第499回:大矢アキオの上海ショー2017
プレミアム化&エレキ化する巨龍・中国
2017.04.28
マッキナ あらモーダ!
“中国版レクサス”続々登場!
上海モーターショーが2017年4月23日に開幕した。同ショーが開催されるのは、今回で17回目。2年前の2015年と同様、虹橋空港に近い西郊の新しい施設「国家会展中心」を舞台に開催された。
規模としては前回と同様で、16あるパビリオンのうち、そのほとんどにあたる13棟が使用されている。今回の実績はまだ発表されていないので、2015年のデータを引用すると、展示面積は35万平方メートル。出展者の数も前回とほぼ同じで、2000に迫るものと思われる。
今回目についたのは、海外メーカーとの合弁ではない、いわば純粋な中国系メーカーが元気なことである。彼らの多くは、グループ内におけるプレミアムブランドを強くアピールした。いわば中国版レクサス/インフィニティである。
ただし、その多くが、いわゆるオヤジ仕様でないところがミソだ。吉利が立ち上げた「Link & Co」は、ミレニアル世代(2000年以降に成人、あるいは社会人になった世代)をターゲットにしている。今回出展した新型SUV「01」(左写真)で、中国国内はもとより欧米市場も狙うという。
「アイコニック」は、アラン・ウー氏が立ち上げた新興EVメーカーだ。同じくウー氏が設立メンバーを務めるドバイの「Wモータース」と共同でスタンドを出した。社内デザインとされる「セブン」は、ワンボックスカーとしては非常にモダンかつスタイリッシュである。
ちなみに、上汽大通が2011年から使用しているシリーズ名には「LEXUS」ならぬ「MAXUS」というのがあって、なんとまあ書体までもがどことなく似ているが、こちらはプレミアムブランドではない。
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欧州の敏腕デザイナーは中国に向かう!?
一方で、デザイン的に“模倣車”と呼ぶしかないモデルを堂々と展示しているのは、そのジャンルでは有名な「衆泰」くらいのものだった。
昨今の中国メーカーは、前述のプレミアムブランドを中心に、デザイン向上のためのインフラおよび人材に積極的に投資している。
長安汽車は、数年前からイタリアのトリノにデザイン拠点を持っている。BYDは、かつてアルファ・ロメオで「8C」などの開発に携わり、その後アウディでも活躍したデザイナーであるヴォルフガング・エッガー氏を2016年からデザインディレクターに起用している。また、長城汽車の新しいラグジュアリーブランド「WEY」は、かつてBMWで「X5」や「X6」を手がけたピエール・ルクレール氏を、2013年にデザイン担当副社長として招き入れた。
エッガー氏もルクレール氏も、そのさきがけとして2011年にBMW/MINIから奇瑞のプレミアムブランド「クオロス」に移籍した、ゲルト・ヒルデブラント氏と同じデザイン担当重役の処遇である。
社内生え抜きのデザイナーを育成するのは大切なことだが、それにこだわりながらも逸材を逃してしまった日本メーカーとは対照的である。
中国車のデザインは、プレミアムカーのデザインを中心に、今後、より高度かつ洗練されたものとなっていくだろう。
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充電できるクルマも大人気
もうひとつ目立ったのは、純粋中国メーカーによるプラグインハイブリッド車(PHV)および電気自動車EVの著しい増加である。
背景にあるのは、中国各都市の行政が進める、交通渋滞の緩和策や環境改善政策だ。例えば上海では、車両の台数を減らすためにナンバープレートのオークション制を導入したのだが、前述の新能源汽車(環境対応車)はその対象にはならない。
上海の街中を観察していても、PHVを見かける機会が増えた。実際、中国における2016年のEV販売台数は約20万台と、2年前の2014年の3倍近くに伸びている。PHVも3倍以上の10万台超となった(BYD社の資料による)。巨龍・中国は“エレキ化”しているのだ。
一方で、旧市街にチャージングステーションはまだそれほど見当たらない。一体どこで充電しているのか? そんなボクの問いにていねいに答えてくれたのは、あるドイツ系サプライヤーの中国人技術者だった。
「大都市郊外の新築アパートでは、駐車場にチャージングステーションがあることが、すでにセリングポイントのひとつになっています」
そればかりか、そうした新築アパートに住んでいないユーザーも、家庭内から延長コードを引っ張ってきて充電している例が少なくないという。彼が言うには、驚くべきことに「2階の住人が、地上にあるクルマまでコードを下ろして充電している例もあります」とのこと。ただし案の定、雨の日に漏電してクルマが1台炎上してしまった事故があったという。
「延長コードで充電」といえば、本エッセイの第289回で紹介した、わが街シエナのピッツェリア店主を思い出す。中国の人とイタリアの人は、考えることがどこか似ているといつも思うのはボクだけだろうか。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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