メルセデス・ベンツE350eアバンギャルド スポーツ(FR/9AT)
静かで滑らか 2017.12.01 試乗記 「メルセデス・ベンツEクラス」のバリエーションがまたひとつ広がった。Eクラス初となるプラグインハイブリッド車「E350eアバンギャルド スポーツ」のパワーユニットは2リッター直4ターボ+モーター。その走りはいかなるものなのか。4気筒で不足なし
メルセデス・ベンツEクラスのプラグインハイブリッド車が日本市場に登場。798万円は思ったよりも安く(?)、さらにグリーン化税制で自動車税が75%も軽減されるのだから、法人でなくとも裕福な個人ユーザーにとってE350eはお買い得な車種といえるだろう。
空車で1980kgとEクラスの中でも重量級ではあるが、これで燃費の良さも享受できるのだから技術の進歩とは素晴らしいものがある。ハイブリッド燃料消費率はJC08モードで15.7km/リッターと発表されている。ドライブコンピューターの数字でも時々試した区間で2桁を示していることがままあった。ちなみに今回のテスト走行は302.5kmで、満タン法計測で9.8km/リッターを記録した。
動力性能の向上は乗る前から予想していたが、静粛で滑らかな走行感覚においては期待を上回った。少し前までは4気筒より6気筒、6気筒より8気筒……とエンジンの滑らかさや静粛さは気筒数に頼っていた部分もあったが、この車の場合には電気モーターが加わったことにより、4気筒でも十分な滑らかさと静粛さ、そして強力なパワーも獲得している。というか、知らずに乗れば気筒数や排気量などまったく気にする必要がなくなった。高級車といえども遠からず、この話題に触れることさえなくなってしまうかもしれない。
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“非接触”ならではの滑らかさ
4気筒2リッター直噴エンジンは211psと350Nm(35.7kgm)を発生するが、これに電気モーターのトルク450Nm(45.9kgm)が加わる。そしてこの滑らかで強力な加速には9段のATも大いに援護している。
また加速時に不利に働く重量は、減速時にもブレーキ力を大きく必要とするが、この車ではそれがそのまま充電力に変わるから、ここでも効率を稼いでいる。ダイナモを回す抵抗を必要に応じて大きくすれば、それだけ強力な減速度を得ることになるからだ。これはディスクローターにパッドを押し付ける摺動(しゅうどう)抵抗と違い、非接触のまま磁力で強烈に抑え込まれるので、挙動はあくまでも滑らかなままだ。だから一般的な走行において、加速するにしても減速するにしても、今までのような回転物の音や振動が大きく割り引かれていて、静粛な走行感覚を実現している。
ドイツ車の中でもメルセデスは、決して最上級の静粛性をウリにしていたわけではなく、音や振動の点ではもっと優秀な例は他にあった。しかしこの車は遮音材や剛性面で遮断するのではなく、発生源そのものが小さくなったことで静粛性を得ている。
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最近メルセデスの走りがおとなしい理由は?
タイヤは前245/40R19、後ろ275/35R19と大径で太めのサイズが採用されている。「ピレリP7」はロードノイズも比較的静かで回転バランスもよろしく、これも静粛な走行性に寄与しているとは思うが、プロップシャフトやドライブシャフト、そして数多い歯車類などとともに回転物全体の静粛性ランクが一つ上がったような印象を受ける。大径タイヤはエンジンの回転数を下げることにもなるし、ロールセンターを高める意味でもロール感を向上させ、操縦性にも穏やかな安定感を加えることで近年流行している手法であるが、Eクラスといえども走行感覚の洗練性にまだ余地を残していたことがわかった。
余談かもしれないが、かつてメルセデスといえば強引で乱暴な走り方をするドライバーが目立ったけれども、最近見かける新しいメルセデス車はなぜか静かに加速するし、挙動がおとなしくなったことを筆者は不思議に思っていた。これは目の前に出るサインによってなだめられているからだと合点した。
道路標識の制限速度の数字を読み取り、それがウィンドウ正面にディスプレイされる。その横に実速度が並べて表示され、その速度差が10km/hを超えると点滅して注意を促す。もちろん無視して走ることも可能ではあるが、小心者の筆者はとても悪いことをしているように思えて、結果として制限速度を順守することになる。なるほど……コレで最近のメルセデスドライバーはおとなしい走り方をするようになったんだ……と納得した次第。とてもいい装備であると思う。全車にコレを義務づければ速度違反で走る車は激減するだろうナと思うが、こんなことを書くと非難されるんだろうなとも思う。
ひとつ言わせていただくならば……
メルセデスらしくないと思うのは、サイドブレーキスイッチの場所とか作動要領が一般的ではない気がする点だ。その昔、メルセデスはパワーステアリングの時代になっても、大きな径のハンドルをそのまま使っていた。ベルトが切れたときのことを考え、油圧ポンプが作動しなくなり突然操舵力が重くなって、ハンドルを回せなくなったときを想定していたのだ。ちなみに現代のメルセデスは電動モーターによりアシストされる。
ブレーキが失陥したときの最後の頼みの綱はサイドブレーキである。今時の管理技術では壊れたり摩耗したり……ということは考えにくいが、何かの拍子にどこかでフロアを干渉させたりして、ブレーキパイプを損傷させて油圧を失うことは皆無とはいえない。そんなときには別系統でマニュアル操作できるサイドブレーキが頼りになる。
個人的な過去の経験を言えば、300万kmの走行距離の中でブレーキが失陥した事件は一度あった。それは新車の試乗車であったが、マスターシリンダーの中に切削時の切片が残っていたらしく、それが回数を重ねるうちにラバーブーツを切ってオイルが漏れてしまったのだった。スコーンと踏み代がなくなる感覚など思い出したくもないが、ま、ともかくその場はサイドブレーキで事なきを得て山を下ってきた。もちろんメルセデスではなく他国のメーカーだったがあえて名前は書かない。そんな経験などしないに越したことはないが、皆無と断言もできない。
最近のサイドブレーキスイッチは電気式になって、引くものと押すものがあり統一もされていないが、同じペダルを二度踏みして解除する方式に比べればマシといえる。しかしスイッチがどこにあるか一見してわからない場所にあるのも考え物だ。頻繁には使わないという人もいる。ATの普及でPに入れてしまえば一応車を停止させておくことが可能だ。また冬季はサイドブレーキを引いてはいけない、という地方もある。しかし老婆(爺)心で言わせてもらうならば、そんなことにも普段から留意しておくことが肝要だと思う。自分の車であれば知っていることでも、いつ他人が運転するかわからず、そんなときには一般性が問われる。
とはいえ、E350eは最近乗せてもらったメルセデス・ベンツの中でも秀逸なイイ仕上がりの車だと思う。
(文=笹目二朗/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツE350eアバンギャルド スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1850×1475mm
ホイールベース:2940mm
車重:1980kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1200-4000rpm
モーター最高出力:88ps(65kW)/--rpm
モーター最大トルク:450Nm(45.9kgm)/--rpm
タイヤ:(前)245/40R19 98Y XL/(後)275/35R19 100Y XL(ピレリ・チントゥラートP7)※ランフラットタイヤ
燃費:15.7km/リッター(JC08モード)
価格:798万円/テスト車=876万4800円
オプション装備:ボディーカラー<ダイヤモンドホワイト>(19万3000円)/レザーパッケージ<ナッパレザーシート+ブルメスター・サラウンドサウンドシステム+エアバランスパッケージ[空気清浄機能、パフュームアトマイザー付き]+シートヒーター[後席]+自動開閉トランクリッド+ヘッドアップディスプレイ>(50万円)/フロアマット プレミアム(9万1800円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1387km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:302.5km
使用燃料:31.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.8km/リッター(満タン法)/10.2km/リッター(車載燃費計計測値)

笹目 二朗
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