ランドローバー・レンジローバー オートバイオグラフィー(4WD/8AT)
フラッグシップの貫禄 2017.06.23 試乗記 英国のプレミアムSUV「レンジローバー」にディーゼルモデルが登場。本格オフローダーでありながら快適性も要求される“レンジ”とディーゼルの親和性は? そして試乗を通して見えてきたジャガー・ランドローバー喫緊の課題とは?タタの傘下で躍進を遂げる
今やいよいよ収穫期――。引きも切らないニューモデルニュースの連続に、そんな印象を実感させられるのがランドローバーとその同族ブランドであるジャガーの、このところの状況。
かつての親会社である米国フォード社から売却され、インドはタタ・モーターズの傘下に収まって以来、外部から目にする限りはこの2つの英国ブランドの再建プログラムは極めて順調に見える。
実際、当初の不安の声とは裏腹に、当の内部の人々から聞こえてくるのはタタ・モーターズに対する感謝の声ばかり。いわく「金は出してくれるが、口は出してこない」……と、表現はいささか適切ではないかもしれないが、要はそうした内容。この新しい“親子関係”は現在のところ、すこぶるうまく進んでいるようなのだ。
一方で、こうして活気を取り戻しつつある商品群の中にあって、「あれ? なかったんだっけ!?」と、思わず声を上げそうになるのが、ランドローバーのラインナップにおけるディーゼルエンジン搭載車。ジャガーにあるのだから、こちらではさらにポピュラーでも当然! と思わず考えてしまいそうだが、これまで日本でのラインナップには、まさに“それ”が欠けていた。
というわけで、ここに紹介するのは「待望の」という形容詞を加えて紹介したくなる、レンジローバーのディーゼルモデル。実はこれは、弟分である「レンジローバー スポーツ」と一緒に、2017年モデルとして加えられたもの。昨年末から受注が開始されていたものが、ようやく日本上陸となったのだ。
本国では4.4リッターV8モデルも選択可能
かくして、タタ・モーターズの子会社となったランドローバー社の、よりプレミアムでエクスクルーシブなブランドという位置付けとなるレンジローバー。そして、今や複数モデルを擁するそのブランドの作品群の中にあって、頂点に属するのがブランド名と同じ名称を与えられた“レンジローバー”だ。
このあたり、いささか複雑で将来的にはもう少し整理をした方がよさそうな気もするが、果たしてこの先どうなるか?
そんなちょっとばかりの疑問を抱きつつ今回テストドライブを行ったのは、日本仕様として2タイプが設定されたディーゼルモデルの中で、上級グレードとして設定されたオートバイオグラフィー。
車両本体価格の1676万円は、5リッター8気筒のスーパーチャージャー付きガソリンエンジンを搭載する同グレードモデルに対して190万円安という設定。ただし、テスト車は74万4000円というスーパーなオーディオシステムや、58万8000円のリアエグゼクティブクラスシートを筆頭に、総額370万円超のオプションアイテムを満載。総額では2000万円を軽く突破という豪勢な仕様となった。
ちなみに、ガソリンモデルの場合にはロングホイールベースモデルも選択可能であるが、ディーゼルモデルに設定されるのは通常ボディーのみ。また、本国では4.4リッターのV8と3リッターのV6が選択可能なディーゼルエンジンも、「V8ディーゼルは、見込める販売数があまりに少ないので」(ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長)という理由から、日本への導入は後者に限られる。
「真に最上級のレンジローバーを!」という裕福なユーザーの中には、V8ディーゼルこそを望みたいという人もいるはず。それだけに、ここは将来に向けて一考を願いたい部分だ。
ちなみに6気筒ユニットの258ps/600Nmに対して、339ps/740Nmとさらなるハイパフォーマンスをアピールするのが、こうして“ないものねだり”をしたくなる、8気筒ディーゼルユニットのデータである。
静粛性の高さは特筆レベル
盤面のフルスケールがガソリンモデルよりも低い6000rpmにとどめられたタコメーター以外、見た目上ではディーゼルらしさを意識させられることが何ひとつないこのモデル。いや、「意識させられることがない」というのは、走り始めてからも変わることのない印象であった。
実はこのモデル、ディーゼルエンジン搭載とはいっても、にわかにはそれが信じられないほどに静粛性が高い。
そもそもアイドリングストップメカが採用されるため、静止状態は基本的には“無音”。が、その状態が長く続き、空調作動のためにエンジンの再始動が行われるような場面でも、キャビン内が「抜群に静か」であることに変わりはないのだ。
それどころか、たとえ全力加速を試してみても、エンジンノイズは「遠くで低くうなる程度」と表現する程度にしか耳に届かない。それは、あたかも「騒音源全体が、分厚いオブラートで包まれた」かのような印象といってもいいものだ。
さらに、そんな高度な静粛性が防音/遮音材を多用したことによる“力技”だけで確保されているのかといえば、どうもそうとも限らない感触。なぜならば、朝一番の冷間始動時に車外へと降り立ってみても、そこでのノイズも思いのほかに小さかったからだ。
いずれにしても、こうした静粛性の高さは、ディーゼルエンジン搭載モデルとしては間違いなく特筆に価する一級品。そしてそんな印象は、アクセルペダルを躊躇(ちゅうちょ)なく踏ませてくれることで、必要にして十分(十二分?)な動力性能が得られるという結果にもつながったことも書き加えておきたい。
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ニューモデルラッシュの弊害?
当然ながら「俊敏な動き」というわけにはいかないが、大きなボディーを自然に操ることができるハンドリングの感覚はなかなかの好印象。路面を問わずフラット感に富んだ、いかにも高級車然とした乗り味も素晴らしい。誰だって、「こんなクルマだったらどこまででも走って行ける」と、そう感じるはずだ。
端正なエクステリアデザインに見劣りしない、入念に吟味された素材がふんだんに用いられた、いかにも上質な仕上げが施されたインテリアが醸し出す雰囲気も文句ナシ。
が、実はそれだけに「ちょっとらしくないナ……」と相対的に感じたのは、ナビゲーションシステムを筆頭としたマルチメディアシステムや、アダプティブクルーズコントロールの性能や操作性に関してだった。
まずナビゲーションシステムでは、基本中の基本となるべき自車位置の測位性能に問題が残る。具体的には、首都高速道路上で自車位置が正確に把握できず、下部の一般道を走行中と判断されたり、ルートガイダンス中にあらためて次の入り口から乗り直すように指示をされたりという場面がたびたび現れた。
また、高速道路走行中にアダプティブクルーズコントロールをセットすると、思いのほか緩いコーナーでも先行車を見失い、隣の車線を走行する、速度の低い車両を検知して突然減速するという場面にも遭遇。すぐに復帰はするものの、強い違和感を覚えることとなった。
このあたり、実は日本のジャガー/ランドローバー車の多くでそうした現象が起きることが把握されており、英国の開発サイドにもすでに報告が上がっているもよう。一説によれば、限られたリソースの中で多くのニューモデルの開発に忙殺され、「マンパワーが足りない」といったうわさすらも耳に届いてくる。
いずれにしても、プレミアムをうたう高額モデルでのハナシであるだけに、早急な改善を望みたい部分。ドライバーアシスタンスシステムのアップデートは、両ブランドにとって喫緊の課題といえるポイントだ。
(文=河村康彦/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー オートバイオグラフィー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5005×1985×1865mm
ホイールベース:2920mm
車重:2470kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/4000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1750-2250rpm
タイヤ:(前)275/45R21 110W XL/(後)275/45R21 110W XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリックSUV)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:1676万円/テスト車=2046万5703円
オプション装備:オールテレインプログレスコントロール(4万7000円)/ウェイドセンシング(5万3000円)/アドバンスドパークアシスト(14万円)/360°パークディスタンスコントロール(6万円)/フロントフォグランプ(3万円)/レザーヘッドライニング(43万4000円)/スライディングパノラミックルーフ(4万5000円)/フロントセンターコンソール・クーラーボックス(5万5000円)/リアセンターコンソール・クーラーボックス(5万5000円)/ブライトペダル(3万1000円)/ラゲッジスペースレール(5万1000円)/Meridianシグネチャーリファレンスオーディオシステム<1700W 29スピーカー>(74万4000円)/リアシートエンターテインメントシステム 8インチディスプレイ(34万2000円)/フルサイズスペアアロイホイール(4万8000円)/ブラックデザインパック(25万7000円)/InControlセキュリティー(9万5000円)/InControlプロテクト(4万5000円)/InControlコネクトプロパック(5万7000円)/セミアニリンレザーリアエグゼクティブクラスシート スタイル21(58万8000円)/パワーサイドステップ一式(52万8703円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1165km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:268.2km
使用燃料:23.5リッター(軽油)
参考燃費:11.4km/リッター(満タン法)/11.6km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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