第15回:ああ自動車税
2017.05.20 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして![]() |
大排気量車のオーナーにとって、悪夢の季節がやってきた。そう、納税の季節である。日本の自動車税はエンジンがデカくなるほどに税額が増していくが、ならば希代の大排気量車「ダッジ・バイパー」では、どれほどの高みに達するのか?
これまでの人生において最高額の納税通知書を前に、webCGほったが悟りを開く。
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思わず天を仰ぎました
読者諸兄姉の皆さま。5月ですね。
5月といえば和名で皐月(さつき)。これは旧暦の5月(新暦6月)が田植えの時期であることから広まった呼び名だそうで、早苗月(さなえつき)が略されたものだとか、耕作を示す古語の「さ」に由来するとか言われています。
……などという、スマホで調べりゃ5秒で得られる雑学などどうでもよろしい。われらジドーシャ乗りにとって5月といえば、田植えでも連休でもない。納税の季節だ。
今、わがデスクにお上から届いた白い封筒がある。自動車税の納税通知書である。正直、封を開けたくない。しかし、2017年度もアナーキーでアウトローなカーライフを楽しむためには、現実から目をそらしてはならないのである。
そんなわけで、意を決してペーパーナイフで封をびりびり。排気量に応じて自動車税を徴収する日本国が、8リッターのバイパーに課した税額がこれだ。ばーん。
11万1000円
……これは、マジか。覚悟していたとはいえ、さすがにちょっと気が遠くなった。
いやいや。これは高い! 高すぎでしょう! 文句ナシに高いよ。
だってアナタ、自動車を1台持ってるってだけで2ケタ万円の課税ですよ? 一発免停クラスのスピード違反だって、罰金は上限10万円だっていうのに。私、なんか悪いことしましたかねえ!?
……軽く頭に血が上ったので、デカビタ飲んでクールダウン。
まあ確かに、相対的に見ると「8リッターもあるのに11万1000円で済む」と言えなくもない。何せ、1.8リッターも排気量が小さい「シボレー・カマロ」や「コルベット」と同額なわけだから。
走行距離で課税してはいかが?
ご存じの通り、日本の自動車税は排気量が1リッター以下のクルマは2万9500円、1~1.5リッターは3万4500円、1.5~2リッターは3万9500円と、排気量が500cc上がるごとに税額が増していく。しかし、この累進制が適応されるのは6リッターまでで、そこから先は、どんな大排気量車も11万1000円の定額となる。6リッターを超えたら、排気量がデカければデカいほど得をするのだ。日本のバイパーオーナーは、大いにその恩恵を受けているといえよう。
……などという屁(へ)理屈はもちろん建前。本音を言うと、こうでも自分に言い聞かせないとやってられんのですよ。察してくださいよ。
まぁそれでも、他の初代バイパーオーナーと比べれば、記者はまだ恵まれている方である。今のところ、古いクルマ(初度登録から13年を超過したもの)にかかる15%の重課、いわゆる“旧車増税”からは逃れられているからだ。
初代バイパーの販売期間は1991年から2002年なので、本来ならばすべての個体が増税の対象となるハズ。なぜこんな待遇の差が生じるかというと、旧車増税の基準となるのは、あくまで日本での初度登録の年次だから。2000年にコナーストリート工場から出荷されたわが相棒だが、日本での初度登録は2006年。増税まではまだしばしの猶予があるというわけだ。ちなみに、増税後の自動車税は12万7600円である。おお笑えない。
さて。このような税金談義をまわりの大排気量仲間としていると、毎回、同じようなオチに行き着く。すなわち「日本の税制変わんないかなあ」「俺たちそんなに走っていないし、エコだのグリーンだのって言うなら、走行距離も考慮してくれないと」
そう。実際のところ、記者周辺の大排気量車乗りの多くは、普段のアシ用にもう1台クルマを持っていたりする。どんな“ガスガズラー”も、走らなければガスを飲まないというわけだ。環境負荷が旧車増税の根拠として語られる昨今、この意見には相応な論拠があるし、傾聴に値すると思う。
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ガソリンに課税される方がまだマシ?
もちろん課題がないワケではない。そもそも「走行距離に応じて課税を」と言ったって、何で距離を測るのよ? 普通に考えたらオドメーターなんだろうけど、実のところ、あれってそんなに正確じゃないのよね。タイヤ交換などの外的要因で、簡単に数字が上下してしまうし、課税の基準とするのには正直ムリがあると思うのだ。
浅学なりに現実的な方法を考えてみたけれど、結局は燃料に課税するしかないのでは? 消費した燃料の分だけ税金払えと、そういうことである。
こんなことを書くと、「おいおい、あんなに燃費の悪いクルマに乗っていて、そんなこと言っちゃって大丈夫なの?」と心配されるかもしれない。ご安心あれ。大丈夫です。
確かにバイパーの燃費は悪い。前回の報告では「平均で5.3km/リッター。我慢できないほどじゃない」などとお伝えしたが、その後、街乗りが増えるにつれて燃費は転がり落ちるように悪化。ついには2.7km/リッター(3月15日給油)、2.8km/リッター(4月1日給油)と、コンスタントに2km/リッター台をたたき出すに至った。最後に給油した2017年5月6日時点での平均燃費は、4.65km/リッター。なかなかにシビれる数値である。
しかしである。身近な例を挙げさせてもらうと、webCG編集部の社用車「フィアット・パンダ4×4」の燃費はおおむね13km/リッター。わが実家の「スバル・フォレスター」は7.5km/リッターである。単純計算だと、同じ距離を走る際のバイパーの燃料消費量は、前者の2.8倍、後者の1.6倍となる。これに対して、現行法で課せられる自動車税の額は、前者の3.8倍、後者の2.8倍。給油量に応じた課税制度が適応されれば、課税額の差はぐっと縮まるはずなのだ。
大排気量車に乗る同志諸君。今こそ排気量による累進税制はオカシイと声を上げ、新しい税制の合理性を世に訴えようではないか!
……そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました(板垣恵介リスペクト)。
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支払いには気合が必要
いや、だってさ、もしこれ以上の税が燃料に課せられて、給油ごとの出費がかさむようになったら、みんなクルマで出掛けたくなくなるでしょう?
いつ何時でも気兼ねなく、どこへでも行けることこそジドーシャの存在意義。それがスポイルされるような税制は、個人的には御免被りたい。
そんなことになるくらいなら、多少の不満はあったとしても「今年も高い自動車税を払ったんだから、少しでも乗らないともったいないよね」という心持ちでいられる方が、自動車乗りとしてシアワセでしょう。
納税通知書をつまみあげ、蛍光灯でためつすがめつ。
仕方ない。これも(排気量を)持てる者の務めである。大体、ちまたの軽自動車が20km/リッターの実燃費を実現しているご時勢に、リッター5kmも走らない高燃費車をブイブイいわしているのだ。11万1000円の課税、適価じゃないですか。
……と、益体もない禅問答に2500文字も費やしてようやく自分をだまくらかせる結論が得られたような気がする。
恵比寿で働く一介のリーマンにとって、紙幣12枚分の納税というのはそれほどまでに思い切りが必要な行為なのだ。またぞろ、記者の中の守銭奴が「でもさぁ」などと顔を出さないうちに、とっとと近所のコンビニで支払いを済ませてしまおう。
(webCG ほった)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。