惜しまれつつさようなら マツダの3列シートSUV「CX-8」をしのぶ
2024.01.29 デイリーコラム予定の2倍も売れていた!
「マツダCX-8」は、「CX-5」と共通のアーキテクチャーを使った3列仕様のSUV。ひとことで言えば「CX-5のロングホイールベース仕様3列モデル」です。そんなCX-8が、2023年12月で生産終了になったという。
発売は2017年12月。つまり6年間の生涯だったわけですが、実はマツダにとっても予想外にヒットしたモデルだったことを知る人は少ないかもしれません。当初の販売計画は1カ月あたり1200台(ちょっと控えめ、というか弱気)。つまり目標販売台数は年間1万4400台。しかし実際には6年間で約18万台(2017年11月から2023年12月までのマツダ集計値で18万3034台)、平均すれば年間3万台以上売れたので、マツダとしても大成功だったのです。
どんな人が中心に買ったかといえば、ストレートに言ってしまえば「ミニバンじゃない3列シート車が欲しい」という層。「スライドドアも要らないし、3列目は毎日使うわけじゃないから存在すれば十分」なんていう人が買ったようだ。そういえば、3列目の居住性は国産SUVのなかではトップでしたね。
マツダはかつて「プレマシー」や「MPV」「ビアンテ」などのスライドドア付きのミニバンを用意していました。しかし、「ライバルに勝てない」とか「これからマツダが目指す走りのイメージに合わない」なんていう理由で廃止。そんな流れのなかで、3列シート車を求めるユーザーへの提案としてCX-8を用意したのですが、その判断は間違っていなかったということなのでしょう。
単なる「3列シートSUV」ではない
もしかすると、「CX-8の魅力が単に、CX-5と違って3列目があるというだけではなかった」のが、よかったのかもしれません。
まずロングホイールベース化で1列目と2列目の距離がCX-5より長くなり、2列目の足元はゆったり。つまり、実用性が高いのです。しかも2列目には独立型のセパレートシートや、その上級仕様としてベンチレーション機能や電動調整機能まで備えた、国産車では珍しいプレミアムブランド並みのラグジュアリー仕様まで設定。手の届きやすい価格帯でこういう雰囲気の3列シートSUVって、ありそうでなかったんですよね。
さらにさらに、3列目を畳めば荷室の奥行きは一般的なSUVとは比較にならないレベルにまで拡大できるから、たくさんの荷物を積んでキャンプやスキーに出かけるようなアクティブなユーザーとのマッチングも最高。CX-8の魅力は、単なる3列シートSUVという範囲にとどまらなかったのです。
そこで、こう思う人もいるでしょう。「ならば、どうしてなくなるの?」と。
答えを先に言ってしまえば、それは「『CX-80』にバトンタッチするから」。CX-80はCX-5よりひとクラス上級の2列シートモデル「CX-60」をベースにしたロングボディーの3列仕様。「CX-5に対するCX-8」と「CX-60に対するCX-80」は同じ関係なのです。
CX-5は絶対的な販売台数も多いのでCX-60登場後もしっかり残りました。しかし、CX-8はその役割を次のモデルに託すという判断になったのでした。
思えば「ちょうどいいMAZDA」
ただ、そうはいっても、なかには「CX-80ではCX-8の代わりにならない」という人もいるかもしれません。いや、絶対いるはず!
理由はまず車体サイズ。CX-8は全長4925mm×全幅1845mmでしたが、CX-80はちまたのうわさでは、ひと回り大きくなって全長4995mm程度、全幅は1890mmとなる見込み。CX-8でもそれなりのサイズ感でしたが、「それよりもまたひと回り大きくなると、さすがに……」と判断する人は少なくないかも。
そして、CX-8とのもうひとつの違いが価格。CX-5とCX-60との価格差を考えると、中級グレード以上はCX-8時代より50万円ほど高くなるかもしれません。もしかすると、CX-8からの乗り換えユーザーに配慮して、ベーシックグレードの価格差は抑えられるかもしれませんが。
そう考えると、CX-8ってサイズからパッケージ、価格に至るまで、「ちょうどいい」が詰まった絶妙なクルマでしたね。だから売れたのでしょう。実はCX-5もそうなのですが。
パッケージといえば、北米で販売されている3列シートワイドボディーモデル「CX-90」から推測すると、ここだけの話、CX-80はCX-8に対して車体が大きくなるとはいえ、キャビンや荷室のスペースがCX-8よりうんと広がるかといえば、そうでもなさそう。「全長が伸びたのは、ボンネットが伸びたせい」くらいに考えておくといいかもしれません。
そんなCX-8ですが、生産は終わったものの、販売会社の在庫であればまだ新車で購入可能。気になる人は、急いでディーラーへ行きましょう。中古でという選択も、もちろんアリ。一部のスポーツカーなどのように「新車生産が終わったから中古車相場が上昇に転じた」なんてこともなく、相場は2023年に比べて落ち着いてきた感がある。というわけで、中古車として本当にお買い得なタイミングは、これからやってくると考えてよさそうです。
(文=工藤貴宏/写真=マツダ、向後一宏、webCG/編集=関 顕也)
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工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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