第417回:“ちゃんと買い”しないとどうなるの?
ブリヂストンにタイヤ管理の大切さを学んだ
2017.06.06
エディターから一言
ブリヂストンが開催した、タイヤと安全の体感試乗会に参加。日ごろなかなか試すことのできないタイヤの比較や、あえてコンディションを悪くしたタイヤの乗り心地を、webCG編集部員がリポートする。タイヤって、高価なほど素晴らしい!?
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まずは“ちゃんと買い”について知る
2017年5月上旬、土砂降りの雨の中、われわれ取材陣は栃木県那須塩原市にあるブリヂストン 栃木プルービンググラウンドを訪れた。プルービンググラウンドとは、平たく言えばテストコース(和製英語)である。
本日行われるのは、ブリヂストンが提唱しているタイヤの「ちゃんと買い」とタイヤ管理の大切さをアピールする試乗会だ。ブリヂストンのテレビCMでよく耳にするちゃんと買いだが、そもそもちゃんと買いとは何なのか? 筆者とてちゃんと(お金を払って)買っているし、その点ではちゃんとしている。しかしブリヂストンによれば、ちゃんと、ちゃんと買い(ややこしい)を行っている人は、タイヤ履き替えを行う人の43%にすぎないという。57%もの人がお金を払っていないとも思えないので、まずはちゃんと買いについて詳しく聞いてみる。
ヒトコトで言うと、ちゃんと買いとは「新車装着タイヤから、性能を落とさずにタイヤを履き替えること」だという。とはいえ、一般のユーザーがどのタイヤなら大丈夫なのかを判断することは難しい。そこでブリヂストンが発売したのが「エコピアNH100」シリーズである。このタイヤはまさにちゃんと買いに対応するために開発されたもので、新車装着されるブリヂストンのタイヤの中心値を狙った性能に調整されている。実際、ブリヂストンのタイヤを新車装着するクルマのうち約90%が、エコピアNH100か、それ以上のグレードのタイヤを選ぶことでちゃんと買いしたことになるという。
クルマの運動はすべてタイヤを介して行われる
今回の試乗会では、ミニバン用の「エコピアNH100 RV」と、エントリータイヤの「ネクストリー」、そしてプレミアムタイヤの「レグノGRV II」を履いたクルマを乗り比べることができた。試乗に供されたのは「日産セレナ」。雨は変わらず土砂降りで、路面には水が浮いている。
まずはちゃんと買いに対応したエコピアNH100 RVを試す。背の高い箱型ミニバンということもあり、「まあ、こんなものかな」という印象。というか、こんな感想しか抱けないレベルなのに比較なんてできるのだろうかと、心配になってくる。
次にエントリータイヤのネクストリーを試す。これは……、とてもコワイ。筆者でも分かる。まず、水が浮く路面を真っすぐ走るのがすごく難しい。ハンドルをとられる。そしてカーブを曲がるときは、Gがかかっている方向に転ぶのではないかと、もっとコワイ。試乗コースをひと回りしただけで、ヘトヘトになってしまった。
最後に試したレグノは、これはもうサイコーです。スタートしてすぐに、もしかしてタイヤサイズが太いのではないかと感じたほど安定している。実際はどのタイヤも同じ195/65R15(当たり前)だったのだが、この印象は試乗を終えるまで終始変わらなかった。もちろん、カーブがコワイなんてまるで思わなかった。ヘビーウエットの路面でも、ブレーキを踏めばキュッと利く。
事前に行われたプレゼンテーションで「走る、曲がる、止まるといったクルマの運動は、すべてタイヤを介して行われている。だから、タイヤをきちんと選ばないと、タイヤの性能ではなくクルマの性能が落ちてしまう」と聞いていた。試乗を終えたいま、筆者はこの意見にもろ手を挙げて賛成したい。もしも、今日の試乗でネクストリーを履いた車両しか体験できなかったら、例えば友人に「セレナを買おうと思うんだけど?」と相談をもちかけられたときに「えーと、あのクルマはねえ……」とお茶を濁すしかなかったかもしれない。
3種類のタイヤの価格を、インターネットの価格比較サイトで調べてみた。最安値のショップなどは極端な価格のところがあるので、ざっくりと真ん中あたりを書いてみる。すると、執筆時点でネクストリーが約8000円、エコピアNH100 RVが約1万1500円、レグノGRV IIが約1万2000円だった。4本分だと順に3万2000円、4万6000円、4万8000円というコストになる。仮に3年(1095日)履けるとしたら、ネクストリーとエコピアの価格差は、1日あたり12.8円。秋葉原で絵画を販売している人のような論法になってしまったが、この価格以上の性能差は間違いなくあると思う。安全は1日たったの12.8円で手に入ります。レグノにしても14.6円です。というか、試乗した感想からするとレグノ一択です。
クルマを支えているのは空気
先ほども書いたとおり、クルマの運動をつかさどっているのはタイヤである。ちゃんと買いを実施したとしても、そのタイヤをきちんと管理しないとどうなるか。今回はそんな試乗も用意された。
まずは空気圧が適正でないクルマでパイロンコースを走る。用意されたのは「トヨタ・ノア」で、適正空気圧が240kPaのところを、150kPaまで落としてある。これでダブルレーンチェンジやスラローム走行を行うと、当然ながらグニャグニャとした乗り心地になる。布団を敷き詰めてその上を走っているような感じがして、そこはかとない不安を感じる。ほかの参加者もクルマ全体をゆらゆらさせながらコースを回っていて、見ているこちらがヒヤッとする場面もあった。
恐ろしいことに、このシチュエーションはそれほど特殊なものではない。タイヤは、いくら一生懸命にバルブをきつく閉めても、コンパウンドの分子の隙間からどんどん空気が漏れていってしまう。その量は1カ月あたりおよそ全体の5~10%。仮に10%ずつ失われるとすると、240kPa→216kPa→194.4kPa→175.0kPa→157.5kPa! 4カ月ほど空気圧の管理を怠ると、テストしたようなグニャグニャの状態になってしまうのである。実は、クルマの重さを支えているのはタイヤのサイドウオールではなく、空気だけだという。その大事な空気が、放っておくとどんどんなくなってしまうのだ。
春にスタッドレスタイヤからサマータイヤに履き替えて、次の冬までそのままなんていう人も多いはず。奥さん、クルマの性能下がってますよ。
あえてバランスを崩した「ムーヴ」を試す
次にあえてホイールバランスを崩したクルマにも試乗した。これは一度バランス取りを行ったタイヤとホイールに、50gの重りをつけてわざとバランスを崩したもので、試乗する前は、どんな影響が出るのか見当がつかなかった。
テストはスタッフの運転するクルマに同乗する形で行われた。「時速60kmを超えたくらいから分かりますよ」と言われ、そのときを待つ。
そして、ついにきた。速度計は65km/hを指している。右ひざの裏に細かい振動が伝わってきて、室内には「ヴヴヴヴヴ」といった感じの音がこもり始める。「あ、いまきましたね」と言おうとしたら、「あ」が「あ゛」になってしまい、自分で驚いて「あ゛あ゛あ゛あ゛」と意味不明なことを言葉を発してしまった。さらにスピードを上げると、クルマの振動がどんどん大きくなっていく。
タイヤは回転運動を行うため、速度が上がると遠心力が大きくなる。しっかりとバランスが取れていないと、このときにスムーズな回転ができなくなり、ガタガタとした走りになってしまうのである。今回の試乗車は右前のタイヤだけバランスを崩したものを履いていた。もしも4本ともバランスが崩れていたら、一体どんな走りになってしまうのだろうか。
今回の試乗会では、ちゃんと買いの大切さ、空気圧管理の大切さ、バランス取りの大切さを体感しやすくするため、ブリヂストンが各試乗で大切さを訴えたい部分以外はしっかりと調整されていた。例えば、ちゃんと買いの試乗では空気圧もバランスも適正だった。これが実生活だとどうか。「ちゃんと買いしていない、適正空気圧ではない、バランス取りがされていない」という多重苦なタイヤを履いているなんてことも多いはずだ。「なんかウチのクルマ、調子悪いな」と感じている方は、タイヤを疑ってみてはどうでしょうか。
(文=webCG 藤沢 勝/写真=ブリヂストン、webCG)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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