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アウディRS 3セダン(4WD/7AT)/RS 3スポーツバック(4WD/7AT)

小粒でも激辛 2017.04.03 試乗記 河村 康彦 アウディの高性能ハッチバック「RS 3スポーツバック」がマイナーチェンジ。さらなるパワーアップを果たした最新型の走りを、新たに追加された4ドアモデル「RS 3セダン」と併せて、中東・オマーンでテストした。

負けは決して許されない

2015年にフルモデルチェンジを行い、5代目となった「アウディA4」。そんな正統派セダン/ステーションワゴンとともに、アウディのラインナップの中で「最も重要な屋台骨のひとつ」に数えられるのが、その弟分にあたる「A3」だ。初代の誕生は1996年だから、こちらもすでに20年以上の歴史がある。ここに紹介するのはそのトップパフォーマンスバージョンたるRS 3である。

このほど行われたリファインでは、エンジン出力の大幅アップや装備の充実、コネクティビティー機能の強化などが主なメニュー。また、これまではハッチバックのみだったボディーのラインナップに4ドアセダンが追加されたのも、大きなトピックになっている。

しかし、そんなサマリーを耳にした時点で「あれっ?」と疑問符が浮かぶ人も現れるはず。「アウディのRS 3って、発売されてからまだそんなにたっていなかったよね!?」と感じる人が、きっといるに違いない。

実際、“世界最速のプレミアムコンパクト”というキャッチフレーズとともにRS 3スポーツバックが日本で発売されたのは2015年の10月だから、1年半しかたっていない計算になる。そもそも、現行型RS 3の初披露は2015年のジュネーブモーターショーで、ヨーロッパ市場でも発売はその夏から。この点でもまだ2年ほどだ。

しかし、そんなタイミングで早くも大きな手が加えられたのは、最大のライバルと目される「メルセデスAMG A45」がパワーアップを実施したり、BMWからは「M2」がローンチされたりと、実はRS 3の周辺がかなりの“激戦区”になってきたという事情も関係しているはず。価格的にも性能的にもエクスクルーシブであることが売りのこうしたモデルたちに、「負け戦」は一度たりとも許されないのである。

“コンパクトカーのトップアスリート”を称する「アウディRS 3セダン」。「RS 3スポーツバック」のマイナーチェンジを機に、ラインナップに加えられた。
“コンパクトカーのトップアスリート”を称する「アウディRS 3セダン」。「RS 3スポーツバック」のマイナーチェンジを機に、ラインナップに加えられた。拡大

ダークカラーでコーディネートされた「RS 3セダン」のコックピット。スポーツシートの表皮にはファインナッパレザーが採用されている。


	ダークカラーでコーディネートされた「RS 3セダン」のコックピット。スポーツシートの表皮にはファインナッパレザーが採用されている。
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ステアリングホイールは、ボトム部がフラットな形状。「RS」のエンブレムも添えられる。


	ステアリングホイールは、ボトム部がフラットな形状。「RS」のエンブレムも添えられる。
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ロゴ入りのドアシルプレートは発光式。夜間は、イルミネーションが乗員を迎える。
ロゴ入りのドアシルプレートは発光式。夜間は、イルミネーションが乗員を迎える。拡大
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煮詰められたパワートレイン

リファインの最大の目玉といえる最高出力のアップは、従来型の367psから400psへと変わる大幅なもの。エンジン性能は最高出力だけでは決まらないとわかっていても、「量産型の4気筒ターボ付きエンジンとしては世界一パワフル」とうたわれてきたAMG A45の心臓が発する381ps、BMW M2の3リッター直6ターボユニットが発する370psを追い抜いて一気に“大台”へと乗せたスペックは、なるほど、相当インパクトがあるのは間違いない。

1976年デビューの「アウディ100」用エンジンに端を発する、直列5気筒という珍しい構造を持つパワーユニットは、ターボ付きの2480cc。ボア×ストローク値も同一であることから「あ、従来の改良型ね」と解釈してしまうと、それは早合点だ。

そうした数字は不変でも、アルミ製クランクケースの採用などで26kgもの軽量化を実現したり、直噴とポート噴射を併用するデュアルポートインジェクションや大容量ターボを新採用したりと、かなり抜本的な変更が施されている。実はこのユニットはヨーロッパ市場ではすでに「TT RS」に先行搭載済みで、日本でもまずはこちらが発売される予定である。

組み合わされるトランスミッションはアウディが「Sトロニック」と呼ぶDCTのみで、本体の変更は報じられていないが、「プロペラシャフトへの接続角を見直すことで2kgの重量を削減した」という。

プロペラシャフト後端に電子制御カップリングを配した4WDシステムは従来同様で、ドライブモードセレクターで「ダイナミック」のポジションを選択すると、後輪側へのエンジントルク伝達バイアスを強めた、よりハンドリング重視のセッティングとなる。

マイナーチェンジを受けた「アウディRS 3スポーツバック」。2017年3月のジュネーブモーターショーで正式にデビューした。
マイナーチェンジを受けた「アウディRS 3スポーツバック」。2017年3月のジュネーブモーターショーで正式にデビューした。拡大
最新の「RS 3」に搭載される2.5リッター5気筒ターボエンジン。従来型に比べ、出力アップのほかにエンジン単体の軽量化(従来比-26kg)も図られた。
最新の「RS 3」に搭載される2.5リッター5気筒ターボエンジン。従来型に比べ、出力アップのほかにエンジン単体の軽量化(従来比-26kg)も図られた。拡大
トランスミッションは、7段ATのみ。シフトレバーのそばには、インフォテインメントシステムの操作スイッチやエンジンのオンオフボタンがレイアウトされる。
トランスミッションは、7段ATのみ。シフトレバーのそばには、インフォテインメントシステムの操作スイッチやエンジンのオンオフボタンがレイアウトされる。拡大
「RS 3セダン」のトレッドは、コーナリング性能を向上させるべく、「A3セダン」比で前が20mm、後ろが14mm拡大されている。
「RS 3セダン」のトレッドは、コーナリング性能を向上させるべく、「A3セダン」比で前が20mm、後ろが14mm拡大されている。拡大

まさにピュアなスポーツモデル

新登場のセダンが3台、スポーツバックを名乗るハッチバックモデルが3台と計6台が用意されて国際試乗会が開催されたのは、何と中東はオマーンの地。

設定された試乗ルートに高速道路は存在しなかったが、実際にはそれと変わりのない印象が得られる最高速度120km/h(!)という片側3車線の道路や、海岸沿いに切り立つ山をつづら折れで上っていく険しい山道などが用意されていた。

テストドライブは、「バーチャルコックピット」やフロントの「カーボンセラミックブレーキ」、そして標準サイズの235/35R19に対して、フロントのみ255/30R19へとワイド化されたタイヤなど、新設定された数々のオプションアイテムを装着したセダンからスタート。

新規投入されたセダンのキャラクターは、「アメリカや中国など相対的にセダン人気が高い市場を意識した、RSのエントリーモデル」と紹介される。それでも日本ではスポーツバックの方が高い人気を得ることになりそうだが、一方で、例えば「スバルWRX STI」とそれなりのライバル関係を持つことにもなりそうである。

もっとも、MTのみのWRX STIに対して、RS 3はDCTのみ。「今やMTを欲する顧客はごく少数に過ぎず、その将来性は見込めない」というのが、すべてのRSモデルの開発・生産を手がけるアウディスポーツ社の見解だ。ちなみに、2ペダルへの流れは、先代「R8」のトランスミッションがシングルクラッチ式からデュアルクラッチ式へと変更された時点で、決定的なものになったという。

グリーンのボディーカラーは思い切り派手な一方、ルックスそのものは比較的おとなしいセダンだが、その乗り味は何ともスパルタン。路面の凹凸を忠実に拾い、常に揺すられ感が強いという印象だ。いかにもピュアなスポーツモデルに乗っていると実感できる一方で、ゲストとして後席に招かれた場合には、ちょっとつらいことにもなりそうだ。

「RS 3セダン」の最高速度は電子制御リミッターが作動する250km/h。それを280km/hにまで引き上げるオプションも用意される。
「RS 3セダン」の最高速度は電子制御リミッターが作動する250km/h。それを280km/hにまで引き上げるオプションも用意される。拡大
ワインディングロードで「RS 3セダン」を駆る。同車ではフロントガラスに遮音ガラスを採用するほか、ボディー各所に軽量な吸音材を配置するなど、遮音性も追求されている。
ワインディングロードで「RS 3セダン」を駆る。同車ではフロントガラスに遮音ガラスを採用するほか、ボディー各所に軽量な吸音材を配置するなど、遮音性も追求されている。拡大
「RS 3セダン」のエキゾーストパイプは、左右振り分けの2本出し。リアバンパーの下部にはディフューザーが装着される。
「RS 3セダン」のエキゾーストパイプは、左右振り分けの2本出し。リアバンパーの下部にはディフューザーが装着される。拡大
ラクダが歩くオマーンの道を行く「RS 3セダン」。燃費は欧州の複合モードで8.3リッター/100kmを記録する。
ラクダが歩くオマーンの道を行く「RS 3セダン」。燃費は欧州の複合モードで8.3リッター/100kmを記録する。拡大

安定的にすこぶる速い

スポーツバックの試乗車が履いていたのは、4輪ともに標準サイズとなる235/35の19インチシューズ。こちらにもバーチャルコックピットやフロントセラミックディスクブレーキなどのオプションが装着されていた。

セダンに対して全長は短いものの、スポーツバックのカタログ上の重量は、わずかに5kg軽いだけ。実際、「どんな場面でもすこぶる速い」という動力性能の印象は、互いに変わることはない。セダンでスパルタンと記したその乗り味も、ほとんど同様だ。

フルアクセルでの発進加速時には、ステアリングが軽くなるほどの強烈な加速Gが得られる一方で、そこでトラクション能力の不足を感じたり、強いトルクステアに襲われたりすることがないのは、さすがは4WDシステム“クワトロ”の威力を実感させられる瞬間だ。

「ライバルにはない魅力」とアピールされる5気筒ユニットならではの不協和音的なサウンドは、実は3800rpm付近から上でアクセルペダルを深く踏み込まないと耳に届かない。となると、街乗りのシーンではほとんど聞こえないというのが現実だ。5気筒エンジンの“ありがたみ”をより明確にするためには、現状では少々耳障りな排気音を抑える一方で、エンジンサウンドはスピーカーを用いて強調する……といった手法もアリではないだろうか。

ワインディングロードをちょっと飛ばすといった程度のペースでは、その走りは徹頭徹尾オン・ザ・レール感覚。せっかくはるばる乗りにきたのだし、「サーキットを思い切り走ってみたかった」というのが本音だ。そこまで攻めれば、ドライブモードの選択による前後エンジントルク配分の変化がもたらすハンドリング感覚の違いも、より明確にわかったかもしれない。

そんなRS 3で見逃せないのは、全幅が1.8mに抑えられたボディーのサイズが日本の環境に好適であろうということ。小粒でありながらも実は激辛スパイスの効いた、最新ホットマシンの誕生である。

(文=河村康彦/写真=アウディ/編集=関 顕也)

「RS 3スポーツバック」の0-100km/h加速タイムは「RS 3セダン」と同じで、4.1秒と公表される。
「RS 3スポーツバック」の0-100km/h加速タイムは「RS 3セダン」と同じで、4.1秒と公表される。拡大
立体感のあるハニカムグリル。ブラックのカラーリングやボトム部の「quattro」ロゴとあわせて、「RS 3」ならではの個性を主張する。
立体感のあるハニカムグリル。ブラックのカラーリングやボトム部の「quattro」ロゴとあわせて、「RS 3」ならではの個性を主張する。拡大
「RS 3」には12.3インチの液晶画面を採用したメーターパネル「バーチャルコックピット」が標準で備わる。エンジン回転計やGフォースメーターが並ぶ写真の表示モードは、RSモデル専用のもの。
「RS 3」には12.3インチの液晶画面を採用したメーターパネル「バーチャルコックピット」が標準で備わる。エンジン回転計やGフォースメーターが並ぶ写真の表示モードは、RSモデル専用のもの。拡大
スポーツシートの背もたれは、ダイヤモンド型のステッチや「RS」ロゴで飾られる。
スポーツシートの背もたれは、ダイヤモンド型のステッチや「RS」ロゴで飾られる。拡大
「RS 3スポーツバック」は、日本市場には2017年内に導入される見込み。「RS 3セダン」はより早く、同年7月上旬に発売される。
「RS 3スポーツバック」は、日本市場には2017年内に導入される見込み。「RS 3セダン」はより早く、同年7月上旬に発売される。拡大
アウディRS 3セダン
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テスト車のデータ

アウディRS 3セダン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4479×1802×1397mm
ホイールベース:2631mm
車重:1515kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直5 DOHC 20バルブ
トランスミッション:7AT
最高出力:400ps(294kW)/5800-7000rpm
最大トルク:48.9kgm(480Nm)/1700-5850rpm
タイヤ:(前)255/30R19/(後)235/35R19(ピレリPゼロ)
燃費:8.3リッター/100km(約12.0km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:785万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※価格は日本市場でのもの。価格以外は欧州仕様車の値。

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

アウディRS 3スポーツバック
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アウディRS 3スポーツバック

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4335×1800×1411mm
ホイールベース:2631mm
車重:1510kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直5 DOHC 20バルブ
トランスミッション:7AT
最高出力:400ps(294kW)/5800-7000rpm
最大トルク:48.9kgm(480Nm)/1700-5850rpm
タイヤ:(前)235/35R19/(後)235/35R19(ピレリPゼロ)
燃費:8.3リッター/100km(約12.0km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は全て欧州仕様車のもの。

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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