モト・グッツィV7 IIIストーン(MR/6MT)
このエンジンに惜しみない拍手を! 2017.12.09 試乗記 バルン! バルン! とビートを打つエンジンに、シンプルで味わい深いスタイリング。伝統の“空冷Vツイン”を積んだモト・グッツィの最新モデル「V7 IIIストーン」に、わが道を突き進むイタリアンメーカーの心意気を見た。こんな時代にもモト・グッツィは……
ギアがニュートラル状態のとき、股座(またぐら)に飛び出した2つのシリンダーヘッドを視界の下のほうに収めながらスロットルをブンと吹かすと、車体が左右にバルンと大きく揺れる。それを確かめると、「これこれ!」とヘルメットの中で笑顔が広がる。
変わってないな、モト・グッツィ。何というか久しぶりに会った級友が悪ガキだった頃の面影を残しているのを見てうれしい気分になるのと、そのエンジンのバルンが喚起するものはよく似ているのだ。
モト・グッツィといえば縦置きVツイン。何だか妙な表記だが、正面から見るとシリンダーの伸びる方向がシンメトリーにV字型なので、少なくとも日本ではそう呼ばれてきた。
それはさておき“○○といえば○○”と揺るぎなく断言できる立場を保ち続ける姿には最大級の敬意を払いたい。かつて百貨店といえば日本橋三越だったが、今はどうだ? 時代の波にもまれるうちに頑固さを失っていくさまざまが多い中、モト・グッツィはいまだに縦置きVツイン一点勝負なのだから恐れ入る。
僕らはそうした外国車の強烈な個性に憧れてきた。ハーレーならVツイン。BMWは水平対向。トライアンフはバーチカルツインと、各ブランドそれ以外の形式には目もくれず、つまりは自社が得意とするエンジンで新たなラインナップを開発する姿勢にオリジナリティーというものを学んできた。エンジンすなわち心臓は、それだけ重要なものなのだと。
それでもやはり時代の波というのは圧が高く、ハーレーにしてもBMWにしても、個性が失われたとは言わないまでも、かつてのようなバルンはなくなった。おそらく機械精度の向上としては正しい道筋なのだろう。だから文句は言わない。“なのにモト・グッツィは”と、そこをピンポイントで強調したいだけだ。
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