第497回:「フェアレディZ神社」も出現
欧州で“クラシックZ”の人気が上昇中!
2017.04.14
マッキナ あらモーダ!
ニッポンの名車に存在感
ドイツ北西部エッセンの街で2017年4月5日から9日まで開催された欧州最大級のヒストリックカーショー「Techno-Classica Essen(テヒノクラシカ エッセン)」に行ってきた。
29回を迎えた今年、際立っていたのは「ポルシェ911」を扱うヒストリックカー販売店の多さである。特に、“ナロー”と呼ばれる初代や希少モデルは投資対象として格好のアイテムらしい。
もうひとつ、数ではポルシェ911にかなわないが、たびたび筆者の目に止まったモデルがある。
「ダットサンZ」。日本名「日産フェアレディZ」である。
まず発見したのは、プロとアマチュアが入り交じって車両を販売している屋外展示場である。初代(S30)が2台並んで展示されていた。米国ナンバーが付いたままのオレンジの1台は、要レストア状態。もう1台の緑のクルマはフルレストア済みだ。
さらに、ガレリアと呼ばれる巨大なアーケード状の通路を訪れると、今度はフェアレディZを得意とするショップを発見した。初代と2代目(S130)が1台ずつ展示されている。2台とも米国から仕入れたものらしく、初代にはワシントン州、2代目にはアイダホ州のナンバーが付いていた。
古いZは産地がポイント
店の主人はオランダからやってきた人だった。接客しているのを聞いていると、ほかの多くのオランダ人業者と同じようにドイツ語、英語ともに堪能である。
名刺をもらうと「Wouw」と書かれていた。「なんと読めばいいのか?」と尋ねると、万歳のポーズをしながら「(驚いたときの)Wow!と同じだよ」と教えてくれた。筆者はとっさに、かつて「ワオ!」を連呼していたタレント・志村けんの姿を思いだしてしまったが、ともかくお客さんに覚えてもらいやすい、営業に最適な名字である。
まず気になるのは、古いダットサンZのファン層である。
ワオさんによると、扱った過去のお客さんは「下は24歳、上は50代と幅広い」という。
先に屋外会場で見たオレンジの初代といい、ワオさんの2代目といい、米国からの仕入れである。どうして?
それに対してワオさんは「オランダをはじめ、ヨーロッパの国々は雨が多いので、クルマはかなりダメージを受けている場合が多い。その点、北米、特に西海岸は気候がよく空気が乾燥しているので、クルマのコンディションがより安定しているんだよ」と教えてくれた。
このあたりは、まさに“カリフォルニアで保管されてきたクラシック・フェラーリ”と同じだ。
価格は現在上昇中
一番人気は、やはり初代という。「デザインが美しく、オリジナリティーが高いのが理由」だそうだ。
「クルマが大好きで、この道25年。Zは自分でも3台乗ったよ」と胸を張るワオさんは、1958年生まれで今年59歳。
「(ほかのヒストリックカーと同様に)Zも外見だけきれいにしている個体がよくあるので、要注意だ。きちんとメンテナンスしてあるかどうか見極めて選んでほしいね」とアドバイスする。
カリーヴルスト(カレー風味のソースで食べるソーセージ)で昼食を済ませ、再び会場を散策していると、ドイツにおけるダットサンZ愛好会のスタンドを発見した。
対応してくれたメンバーのロルフさんによると、メンバーが所有するZの台数は122台。
「Zのチャームポイント? 信頼性が極めて高く、エンジンのフィールも極めていいこと。それでいて、ポルシェよりもかなり手ごろな5万ユーロ(約580万円)ほどで、いいクルマが手に入る。かなりリーズナブルだよ」
ただし、昨今Zも値上がり中であるという。「中には6万ユーロ(約700万円)を超える車両も出てきたね」と証言する。実際、先に見た屋外のフルレストア済み240Zは6万ユーロだった。
さまざまなファンを育むZ
一方、Zの数少ない欠点はといえば、「欧州では古いパーツの入手が困難であること」だ。
「ヨーロッパにおける日産の歴史が、米国でのそれと比べて極めて短いのが理由」とロルフさんは解説する。
参考までにいうと、日産車は1970年代、欧州各国にほそぼそと輸出されてはいたものの、欧州市場を統括する欧州日産会社および日産欧州物流会社が営業を開始したのは1990年のことである。
「販売店によっては、ダットサンZを持ち込むと『へえー、こんなモデルがあったんだ』と、しげしげと観察されてしまうんだよ」とロルフさんは笑う。
というわけで、スタンドに詰めていたほかのメンバー、エヴァさんやフランクさんと記念撮影したのが、左の写真である。よく見れば、スタンドの垂れ幕には富士山が描かれていて、その脇にある鳥居には、なんとZのエンブレムが掲げられている。Z神社である。それだけでも楽しそうなクラブだ。
ちなみに、その日は不在だったが、展示車である1980年式「280Z XT 2+2」のオーナーは民間航空会社の機長であるという。
「彼は世界中をフライトするので、仕事の合間にスペアパーツを調達してくるんだよ」とロルフさんは教えてくれた。
そういえば、前述のワオさんの展示車にもアマチュア飛行クラブの会員ステッカーが残されていた。ダットサンZには、飛行機乗りの心を打つところがあるようだ。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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