マツダCX-8 XDプロアクティブ(6人乗り)(FF/6AT)
スマートなファミリーカー 2018.02.15 試乗記 マツダが新たに開発した3列シートのSUV「CX-8」は、ミニバンに代わる選択肢になり得るか? ドライバーとその家族の目線で試乗してみると、このクルマならではの持ち味が見えてきた。ミニバンの顧客に応えるモデル
3列シートを持つマツダの新しいSUV、CX-8がミニバンに代わるモデルとしてラインナップされたのは既報のとおり。マツダは、運転する楽しさや安全性を優先し、同時に市場での(ライバル車との)ポジション争いを総合的に考慮した結果、ミニバン市場から撤退する判断を下している。現状では「プレマシー」や「ビアンテ」などのモデルは残っているが、いずれこれらも販売を終了する。
という背景を考えると、第2世代に進化した「CX-5」をベースとした3列シートのCX-8が、マツダにおいていかに重要なモデルなのか理解できる。つまり、プラットフォームやパワートレインといったハード的ソリューションは流用しているが、単なる数合わせのバリエーションなどではなく、ミニバンユーザーのニーズ(とセールス)にも応えるべく開発されたモデルである、ということである。
全長をCX-5よりも355mm長い4900mmに、ホイールベースも230mm長い2930mmとした3列シートを成立させているCX-8。全幅は両車とも同じ1840mmで、実際に両車を比較すれば、明らかにひとまわり大きなフォルムがCX-8の特徴となる。ただし、当然ながらこの姉妹車はよく似ており、駐車しているクルマを見る限り、よほどのマニアでもなければどちらがCX-8かをピタリと言い当てるのは難しそうだ。それでもいくつかの識別点はある。例えばサイドビューではリアクオーターウィンドウの面積が大きい方がCX-8であり、リアのテールライトを結ぶメッキの加飾を持つ方がCX-8になる。
キャビンの質感は上々
そうしたデザイン上の差別化よりも、やはり気になるのはホイールベースの延長がもたらすキャビンの広さと、3列シートの使い勝手だろう。CX-8は、最高出力190ps、最大トルク450Nmを発生する「SKYACTIV-D 2.2」のみを搭載。ガソリンエンジンは現状ラインナップされていない。これにFWDと4WDを用意し、装備別でおのおの3グレードをラインナップするというシンプルな構成だ。
ただし、トップグレードの「XD Lパッケージ」を6人乗り(セカンドシートがキャプテンシートとなりセンターコンソールボックスを採用するためウオークスルー不可)とし、ほかの2グレードでは、7人乗り(セカンドシートが3人掛けのベンチタイプ)と6人乗り(センターコンソールボックスが無くウオークスルー可)を用意する。つまり構成こそシンプルではあるが、全10モデルのバリエーションから選べることになる。今回試乗したのは、中間グレードとなる「XDプロアクティブ」の6人乗りでFWD。最もセールスボリュームが期待されるモデルである。
運転席におさまりルームミラーをのぞくと、やはりリアウィンドウまでの距離を感じ、このクルマが3列シートのクロスオーバーであることを意識させられる。インパネは見慣れたCX-5のイメージそのままで、最新モデルゆえに、今となっては小さく感じるセンターコンソールのモニター(実用面を考えれば今どきもうひとまわり大きくてもいい)や、スポーティーな演出と視認性にこだわったアナログ表示のメーターのほか、マツダ車ユーザーであれば乗り換えにまったく違和感を持たないはずのユーザーインターフェイスもCX-5に共通する。
トップグレードのXD Lパッケージであればリアルウッドや高級ナッパレザーを採用するインテリアに包まれるが、このXDプロアクティブであっても質感は上々。いわゆる安っぽさとは無縁のデザインやパーツのクオリティーが最近のマツダ車であり、どれも所有する満足感を与えてくれる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
大きさのわりには軽快
今回は2日間にわたりCX-8を走らせたが、一般道や高速といった日常のシチュエーションであればハンドリングはCX-5とさほど変わらず、1810kgというボディー重量に対する2.2リッター直4ディーゼルのパワーも十分。力不足を感じるシーンはほとんどなかった。キャビンの静粛性も、マツダのクロスオーバートップモデルとして期待されるにふさわしいレベルをキープしている。同時に乗り心地はしなやかで、直進安定性の良さが光る。これはホイールベースが長めに取られている恩恵もあるだろうが、その印象すら、あえて比べてみようと思わない限り、誤解を恐れずに言えばCX-5と大きく変わるものではない。
しかしそうした反面、スポーティーというキーワードで両車を比べてみると、やはり200kgの重量増は無視できない。タイトなS字カーブなどの切り返しでは、明らかにCX-5の方がスポーティーで、俊敏性において軍配があがる。もっとも、そもそも論として3列シートのクロスオーバーにスポーティーなテイストをどれほど求めるのかと問われれば、多くのユーザーはミニバン的な実用性も期待してこのクルマを見ているはずだから、大きな問題にはなり得ないかもしれない。ワインディングロードにでも持ち込まない限り、この両車の差は大きく開くものではないだろう。
ロングホイールベース、3列シート、重量増というキーワードからは、どうしても緩慢な動きを連想してしまうが、CX-8は、この大きさと重量にしては軽快感すらあり(ただし当たり前だが決して軽快ではない)、「G-ベクタリングコントロール」を搭載する(最近慣れたせいか違和感を感じなくなってきた)ハンドリングもなかなかに秀逸なドライバーズカーである。世の中、猫も杓子(しゃくし)も「アジリティー(敏しょう性)さえ上げればスポーティーだ」と評価する向きが多いが、ステアリング操作に違和感なく対応するドライバーとの一体感を持つこのCX-8の走りを十分スポーティーだと表現しても問題はないはずだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
みんなで乗る頻度が決め手
最も気になるであろう3列目シートの使い勝手はというと、実はこれが想像したほど悪くはなかった。3列目シートへのアプローチは、CX-5に比べ前後に大きなリアドアや、80度も開くドア開度、分かりやすい2列目シートの折り畳み方などを採用したことにより、さほど無理のない姿勢での乗降が可能だった。
実際に座ってみても、後方にいくに従ってシート座面が徐々に高くなる、いわゆるスタジアムシートレイアウトの採用によって後方からの前方視界はまずまず良好。3列目シートに座っていても疎外感は少ない。フロアが高く、どうしても膝の角度が窮屈になるが、2列目シート下につま先を差し込める空間を確保しているので、もちろん広くはないものの、我慢できないというほどひどくもない。マツダでは「身長170cm程度の乗員でも無理なく過ごせるスペースを構築した」とアナウンスするが、そう遠くない距離であれば大人でも実用上は問題なく使用できそうだ(再度記すが、もちろん決して広く快適なわけではない)。ただし、3列目シートのすぐ下にタイヤハウスが位置している関係で、3列目シートに座っているとロードノイズはそこそこ進入してくる。
日常的に3列目シートをフルに使用するような乗員を運ぶファミリーにミニバンの代替としてCX-8をお薦めできるかと問われれば、個人的にはミニバンの実用性と利便性を求めるのなら(マツダの主張とは異なり申し訳ないが)、それはやはり「用途に合ったデザインと機能性を持ったモデル(=ミニバン系)を選ぶのが間違いない」と答えたい。しかし、例えば年に数回だけ5人以上の乗車に迫られる多人数乗車頻度の少ない(しかし、確実にその機会はある)ユーザーであれば(実際私がそうである)、クロスオーバーの3列シートモデルはスマートな選択肢になりそうだ。
ミニバンは、どうあがいても存在そのものがファミリーのためのもの。世間の認識はそんなところだろう。けれどもファミリー臭の薄いこうしたクロスオーバー系の3列シートモデルは、ひとりで乗っていても様になり、趣味性が高く、女性ウケも悪くない。そして独自のライフスタイル(を持っているように見せる)演出にも最適なツールになる。奥方には家族のための3列シートと説明しつつ購入し、よしんばチャイルドシートさえ下ろしてしまえば、もはやファミリー臭は皆無。どこかに誰かを迎えに行っても、そこでは家族のために選んだ3列シートのクルマというイメージを持たれることはないだろう。もちろんだからといって、ゲスい何かを奨励しているのではないので、念のため。
(文=櫻井健一/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
マツダCX-8 XDプロアクティブ(6人乗り)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4900×1840×1730mm
ホイールベース:2930mm
車重:1810kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190ps(140kW)/4500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:17.6km/リッター(JC08モード)
価格:356万9400円/テスト車=372万6000円
オプション装備:360度ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター/コーナー>(4万3200円)/BOSEサウンドシステム+10スピーカー(8万1000円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)
テスト車の年式:2017年
テスト開始時の走行距離:3795km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:215.0km
使用燃料:12.4リッター(軽油)
参考燃費:17.3km/リッター(満タン法)/14.7km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。


















































