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【スペック】全長×全幅×全高=4690×1850×1790mm/ホイールベース=2710mm/車重=1830kg/駆動方式=4WD/2.5リッター直4DOHC16バルブ(167ps/5600rpm、23.4kgm/4600rpm)/価格=354万円(テスト車=395万3000円/ボディカラー<ホワイトパール>=6万3000円/ラグジュアリーパッケージ=35万円)

シボレー・キャプティバ(4WD/6AT)【試乗記】

今時のシボレー 2011.08.08 試乗記 森口 将之 シボレー・キャプティバ(4WD/6AT)
……395万3000円
韓国GMが生産するシボレーのSUVモデル「キャプティバ」が日本上陸。新しいアメリカ車の走りと使い勝手を試した。
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今のアメリカンプロダクト

生まれ変わったGMは、日本での戦略も軌道修正を図ってきた。例えば今年生誕100周年を迎えるシボレーブランドは、これまでは「コルベット」や「カマロ」などアメリカ車を象徴するスポーティカーを中心に販売してきたが、今後は「誰もが手に入れやすい今時のグローバルアメリカンブランド」として、より幅広い車種を導入していくという。

その第1弾が今回紹介する2.4リッター直列4気筒エンジン搭載のミドルクラスSUV「キャプティバ」である。続いて年内にはコンパクトなハッチバックの「ソニック」も投入予定だ。ちなみにこの2車種はメイドインUSAではない。今年3月にGM大宇から名称を改めた韓国GMが生産する。
今までのシボレーブランドのイメージからすると、「?」が3つぐらい頭に浮かびそうな戦略に思えるかもしれない。でも今のアメリカンプロダクトは、すべてがマッチョ路線ではない。アップルやナイキ、フェイスブックといった名前を出せば納得してもらえるだろう。それに近年のクルマは家電や服飾と同じように、ブランドの本拠地とプロダクトの生産地が異なるのは当然になりつつある。

実はキャプティバには、米韓以外にも多くの国が絡んでいる。デザインはこの2カ国で進められたが、技術は北米・韓国・欧州・メキシコ、パワートレインは北米と豪州のジョイントベンチャーであり、生産は韓国の他ロシア、中国、タイ、エジプトでも行われるというグローバルモデルなのである。
ちなみにプラットフォームは、日本で販売しているクルマでは「キャデラックSRX」が共通となるシータプラットフォームを採用しており、4気筒エンジンはオペル/ヴォグゾールの2/2.2リッターと基本設計を共有している。
そんなクルマをはたしてシボレーと呼べるのか? と疑問を持つ人もいるだろう。しかし東京・品川のGMジャパン本社前で対面した実車は、まぎれもないシボレーだった。

テスト車には、レザーシート、フロントシートヒーター、電動ガラススライディングルーフがセットになったラグジュアリーパッケージ(メーカーオプション)が装備されていた。標準はクロス&アーティフィシャルレザーのコンビネーションシート。
テスト車には、レザーシート、フロントシートヒーター、電動ガラススライディングルーフがセットになったラグジュアリーパッケージ(メーカーオプション)が装備されていた。標準はクロス&アーティフィシャルレザーのコンビネーションシート。 拡大
丸いランプを内蔵した大きなテールランプが特徴的なリアビュー。
丸いランプを内蔵した大きなテールランプが特徴的なリアビュー。 拡大
試乗会場には、「キャプティバ」(写真左)のほか、2011年秋に導入予定の「ソニック」(右)や2011年7月に発売された「カマロコンバーチブル」(右から2番目)のほか、本国では一部の州で販売が開始されているレンジエクステンダーEV(シリーズ方式プラグインハイブリッド)「ボルト」(左から2番目)が展示されていた。
試乗会場には、「キャプティバ」(写真左)のほか、2011年秋に導入予定の「ソニック」(右)や2011年7月に発売された「カマロコンバーチブル」(右から2番目)のほか、本国では一部の州で販売が開始されているレンジエクステンダーEV(シリーズ方式プラグインハイブリッド)「ボルト」(左から2番目)が展示されていた。
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インテリアは、センターパネルやステアリングホイールなどにシルバーパーツを採用するなど、スポーティに仕立てられる。カーナビ(ECLIPSE AVN660HD mkII)はディーラーオプション。
シボレー・キャプティバ(4WD/6AT)【短評】

グローバル基準のパッケージング

デュアルポートグリルとボウタイエンブレムからなるフロントマスクは存在感抜群で、ボディサイドも「ボディイン・ホイールアウト」のコンセプトのとおり。ホイール/タイヤはなんと19インチだ。日欧のSUVと比べると、いろいろな部分が大胆なのである。

ボディサイズは全長4690mm×全幅1850mm×全高1790mmで、2〜2.5リッターエンジンを積むSUVとしては大柄だ。でも無駄に大きいわけではない。このクラスでは少数派の3列シート7人乗りだからだ。しかも身長170cmの自分が2列目に座ると、ひざの前に約15cmの空間ができるほどで、3列目はひざを立てた姿勢になるものの、頭上には余裕がある。後ろに行くに従い着座位置が高くなる「シアタースタイル」なので、見晴らしもいい。

6:4分割可倒式の2列目シート。シート上のレバー操作でシートバックを前に倒すことができる。3列目への乗り降りは、シートバックの脇にあるレバーを操作することで、シートが前に回転する。
(写真をクリックすると、3列目に乗車する際の様子が見られます。)
シボレー・キャプティバ(4WD/6AT)【短評】

定員7名乗車で97リッターの荷室容積は、3列目を畳むと769リッター、2列目も格納すると1577リッターになる。アメリカ車の空間効率がおおらかだったのは過去の話なのである。
このシート、3列目だけでなく2列目もきれいにフラットに畳める。アレンジのレバーが分かりやすく使いやすいのは、ミニバンやSUVの経験が豊富なGMならでは。キャプティバでは助手席の前倒しも可能で、長さ2.7mのロングボードも収まる。またリアゲートにはガラスハッチまで備わる。アメリカ車の枠を完全に超越し、グローバル基準で最良を目指したパッケージングに感じられた。

インパネ周辺もグローバルな香りがする。なにより収納スペースが多い。かつてのアメリカ車を知る身には驚きのレベルだ。でも没個性というわけではなく、幅広いサイドシル、ふっかりした前席の着座感、ブルーグリーンのイルミネーション、動きが大きいATセレクターで、アメリカンブランドと認識できた。

写真をクリックすると、シートアレンジが見られます。
シボレー・キャプティバ(4WD/6AT)【短評】
タイヤサイズは、235/50R19。ドアミラーのクロームカバーはディーラーオプション(3万4650円)。
シボレー・キャプティバ(4WD/6AT)【短評】

乗り心地はアメリカン

167ps/23.4kgmを発生するエンジンと6段ATによる加速に個性はないものの、逆に指摘すべき欠点もない。車両重量が1.8t台なので、強烈なダッシュとは無縁だが、エコモードでも不満なく速度を上げていくし、世界で最初にトルコンATを採用した会社らしく加速はスムーズで、クルージングではキャビンを静かに保ってくれる。
ちなみにエコモードは、スロットル開度を控えめに、シフトアップを早めに、ロックアップや減速時燃料カットを進んで行うという内容だが、注目なのはエンジン始動時に必ずこのモードが選択されていることで、新世代であることをあらためて実感した。

一方の乗り心地は、予想以上にアメリカンだった。オフロード走行を考慮したタイヤやスプリングを採用しているのか、街中では当たりの固さを感じるが、速度を上げるとおおらかな揺れが主体になってくる。日本で開発され、同じく韓国で作られる同クラスのSUV「ルノー・コレオス」が、完璧なフランス車に仕立てられていたことを思い出した。ブランドイメージの表現に、もはや国籍は不問なのである。

都内での試乗だったので、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクのサスペンションがもたらすハンドリングや、通常100:0の前後トルク配分を最大で50:50まで可変する4WDの走破性はチェックできなかったけれど、市街地と都市高速を走った限りでは、2011年のミドルクラスSUVとして不満のない性能の持ち主だった。

「クール、ファン、フリーダム」というブランドイメージを掲げたシボレーは、2010年に歴代最高となる426万台を売り、世界トップ5ブランドで唯一シェアを伸ばした。欧米だけでなく、BRICs諸国での成長も著しいという。その立役者になっているのが、今回乗ったキャプティバなどの新世代グローバルモデルだ。

東日本大震災を契機に、僕たち日本人は生き方を少し変えた。チャプター11を経験したGMも、シボレーの生き方を変えた。ボディやエンジンの大きさに頼らず、北米産にもこだわらずに、自分らしさを表現しようとした。それを成功に結び付けてしまったのだ。われわれがGMから学ぶべきことは、まだまだ多いかもしれない。

(文=森口将之/写真=菊池貴之)

森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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