プジョー3008 GTライン デビューエディション(FF/6AT)
毎日を豊かにするSUV 2017.06.20 試乗記 クルマの実用性能には一家言を持っているプジョー。彼らが本腰を入れて作ったSUVとなれば、期待はおのずと高まるというものだ。新型「プジョー3008」の限定モデル「GTライン デビューエディション」に試乗し、その“実用車力”を探った。実用性能に期待
プジョー車の走行感覚を日頃から好ましいと評価しているファンが、なぜもっと早くからプジョーはSUV市場に参入しなかったのだろう、という思いを持つのはもっともなことだ。それもあって3008への期待は大きい。
プレス試乗会は、山梨県の身延山に近い南アルプス山麓の早川町オートキャンプ場で行われた。ここにはオフローダーの試乗によく使われるコースも付設されている。3008はFF二輪駆動であるし、本格的な泥遊びは無理なんじゃないかと思ったが、プジョーは路面からの大入力に対するボディー剛性の高さや、大きくストロークさせるサスペンションの接地性の良さなどをアピールしたかったのだと思う。
もちろん絶対的な駆動能力の点では4WDにかなうはずもないが、競技レベルではなく実用域の範囲で、凸凹ラフロードを走らせる意味は大いにある。ヒルディセントコントロールを備えるアンチロックブレーキなど、低ミュー急勾配路での降坂など見せ物的な技も披露してくれるはずだ。それなりの期待を持って試乗会に臨んだ。
3008はベースが「308」であり、そもそもの走行性からして好ましい実用性能感覚がある。プジョーの持つ実用感覚とは、特別に頑丈で強固に見せる外観でもないし、ことさらスポーティーな雰囲気を強調するものでもないが、実際に使ってみれば堅牢(けんろう)であるし、ドライバーの意思に即応する手ごたえがあり、直進性と安楽な乗り心地は歴史的にも継承されている美点である。筆者は個人的にもプジョーとの付き合いは長く、かつて「504」「404」「406」「306」を購入したことがある。そして「106」を欧州で1年間借りて8万4000km走った経験もある。
プジョーらしい“忍び足”
プジョーはスポーツサルーンを標榜(ひょうぼう)していなかった時代でもスポーティーな運転を可能にした。スポーティーかどうかはクルマの仕様や装備外観で決まるものではなく、ドライバーの意思やそうした操作にクルマ自体が応えられるかどうかが大事だ。大きなエンジンパワーや太いタイヤで決まるものでもない。また後輪駆動から前輪駆動に進化したメーカーの中でも、プジョーは駆動能力だけでなく旋回特性の点でも出色の結果を得ている。
前置きが長くなるからほどほどでやめるが、ニュートラルなステア特性をプジョーほど追求したメーカーはないといっていい。サファリラリーでは404が1963年と66年、67年、そして68年にチャンピオンに輝いているし、泥遊びの素性はノーマルのままでも極意に達している。
そのプジョーが作るSUVなら期待しないほうがおかしい。3008のSUVらしい特別な“武器”は見当たらないが、まずロードクリアランスは308以上のものが確保されている。外観は好みもあろうが「2008」の発展型といえるデザインは、それなりの派手さもある。逆反りにして立ち上げたラジエーターグリルの造形はなかなか力強いし、目元もシャープで鋭さがある。3連のテールランプも個性的で確認しやすい。オーバーデコに飾り過ぎない謙虚さも好ましい。
そして何より動き出した瞬間に感じるプジョーらしい路面への接し方は、単にふんわりとかソフトとかいう感覚ではなく、まさに動物的な忍び足をもってスーッと遅滞なく静かに動く。
サスペンション取り付け部のブッシュコンプライアンスをソフトにすると、一時的に直接的なショックは受け止められるが、バネ下の重量を持て余してバタバタと暴れるのがオチだ。プジョーのアシはそんなロボット的な人工物の動きではなく、生きた四足(しそく)動物に似ている。だから玉石のごろごろした河原のようなオフロードコースに入ると、ラリー車感覚でつい飛ばしてみたくなってしまう。待て待て、これはノーマルのタイヤだし、サスペンションだって強化されているわけじゃない……と、自制するのが大変だ。とにかくプジョーといえばアシの動きに期待してしまう。
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プジョーに期待するすべてがある
そしてオンロードに出れば直進性の良さはもとより、ロール感が素直なことに気をよくする。単に角度的に傾きが少ないわけではなく、外輪が沈み込んでタイヤに荷重を掛け、内輪は浮かないそんなロール感こそ、しっかり路面に接地している実感がある。加えてニュートラルなステア特性は旋回中心がドライバーに近く、先に前輪が外にはらむ気配はなく、後輪が横に滑り出す感覚もない。与えた舵角通りに4輪がそれぞれきちんと役目を果たす。この接地感覚こそプジョーに期待するすべてといっていい。
一方、プジョーはエンジンにことさら興味を示さないというか、スペック的な新味はあまり感じられないが、やるべきところはきちんと押さえている。何よりも滑らかに回ってトルクとレスポンスがあれば能書きは要らない。1.6リッターターボエンジンと6段ATの組み合わせは308そのものと思われ、軽快で緻密な加速感は申し分ない。しかし少しつらい点まで言及すれば、ゆったり走りたい時にもやや過敏なレスポンスがあり、こうした背の高い重量もそこそこあるSUV車としてはやや落ち着きに欠ける。
また小排気量+多段ATの例にもれず、エンジンブレーキ時の受け止め方はやや頼りない面もある。しかし7段とか8段の、より細かく分割されたギアボックスを持つクルマに比べ、この6段ATはまだ節度ある段階的なG(重力加速度)が期待できる。最近のエンジンは2000rpm以下でもトルクがあって、あまり回転を上下させず速度変化はギアボックスに任せるタイプゆえ、実際の路上では低回転でユルユル回っていることが多い。スロットル開度一定でも路面の勾配など負荷に応じて、ターボの過給圧が上がって不足分をカバーするような時もあり、総じてエンジン回転変化に頼ることがないので静かな走行が可能である。
この辺についてはいろいろな例に接する職業的な背景もあって、われわれはつい大排気量自然吸気エンジンなども含めて比べてしまうが、このクルマに慣れ親しむにつれ、コレでいいんだ、という肯定的な印象に変わっていく。もっとも短時間の試乗会のような走り方では、この辺の納得の仕方が適当に端折(はしょ)られてしまう傾向もある。先述のエンジンブレーキに関しては、今後追加されるであろう2リッターディーゼルの方がよく利くから、登場を待って比べるといいかもしれない。
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実用SUVのひとつの模範解答
インテリアでは、上からの目線で見下ろすようなiコックピットの視認性に加え、今回は小径ハンドルの形状が変化した。リムを上下に押しつぶしたような楕円(だえん)というより四角っぽい形状となり、ハンドル径をさらに小さくしたように視界が広がった。これでメーターの蹴られ部分が少なくなり、より見やすくなった。「208」系で初めて登場し、最初車外から見た時には違和感もあったが、乗りなれてくるとわざわざハンドルで仕切って、囲いの中のメーターをのぞき見る通常のタイプに比べ格段に見やすい。メーターがじかに見えると、今までいかにストレスがあったのか再認識させられる。
また知らないうちに中をのぞき込むような姿勢でメーターを見ていたのに比べ、背をのばしたまま見えることにより、運転姿勢がよくなるようにも感じる。ハンドルリムの太さによって一瞬遮られる視界など、どれほどのものかと思っていたが、まったくなくなってみると目の疲れが違うんじゃないかとも思う。また直接メーターを読んでいない時でも自然に視界の隅に入っているので、漠然とした針の位置はいつでも頭の中に入っている。
SUVがこれまでのハッチバックやセダンに代わって、実用車として使われだしたのは使い勝手が良いからで、高い視点による視界の良さや、上昇したシート高による乗降性の良さが人々に受け入れられているのは言うまでもない。クロカンなどのハードな走行はしなくとも、普段の生活で享受できる実用性能を望むならば、3008はいい選択と思われる。スタイリングの好みは個々人次第として、プジョーらしい走行感覚を求めるならば、この3008は決してファンの期待を裏切らないだろう。
(文=笹目二朗/写真=峰 昌宏/編集=竹下元太郎)
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テスト車のデータ
プジョー3008 GTライン デビューエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1840×1630mm
ホイールベース:2675mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:165ps(121kW)/6000rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(コンチネンタル・コンチクロスコンタクトLX2)
燃費:14.5km/リッター(JC08モード)
価格:400万円/テスト車=435万8980円
オプション装備:パノラミックサンルーフ(15万円)/NEW3008タッチスクリーン専用カーナビ(19万8720円)/ETC(1万0260円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1649km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

笹目 二朗
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