ポルシェ・パナメーラ4 E-ハイブリッド(4WD/8AT)
“速さ”のための電動化 2017.02.27 試乗記 新型「ポルシェ・パナメーラ」に、プラグインハイブリッドモデルの「パナメーラ4 E-ハイブリッド」が追加された。2世代目となり、4WDの駆動システムを得た同モデルに南アフリカで試乗。電動化に見るポルシェのこだわりに触れた。4WDを選んだ理由
いよいよ出そろった新型パナメーラのラインナップは、FRモデルのベースグレードに始まり、同じ330psの2.9リッターV6直噴ツインターボを四駆でドライブする「4」、そのエンジンを440psまでパワーアップした「4S」、そして4リッターV8ツインターボで550psを発生する「ターボ」と、基本的に4つの体系に分けられる。
そこに新たに加えられたのが、プラグインハイブリッドモデルだ。初代「パナメーラSハイブリッド」の登場が2011年。それがプラグインの「パナメーラS E-ハイブリッド」へと進化したのが2014年のこと。「MSB」と呼ばれる新たなアーキテクチャーで構築された新型パナメーラ4 E-ハイブリッドには、ここまで培ってきたポルシェのパワートレイン電動化にまつわる知見がぎっしりと詰め込まれている。それはスペックシートからも十分に伝わってくるだろう。
まず、先代に対する最大の変化は、「4 E-ハイブリッド」の名が示すとおり、ドライブトレインが8段PDK+四駆とされたことだ。乱暴に言えば、パナメーラ4をベースにプラグインハイブリッド化したモデルとも言えるだろう。四駆化の背景は、北米市場を中心に主要市場でそのニーズがうなぎ登りで高まっていることもあるが、同時にその動力性能を受け止める上で、もはや四駆の方が適切だということもある。
アウトプットは「4S」を超える
搭載されるエンジンは2.9リッターV6直噴ツインターボで、90度バンクの内側にタービンを配置するホットVと称される補機レイアウトを採用したものだ。最高出力は330psとパナメーラおよびパナメーラ4と同じ。そのエンジンと8段PDKの間に2つのクラッチを介して挟み込まれるモーターは、先代の95psから136psへと大幅に出力が引き上げられている。そして、システム総合出力は実に462ps、最大トルクは71.4kgmと、パナメーラ4Sを上回るところに達した。最高速は278km/h、0-100km/h加速は4.6秒と聞けば、このクルマにとっては電動化がパワーサプライとしても機能していることがよくわかる。
一方で、満充電時のEV走行可能距離は先代のNEDCモードで36kmという数値から、同50kmへと大幅に引き上げられた。搭載されるリチウムイオンバッテリーは14.1kWhと先代に対して5割ほど大容量化しているが、エネルギー密度の向上やセル、ケースの工夫により、質量は先代と同等に抑えている。ただし充電時間は200Vの普通充電で5.8時間と伸びているが、オプションの「7.2kWチャージャー」を用いることで、3.6時間まで短縮することが可能だ。
ドライブモードは標準車の「スポーツ」および「スポーツプラス」モードに加え、電動部をきめ細かにマネジメントする4つが搭載されている。電動走行(EV走行)の可能領域をフルに引き出す「E-パワー」、目的地でのEV走行のためにバッテリー残量を保持する「E-ホールド」、主にエンジン側で駆動しながらバッテリーへの充電も並行して行う「E-チャージ」、そしてエンジンとモーターの協調制御により高効率な移動を可能とする「ハイブリッドオート」と、それらはドライバーが任意で選択することが可能だ。
ポルシェらしい電気の使い方
新型パナメーラに共通する動的特性の進化のポイントは、低中速域での乗り心地や静粛性の向上にあるが、4 E-ハイブリッドはそこに電動化が加わることで、より静かでなめらかなドライブフィールを実現している。EV走行時のパワーは必要にして十分といったところで、街中ではまず動力性能に不満を持つことはないだろう。
ちなみにEV走行の最高速は140km/hと十分な余力が持たされていることもあり、試乗中は高速道路への穏やかな合流加速などでもエンジン側のパワーに頼ることはなかった。とはいえ、高速巡航時はEV走行の効率が落ちるので、むしろエンジンの稼働に乗じてバッテリーを充電する、E-チャージモードを使う機会が増えるだろう。
ハイブリッドオートモードでの走りはパワーのつながり感もスムーズで、特にモーターアシストが加わっての3000rpm前後のレスポンスは、最もスポーティーなターボにも勝るのではと思うほどに力強い。全開時の加速力もポルシェのスポーツセダンを名乗るに十分納得できるものだが、トップエンドでの伸びよりもむしろ中間域の力感が、このクルマのスポーティネスを強烈に印象づけるものといえるだろう。コーナリングのパフォーマンスも先代よりはっきりとリニアさを増した印象だが、さすがに旋回時にはモーターやバッテリーによってかさんだマスを感じることもある。軽量化を徹底した新型パナメーラの特徴である身のこなしの軽さという点においては、やはり標準車の側に軍配が上がるようだ。
2020年の発売をもくろむ電気自動車「ミッションE」の開発も進む中、ポルシェは着々とパワートレインの電動化にまつわる知見を蓄えつつある。それを単なるエコにとどまらせず、アイデンティティーである速さを彩るための新しいツールとして用いようとする姿勢は、この4 E-ハイブリッドにおいても明確に示されていた。
(文=渡辺敏史/写真=ポルシェ/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ポルシェ・パナメーラ4 E-ハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5049×1937×1423mm
ホイールベース:2950mm
車重:2170kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8AT
エンジン最高出力:330ps(243kW)/5250-6500rpm
エンジン最大トルク:45.9kgm(450Nm)/1750-5000rpm
モーター最高出力:136ps(100kW)/2800rpm
モーター最大トルク:40.8kgm(400Nm)/100-2300rpm
システム最高出力:462ps(340kW)
システム最大トルク:71.4kgm(700Nm)
タイヤ:(前)265/45ZR19/(後)295/40ZR19
燃費:2.5リッター/100km(40.0km/リッター、NEDC複合モード)
価格:1407万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。