BMW 523dツーリング ラグジュアリー(FR/8AT)
このカタチだからできること 2017.07.10 試乗記 誕生から4世代を数える「BMW 5シリーズ」のステーションワゴン、「5シリーズ ツーリング」の新型が日本に導入された。ディーゼルモデル「523d」の試乗を通してその実力を測るとともに、他の車型にはない“ワゴンならではの魅力”とは何かを考えた。ワゴンに求められるものとはなにか
その役割をごっそりSUVに奪われた今、ステーションワゴンの運命は風前のともしび……かと思いきやそれは米国市場の話であって、欧州市場ではこのカテゴリー、根強い支持に支えられている。特にD~Eのセグメントにおいては販売比率もざっくり3割前後と、つまりメーカー側としてはおいそれとSUVで代用してくださいと言えないくらいの票田となっているわけだ。
その欧州での使われ方をおもんぱかるに、この手のステーションワゴンに求められるところは、行動力は多少SUVに譲ろうとも同等に近い積載力を備えつつ、かつベースであるセダンと違わぬ動的な質感、そしてフォーマル性を保持していてほしいということではないだろうか。
特にフォーマル性に関しては、ドイツやイギリスはもちろんのこと、イタリアやフランスでも重要なポイントであり、よってティピカル(典型的)であることはむしろ歓迎されているはずだ。個性を主張する場は他にあるんだから、路上で悪目立ちする必要はないと、そんな民族性は日本のみならず……いや、むしろ今や日本の方が変貌には寛容なんじゃなかろうかと、昨今のクルマのデザインをみていて思うこともある。
端的に言えば、新しい5シリーズ ツーリングのカタチに特段の新しさはない。2次元的にみれば典型的なFRプロポーションを筆頭に、すべてがBMW的な予定調和だ。が、手法が確定しているがゆえの手数的余裕をシェイプの磨き込みに費やしたのだろう、そのたたずまいは3次元で眺めるほどに、染み入るようにいいもの感が伝わってくる。4950mmの全長に1870mmの全幅と車格は相当にずうずうしいが、その大きさを「3シリーズ ツーリング」とは一線画するエレガンスにつなげているのも確かだ。
ADASの出来栄えは依然としてトップレベル
新型5シリーズ ツーリングに用意されるパワートレインは、ガソリンが4気筒の出力違いで「523i」と「530i」、そして6気筒の「540i」と3つ、そしてディーゼルが4気筒の「523d」と全部で4バリエーションとなる。そのおのおのには「ラグジュアリー」と「Mスポーツ」、2つのトリムラインが設定されるほか、523iと523dにはベースグレードの設定もあり、スタートプライスは523iで650万円。それもスカスカ装備の見せ物グレードというわけではなく、最新世代のADAS(運転支援システム)系デバイス「ドライビングアシスト・プラス」や、セルフレベリング機能を備えたリアエアサスといった機能装備も標準となるようだ。
そのADAS系装備の制御ソフトウエアが直近でアップデートされたことも5シリーズ ツーリングのトピックとして伝えられたが、試乗車の523dに乗る限り、先に登場していた「5シリーズ セダン」に対して、多用することになるだろう前走車追従クルーズコントロールやレーンコントロールアシストが劇的に進化したという印象は得られなかった。強いて言えば停止~低速時の加減速マナーが滑らかになったかというところだろうか。
もっとも、BMWのADAS系装備のアルゴリズムは現行「7シリーズ」以降、相当な進化を遂げており、5シリーズ セダンが搭載するドライビングアシスト・プラスも高速巡航時の車間保持や操舵制御のリニアリティーはトップレベルに達している。限られた時間と環境ゆえすべてを試せたわけではないが、5シリーズ ツーリングのそれもドライバーの期待には十分応えてくれるものだろう。
それぞれの内燃機関に良さがある
BMWの新世代ディーゼルユニットは特に音・振動においての進化が著しく、523dのそれも4気筒ながら、日本の常識的な速度域を使っている限りは、高負荷でもなければそれ的なネガをほとんど感じないほどになっている。一方で5500rpm付近を境としているレブリミットに届かせる機会も多くはなく、普通に乗っている限りは5000rpm手前のところがトップエンドということになるだろう。確かに前世代のエンジンの方がきっちり上まで使い切れる感はあったが、ディーゼルをそこまで回す必要なしと割り切れるならば、動力性能と快適性、経済性の折衷点として最も魅力的だ。
その一方で、少しでも内燃機を回し切る気持ちよさに未練があるならば、上市が遅れている523iもしくは530iという選択肢も検討に値するだろう。ことモデルがツーリングということであれば、高速巡航が用途のメインというユーザーも少なくないだろう。そういう使い方であれば、ディーゼルとガソリンの燃費差は想像以上に縮まる。さらなる軽量化を果たした新型のボディーであれば、心配される低回転域での力感不足も補われるはずだ。
SUVでは代用できない魅力
後軸側にエアサスを用いたことによる乗り味的な不均等さはまったく感じられない。5シリーズ ツーリングのライドフィールは限りなくセダンのそれに近く、乗り心地とハンドリングのバランスはライバルのそれを上回るところにある。が、さすがに音環境まではセダン同然とはいかない。ロードノイズや風切り音が小さいこともあるが、後軸側からの入力音がボンボンとこもり気味に乗員側に伝わってくるのは致し方なしというところだろうか。
わだちの多い一般道やカーブの多い都心の首都高などを走っていると、日中の低い速度域から感じられるのは思惑通り、SUVとは一味違う動的質感の高さだ。操作に対して限りなくラグの少ない応答感や、重心の低さからくるロールやバウンドの量の小ささ、その収束の速さなどは、「X5」あたりのフィーリングを思い出すにつれ、やはり大きな違いと受け取れる。そして速度域の高い欧州の環境になれば、この差は決定的な選択肢となるだろう。日本の環境でそれを期待するのは一部のユーザーかもしれないが、だからといって5シリーズ ツーリングの持ち味は、X5が代弁できるような単純なものではないことは明らかだ。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
BMW 523dツーリング ラグジュアリー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1870×1500mm
ホイールベース:2975mm
車重:1840kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)245/45R18 100Y/(後)245/45R18 100Y(ミシュラン・プライマシー3 ZP)※ランフラットタイヤ
燃費:19.4km/リッター(JC08モード)
価格:813万円/テスト車=882万9000円
オプション装備:メタリックカラー<アトラス・シーダ>(9万円)/イノベーション・パッケージ<BMWディスプレイキー+リモートパーキング+BMWリモートサービス+コネクテッド・ドライブサービス+BMWジェスチャーコントロール+BMWヘッドアップディスプレイ>(29万9000円)/電動パノラマ・ガラスサンルーフ(22万9000円)/harman/kardonサラウンドサウンドシステム(8万1000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1151km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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