。ちょうど1年前のFCA試乗会の帰りに、フォードの日本撤退のニュースを聞いたことをなんとなく思い出しながら、クライスラー300に乗り込んだ。
アメリカンな価値観を伝えるセダン
試乗車は6.4リッターV型8気筒エンジンを搭載する「SRT8」である。最高出力476ps、最大トルク65.0kgmの豪快なパワーユニットが魅力のフルサイズセダンだ。全長が5mを超える堂々たるボディーサイズで、車両重量は2020kg。アメリカンな価値観を今に伝える貴重なモデルである。
エンジンを始動させると、1回空ぶかしで快音を披露する。剛毅(ごうき)を旨とするアメリカンセダンだと思っていたら、時代に合わせて小洒落(こじゃれ)た演出をするようになっていた。内外装は高級車然とした風格のあるものだ。2004年にデビューした先代が持っていた立派なグリルは健在である。力強さと立派さを受け継ぎつつ、細部には洗練が加わった。
インテリアのしつらえも上質である。ダッシュボードのセンターにシルバーのアナログ時計が備えられているのは、プレミアム感を際立たせるお決まりの手法だ。ただ、ヨーロッパ的な優美とは違い、骨太な重量感がある。昨今はやりのデザインとは一線を画していて、アウトロー風味が感じられるのだ。運転席に収まると、ついつい普段より居丈高な態度になってしまいそうになる。
スタートしようとしてパーキングブレーキ解除のボタンを探したが、見つからない。左足にぶつかったのは、古風な足踏み式パーキングブレーキだった。アイドリング状態でも常に重低音が響いている。エンジンはわずかに回転を変化させながら不協和音を奏でており、すごみが伝わってきた。
優秀な先進安全装備
走りは雄々しく勇猛だ。ひたすらパワーで攻め立てる。アクセルをひと踏みすると、地響きのような爆音をたてて突進していく。ATが常に滑っているような古典的感覚があるが、多少パワーロスがあったとしても取るに足らない。大排気量ならではの野性的な加速は、最近ではあまり見られなくなったものだ。ダウンサイジングの時代に背を向けて、わが道を行く。
ATは8段のギアを持つが、おいそれとは変速しない。アクセルを緩めるまでギアをキープしようとする。ロータリーシフターでSモードを選択すると、さらに高回転まで引っ張るようになる。素早くシフトアップしていってもありあまるトルクで加速していきそうだが、めいっぱい力を使い切るのだ。ステアリングにはパドルが備えられているが、ほとんど使う必要を感じない。
野蛮なイケイケ一本やりというわけではない。先進安全装備は、最新のものが装備されている。アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)はなかなか優秀だ。前車を確実に認識して素早い動きをする。何しろエンジンが強力なので、前が空くといきなり後ろからトンっと押される感じだった。常に加速しようと身構えている。ACCを使えば燃費走行してくれるのが普通だが、このクルマに限ってはあまりエコの役には立たないかもしれない。
「Lane Sense車線逸脱警報プラス」もいい出来だった。車線からはみ出しそうになると振動で警告し、ドライバーが無視していると自動で位置を修正する。わざと放置してみたら、かなりの正確さでレーン中央を走った。レーンキープをアシストする機能を持つクルマは多くなってきたが、繊細なコントロールができていないシステムもある。力まかせな印象のクライスラー300だが、電子制御はていねいなのだ。
目的地が近づくと、路面は真っ白になっていった。FRのハイパワー車は警戒が必要な場面である。普通に走っている限りでは、圧雪路でも問題なく走れた。発進やコーナリングでじんわりとアクセルを操作するのは当然である。トンネルに入り、乾いた路面になったと思ってアクセルを踏んだらお尻がズルっときて焦った。まだ雪が残っていたのだ。強力な電子制御があっても、過信は禁物である。
雪上コースで実力を見せたラングラー
翌朝は、スキー場の駐車場にしつらえた特設コースで雪上試乗が行われた。クライスラー300も会場に持ち込まれたが、コースには入っていない。夜のうちに粉雪が降り積もり、さすがにFRで走行するのは無理という判断である。帰路用にセレクトした「グランドチェロキー サミット」でコースインした。
会場は外周路と自由に走行できるインナーフィールドに分けられていた。外周路は途中から3つに分かれていて、大小の山を越えるセクションは「ラングラー」専用路という設定である。グランドチェロキーはダイヤルで走行モードを選択するようになっていて、通常の雪道は「AUTO」で問題なく走れる。雪上コースは「SNOW」を選ぶべきかと思ったら、それではダメなのだという。確実にトラクションを確保するには、「MUD」モードが適しているのだ。
踏み固められた路面は問題なく走れたが、問題は粉雪が大量に積もった場所である。すでに何台も走行していて、轍(わだち)が深く刻まれていた。2周目に粉雪ゾーンに入ったところで、不覚にもスタック。自らの不注意を棚に上げるつもりはないが、グランドチェロキーには荷が重いコースだったのかもしれない。
粉雪の量が比較的少なかったインナーフィールドでは、縦横無尽に走ることができた。障害物のない広い雪原なので、多少ヘマをしても危険はない。アクセルを踏みすぎても自動的にパワーがカットされるので、4輪すべてが空転する事態にはならなかった。トラクションが失われないように自動的にコントロールしてくれる。
「レネゲード」に乗り換えると、もっと楽しく走れた。車重が軽いメリットで、コントロールがしやすい。しかし、ラングラーに乗ってみると、グランドチェロキーとレネゲードの違いなど大したものではないことがわかった。本格的な4WDシステムを持つラングラーは、別次元の走破性能を持っている。グランドチェロキーはドライバーの意思に反する動きをすることがあったが、ラングラーは狙ったラインをトレースできる。特設コースならどちらでも大丈夫だが、公道で安心して走れるのはラングラーなのだ。
昨年ジープの販売成績がよかったのはレネゲード導入のおかげと思われがちだが、実際は違う。ラングラーの人気が高く、4000台近い売り上げをコンスタントに続けていることが大きい。ジープブランドの中核がラングラーであり、イメージリーダー的存在である。ルーツを最も忠実に受け継いでいる看板車種なのだ。
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マイチェンでデザインも走りもマイルドに
帰路は東京までグランドチェロキーに乗った。特設コースのような過酷な条件の道はなく、除雪が行き届いていた。「AUTO」モードにしたまま、気遣い無用で走ることができる。グランドチェロキーは、大量の荷物を積んで大人数で出掛け、安全に帰ってくる性能が求められるクルマだ。高級SUVのジャンルに属しており、悪路走破性ばかりを求められているわけではない。上質なインテリアや快適な装備も重要で、街なかや高速道路での走行性能が重視されるクルマである。
試乗車は最上級グレードのサミットで、マイナーチェンジ後のモデルに先行して乗った。フロントグリルのデザインが変更されており、都会的なイメージが強まっている。内装には真っ白な革が使われており、「レンジローバー」に匹敵する高級感を狙っているのだという。ジープという名を持っていても、ゴツさやラフなイメージはみじんもない。上品で柔らかな感触を追求している。
グリルよりも大きな変更点は、エンジンである。これまでサミットに搭載されていたのは5.7リッターV8 OHVだったが、マイチェンでこのエンジンは除外された。サミットにも、「ラレード」と同じ3.6リッターV6 DOHCエンジンが与えられる。デザインがモダンになったのに合わせ、パワーユニットもマイルド志向になったわけだ。
パワーは以前よりダウンしているが、高速道路の走行で不満を感じることはなく、十分な動力性能だった。クライスラー300と同等の先進安全装備も付いていて、高級SUVとして確実に実力を高めている。アメリカ車らしい大排気量エンジンが選べなくなったのは寂しい気もするが、ジャガーやベントレーがSUVに参入する時代なのだ。CIの変更に表れているように、ジープブランドもプレミアム性を重視する。悪路をものともしないワイルドな走りはラングラーにまかせ、グランドチェロキーは次のステージに向かっている。
(文=鈴木真人/写真=FCAジャパン/編集=近藤 俊)
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テスト車のデータ
クライスラー300 SRT8
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5090×1905×1485mm
ホイールベース:3050mm
車重:2020kg
駆動方式:FR
エンジン:6.4リッターV8 OHV 16バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:476ps(350kW)/6100rpm
最大トルク:65.0kgm(637Nm)/4150rpm
タイヤ:(前)245/45R20 103V M+S/(後)245/45R20 103V M+S(ピレリ・スコーピオン ウインター)
燃費:5.9km/リッター(社内参考値)
価格:756万円/テスト車=764万6400円
オプション装備:ボディーカラー<アイボリートライコートパール>(5万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマット(3万2400円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ジープ・グランドチェロキー サミット ラグーナレザーパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4880×1945×1805mm
ホイールベース:2915mm
車重:2230kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:290ps(213kW)/6400rpm
最大トルク:35.4kgm(347Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)265/50R20 107V/(後)265/50R20 107V(ヨコハマ・アイスガードiG51V)
燃費:9.6km/リッター(JC08モード)
価格:707万4000円/テスト車=716万0400円
オプション装備:ボディーカラー<アイボリートライコートパール>(5万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマット(3万2400円)
テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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