第426回:新製品「X-ICE3+」のアイスブレーキング性能は?
ミシュラン新旧スタッドレスタイヤの氷上性能を比較する
2017.07.19
エディターから一言
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ミシュランが去る6月に発表したスタッドレスタイヤの新製品「X-ICE3+(エックスアイス スリープラス)」の特徴は、氷上性能の強化にあるという。では、従来製品の「X-ICE3」と比べて、アイスブレーキング性能は具体的にどれくらい改善されたのだろうか。アイススケート場でその性能を試すことができた。
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その違いはコンパウンドにあり
ミシュランX-ICE3+は、従来製品であるX-ICE3の総合性能を維持しながら、氷上性能を向上させた新製品である。両製品はトレッドパターンが一緒であるなど、見た目こそ大きな違いはない。しかし、タイヤの基本性能を決めるコンパウンド(タイヤのトレッド部に使われる複合ゴムのこと)が異なっている。
今回新たに採用された「表面再生ゴム」の中には「Mチップ」と呼ばれる物質が詰まっており、タイヤの摩耗が進むとこのMチップが溶け出して、タイヤの表面に無数の穴が現れるようになっている。この穴が氷の表面にある水分を除去し、氷への密着を促す仕組みだ。
タイヤの摩耗が進んでも、常にタイヤの表面に穴が再生されるため、氷上ブレーキ性能が長期にわたって続くとうたわれる。従来のX-ICE3と比較して、アイスブレーキング性能は新品時で4.5%、摩耗時で11.5%改善されているという。
そのほか、効果的な除水や強力なグリップなどを実現する「トリプル・エフェクト・ブロック」や、広い接地面を確保しながら接地面圧を路面に均等にかける「マックスタッチ」、サイプの向きを縦・横・斜めと変化させて多方向にエッジ効果を発揮する「バリアブルアングルサイプ」などの従来技術も継承されており、高い総合性能を実現したのが自慢だ。
ブレーキテストの結果は?
さて、実際のところ、アイスブレーキング性能はどれくらい向上したのだろうか。テストは東京都内のアイススケート場で、新製品であるX-ICE3+と、従来製品のX-ICE3を「トヨタ・プリウス」に履かせて行った。氷上で停止しているプリウスを発進させ、車速が15km/hに達したところで全制動を行い、完全停止(0km/h)するまでの距離を測り、比較した。
ちなみに、スケート場内の室内温度は約5度で、氷温は約-1度。スケートリンクの表面は、スケート営業時と同じコンディションに整えられていた。制動距離はいずれも2回行ったテストの平均値を取っている。
まず、新製品であるX-ICE3+と、従来製品のX-ICE3の、新品同士の制動距離を測った。結果は、X-ICE3+が7.4mで、X-ICE3は8.5mだった。約13%の改善である。
続いて、1万kmを走行した新旧両製品の制動距離を測った。結果は、X-ICE3+が14.6mで、X-ICE3は16.2m。こちらは約10%の改善であった。どちらもミシュランが主張するとおり、新製品が旧製品をしのぐ結果となった。
制動距離が短縮されただけでなく、X-ICE3+は氷上におけるしっかりとした操舵感も印象的だった。今回はスケートリンクという特殊な場ゆえ、極低速でハンドリングの雰囲気を味わったに過ぎないが、ステアリングの中立付近から確かな手応えがあり、進化の跡を感じ取ることができた。
(文=webCG 竹下元太郎)
