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第423回:運転支援システムのパイオニアがさらに進化
スバルの新しいアイサイトを試す

2017.06.19 エディターから一言
日本自動車研究所のテストコースを走る「スバル・レヴォーグ」の改良モデル。
日本自動車研究所のテストコースを走る「スバル・レヴォーグ」の改良モデル。拡大

ステレオカメラを使ったスバルの運転支援システム「アイサイト」が、さらなる進化を遂げた。新機能「アイサイト・ツーリングアシスト」とはどのようなものか? 「レヴォーグ」「WRX S4」に搭載される予定の新システムを、クローズドコースで試す。

「アイサイト」はステレオカメラをセンサーに用いたスバル独自の運転支援システム。現在のものは第3世代にあたる。
「アイサイト」はステレオカメラをセンサーに用いたスバル独自の運転支援システム。現在のものは第3世代にあたる。拡大
今回取材した改良型「アイサイト」は、2017年夏に発売される「レヴォーグ」「WRX S4」の改良モデルから順次投入される。
今回取材した改良型「アイサイト」は、2017年夏に発売される「レヴォーグ」「WRX S4」の改良モデルから順次投入される。拡大
今回の改良における最大のトピックは、全車速域に対応した操舵支援機能つきACC「アイサイト・ツーリングアシスト」の採用である。
今回の改良における最大のトピックは、全車速域に対応した操舵支援機能つきACC「アイサイト・ツーリングアシスト」の採用である。拡大

日本における運転支援システムの代名詞

ここ数年で急速に普及した、自動緊急ブレーキや先行車追従機能付きコントロール(ACC)などの運転支援システム。JNCAPの評価にも影響するためか、日本では今や軽自動車でさえ「設定があって当たり前」のジョーシキ装備となっている。

そのパイオニアといえばスバルのアイサイトである。各社からさまざまな製品がリリースされた今でも、それらの代名詞的存在として認められているのは間違いないだろう。ウソだとおっしゃるなら、よそのメーカーにおける運転支援システムの呼称をそらんじてみてください。「スバルはアイサイトだったけど、他はどうだったかな~」という人、けっこう多いと思いますヨ。

さてさて。そんなスバル・アイサイトに、このほどさらなる改良が加えられたという。キモはアイサイト・ツーリングアシストと呼ばれる操舵支援機能つきACCの採用で、取材会では市場投入前のシステムをクローズドコースで試せるとのこと。仕事とはいえハイテク萌(も)えにとってはむしろご褒美な内容である。多分にもれずそのケがある記者は、“午前7時受け付け開始”という無慈悲なスケジュールもなんのその、朝の常磐道をぶっ飛ばして会場となった日本自動車研究所のテストコースへと赴いた。

車線維持支援機能が全車速域に対応

さて、スバルに詳しい読者の中には、前ページの説明に「ん?」とひっかかった方もおられるだろう。「アイサイトのACCには、前から操舵支援機能が備わっていなかったっけ?」と。おっしゃるとおりで、スバルでは2014年6月発売のレヴォーグから、車線中央維持と車線逸脱抑制の2つの機能からなる「アクティブレーンキープ」を実用化している。

では、新しいシステムではどこが変わったのかというと、最大のポイントは全車速域で操舵支援機能が作動するようになったことだ。スバルの場合、ACC自体は以前から全車速域で使用可能となっていたが、操舵支援機能については車速が60km/h以上でないと動かない仕組みだった。

また、この機能――すなわち低速域での車線維持機能を実現するため、新たに先行車追従操舵という技術が用いられたこともトピックとして挙げられる。これまでのシステムでは区画線のみを頼りに車線維持機能を働かせていたが、渋滞時などは車間距離が短くなることにより、先行車によって区画線がさえぎられてしまうケースもあるのだとか。そこで開発されたのが先述の先行車追従操舵で、区画線が見えない場合、あるいは区画線が消えてしまっている場合は、先行車に追従するようにステアリングを制御。さまざまな状況で使用できる、高い作動率を実現したという。

このほかにも、ACCの作動速度域の上限が約120km/hに引き上げられたこと、一時停止後も3秒以内であればACCが自動で復帰するようになったことなども、変更点として挙げられる。

2013年の東京モーターショーでお披露目された「レヴォーグ」。発売は翌年の6月に持ち越された。
2013年の東京モーターショーでお披露目された「レヴォーグ」。発売は翌年の6月に持ち越された。拡大
「アイサイト・ツーリングアシスト」の作動状態は、メーター内のウィンドウとダッシュボード上段のマルチファンクションディスプレイで確認できる。
「アイサイト・ツーリングアシスト」の作動状態は、メーター内のウィンドウとダッシュボード上段のマルチファンクションディスプレイで確認できる。拡大
これまでのACC同様、「アイサイト・ツーリングアシスト」の操作はステアリングスイッチで行う。
これまでのACC同様、「アイサイト・ツーリングアシスト」の操作はステアリングスイッチで行う。拡大

けっこう強めにステアリングを切る

試乗はテストコースの外周路にて、ACCを使って先行車を追走するという形で行われた。車両はレヴォーグである。ACCの設定速度は、スタート地点からコースの半ばまでは70km/h、渋滞走行を味わう後半では30km/hとし、さまざまなシチュエーションでアイサイト・ツーリングアシストの利きを確かめるという内容だった。

試乗できる回数は2回。その1周目、記者はちょっとイジワル気味に、ほとんどステアリングを握らない状態で同システムを試してみた。舵角や操舵力などといった、制御の介入の強さを確かめてみたかったのだ。

で、その感想は「けっこう強めですね」というもの。今回のコースでは、半ば自動運転だったと表してもいい介入の度合いだった。寡聞ながら記者の経験に照らし合わせると、自社の技術を「自動運転!」「準・自動運転!」とアピールするメーカーのそれほどではないが、「運転支援」と評される操舵支援機構のなかでは強い部類に入る気がする(主観的かつあいまいな物言いで申し訳ゴザイマセン……)。

ちなみに、スバルの技術者によると今回のシステム、既存のものより「車線の中央寄りから操舵支援が介入する」とのこと。区画線に近づく前から少しずつシステムが介入することで、進路補正時の唐突感をなくしているらしい。ほとんど圧をかけない手のひらで観察したところ、確かにそんな感じがした。

テストコースの外周路で行われた体験試乗の様子。ペダルはもちろん、ステアリングもあまり操作する必要がなかったので、車内は半・自動運転状態だった。
テストコースの外周路で行われた体験試乗の様子。ペダルはもちろん、ステアリングもあまり操作する必要がなかったので、車内は半・自動運転状態だった。拡大
技術者いわく「従来のシステムと比べて操舵アシスト量ももっとシッカリしたものに変更した」とのこと。写真の通り、指でちょんと支えているだけの状態だと、ステアリングが勝手にぐいぐい切れ込んでいく。
技術者いわく「従来のシステムと比べて操舵アシスト量ももっとシッカリしたものに変更した」とのこと。写真の通り、指でちょんと支えているだけの状態だと、ステアリングが勝手にぐいぐい切れ込んでいく。拡大
70km/hの走行区間では先行車が車線変更をし、こちらに道を譲るというデモも。こうした先行車の動きにつられることなく、「アイサイト・ツーリングアシスト」は車線を維持し続けた。
70km/hの走行区間では先行車が車線変更をし、こちらに道を譲るというデモも。こうした先行車の動きにつられることなく、「アイサイト・ツーリングアシスト」は車線を維持し続けた。拡大

“判断材料の多さ”が制御の出来を左右する

そんなことを試しながら1周目の後半に突入。低速での制御を試すこの区間では、蛇行したり、コースから出て行ったり(分岐やインターなどで先行車がいなくなる場合を想定しているのだとか)といった先行車の動きが、制御にどう影響を及ぼすか……というか及ぼさないかを確かめることができた。先行車が多少想定外の動きをしても、システムは自然な操舵支援を続けていたのだ。

同システムでは、状況に応じて(1)区画線のみを参考にする、(2)区画線と先行車の両方を参考にする、(3)先行車のみを参考にする、という3つの制御を使い分けているのだが、(2)の場合でも、先行車より区画線の情報をより重視して進路を算出しているという。したがって、区画線が見えている場所では先行車が多少ヘンな動きをしても、その影響でこちらの進路が不安定になるということはないのだ。

また、この区間では区画線が黒く塗りつぶされた道での走行も体験できたが、(当たり前だが)その状態でもシステムは途切れることなく、先行車に追従しながら操舵支援を続けていた。制御は先行車のみを参考に進路を算出している状態であり、イジの悪い人(例えばワタクシ)には「先行車が崖からダイブしたらこちらもそれに続いてしまうんですね?」などと難癖をつけられてしまいそうだが、考えてみればこのシステムはあくまで支援機能であり、ドライバーがステアリングを握っていることを前提としている。「ああヤバイ」と思ったら自分でハンドルを切り、ブレーキを踏めばいい。

脇道へと“退場”していく先行車。こうした状態でも、区画線を認識している限り自車の挙動が乱れることはない。
脇道へと“退場”していく先行車。こうした状態でも、区画線を認識している限り自車の挙動が乱れることはない。拡大
先行車と区画線の両方を認識している場合、システムは双方の情報をもとに自車の進路を算出するのだが、判断材料の“比重”としては、後者の方をより重視しているという。
先行車と区画線の両方を認識している場合、システムは双方の情報をもとに自車の進路を算出するのだが、判断材料の“比重”としては、後者の方をより重視しているという。拡大
区画線が消された状態の道を行く先行車。実際の道では、渋滞などで先行車との車間が短く、かつ先行車がバスやトラックなどの大型車だった場合に区画線が見えない状態(先行車の車体によって区画線が隠されてしまう)に陥りやすいのだとか。
区画線が消された状態の道を行く先行車。実際の道では、渋滞などで先行車との車間が短く、かつ先行車がバスやトラックなどの大型車だった場合に区画線が見えない状態(先行車の車体によって区画線が隠されてしまう)に陥りやすいのだとか。拡大

支援システムの開発に有利なクルマの条件

今回の試乗で印象に残ったアイサイト・ツーリングアシストの特徴は、環境の変化に対するシステムの強さ、そしてシステム介入にわずらわしさがないことだった。例えば前者については、先述した先行車の想定外の動きに加え、区画線が片方だけ見えない場所や、分岐などで線がフクザツに入り組んだ場所でも、ステアリングがピクピクしたりすることはなかった。

一方の後者については、まあ読んで時のごとくである。世の中には道路をフツーに走っているだけでもスイッチをぶった切りたくなる製品もあるが、取りあえず今回のコースでは、ハンドルを握っていてそうした煩わしさは覚えなかった。先述の通り、制御の介入そのものは強めに感じたのに、不思議である。

またコーナーのRがきつくなっていってクルマが外にはらみ、操舵支援がオフになる際のステアリングやクルマの挙動のスムーズさも好印象だった。この点についてはシステムの作りこみはもちろん、車両自体の走行安定性能の高さも大きく寄与しているのだとか。技術者いわく「真っすぐ走るクルマの方が、支援システムも作りやすい」とのことだった。

もちろん気になったところがまったく無いわけではない。ハンドルをほとんど支持せずに意地悪く観察していたところ、その動きは「ツー」とシームレスではなく「ツ、ツ、ツ」とややカクついていた。技術者いわく、制御でそうしているのではなく、操舵機構を動かす際の各部の抵抗によって生じるものとのこと。まあ、機能に影響を及ぼす問題ではないし、フツーに、腕の重さを預けるようにしてステアリングを握っている分には気にならないから、いいんですけどね。

センサーによる外部の認識状況は、メーター内のディスプレイで確認可能。こちらは先行車と右の区画線を把握しておらず、左の区画線のみを参考に走行している状態である。
センサーによる外部の認識状況は、メーター内のディスプレイで確認可能。こちらは先行車と右の区画線を把握しておらず、左の区画線のみを参考に走行している状態である。拡大
試乗の舞台となった日本自動車研究所のテストコースの外周路は、全長が5722m、最小曲線半径が60mというスケール。今回のテストは、速度域や先行者の挙動などを含め、「ちょっと流れが詰まり気味の都市高速」を思わせるシチュエーションだった。
試乗の舞台となった日本自動車研究所のテストコースの外周路は、全長が5722m、最小曲線半径が60mというスケール。今回のテストは、速度域や先行者の挙動などを含め、「ちょっと流れが詰まり気味の都市高速」を思わせるシチュエーションだった。拡大
当然のことながら、急なコーナなどでドライバーがステアリングを保持していない場合、システムの力だけでは曲がりきれずにクルマが外へとはらみ、最終的にシステムはオフになる。こうした場合でもクルマの挙動は落ち着いており、またシステムにも突然姿勢制御を放棄するような唐突さはなかった。
当然のことながら、急なコーナなどでドライバーがステアリングを保持していない場合、システムの力だけでは曲がりきれずにクルマが外へとはらみ、最終的にシステムはオフになる。こうした場合でもクルマの挙動は落ち着いており、またシステムにも突然姿勢制御を放棄するような唐突さはなかった。拡大

幸せな自動車メーカー

後は、一部のコーナーでハンドルの戻しがちょっと遅いかな? と思った程度。いずれも、あくまで「今回のテストコースでは」という条件付きの感想ではあるが、一般公道でもこの操作感を保てたのなら、これは地味だけど(失礼!)なかなかにスバラしいシステムなのではと思えた。

それにしても思うのは、こうしたシステムを作っておきながら、自動運転を類推させる売り込みをしないスバルの奥ゆかしさだ。技術者いわく「もっと自動運転的な名前にしないかという意見もあったんですけど、あんまりシステムの趣旨から離れた名前にするのもどうかと思いますから」とのことである。

今日では、ただのモーターアシスト機能をハイブリッドと呼んだり、ACCを自動運転のように売り込んだりするマーケティングもめずらしくない。それを目の敵にする人もちらほらいるが、記者としては一方的にこれを攻めるのははばかられてしまう。かつての“プリウス旋風”を例に挙げるまでもなく、こうした「コトバ」に日本のユーザーはとにかく弱いからだ。どんな良品も売れなきゃしょうがないわけで、マーケティングにはマーケティングの正義がある。

そうした中で、スバルが「プロダクトの趣旨に合わない訴求はしない」という姿勢を貫けるのは、そうした細工をしないでも支持してくれるユーザーがいるからだろう。長年にわたる企業努力があればこその信頼関係なのだろうが、やっぱりスバルは幸せなメーカーなのである。

(文=webCGほった/写真=スバル、webCG)

テストコースのスタート地点にて市場開始を待つ、「WRX S4」と「レヴォーグ」の改良モデル。
テストコースのスタート地点にて市場開始を待つ、「WRX S4」と「レヴォーグ」の改良モデル。拡大
スバルでは高度化する運転支援システムの開発のため、北海道・美深町のテストコースを30億円を投じて改修するという。いずれは大げさなアピールを嫌うスバルが胸を張って「自動運転です」と言えるシステムが誕生するのだろうか?
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